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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻1号

1954年01月発行

雑誌目次

綜説

胆道疾患に於ける再手術

著者: 三宅博

ページ範囲:P.1 - P.10

I.緒言
 現今胆道外科の研究の焦点となつている処は大凡
 1.術後愁訴の本態の究明と対策
 2.胆石再発の檢討と其の予防
 3.術後膵臟炎の問題
 4.胆管狹窄の治療
 5.などの領域であろう。
 此等の問題は從来必ずしも等閑に附された訳ではなかつた.既に先蹤は或はX線学的に,或は病的機能学的に或は病理解剖学的にあらゆる可能な方法を盡して研究し対策を講じていたのであつた。

狹頭症(Craniostenosis)とその外科的治療

著者: 工藤達之 ,   三河內薰丸 ,   泉周雄 ,   光井淸

ページ範囲:P.11 - P.16

 我々は昭和26年10月,第6回日本脳神経外科研究会に於て"狹頭症の1手術例"の題下に後述の第1症例に就て報告を行い,狹頭症及びその外科的治療法を中心として少しく考察を試みたことがある.当時は術後僅か1年を経過したのみで治療効果の測定についてなお愼重を期したいと考えたので,論文としての発表を差控えていた.その後6例の手術例を加え合計7例の経驗を得たので,それ等の臨床所見を取纒めてこゝに報告すると共に,この機会に狹頭症に就ての文献的考察とその手術的治療に就ての批判を記して見ようと思う.

交感神経外科と生体熱分布測定

著者: 羽田野茂 ,   阿曾弘一 ,   垣內直樹 ,   藤原國芳 ,   斎藤聰芳良

ページ範囲:P.17 - P.24

緒言
 四肢末梢循環障碍に基く種々の疾患例えばレイノー氏病,特発性脱疽,間歇性跛行症,acrocy—anosis並に四肢の血管性疼痛たるカウザルギー,肢端紅痛症等に対しては交感神経節切除術が行われている.而して個々のの症例に対し,此の手術が効くか効かないか,効くとすればどの程度に効くかを術前に予知する爲に,J. C. White1)2)は1%プロカインを以て直接交感神経節を麻痺させ,術側皮膚温の上昇度を調べたが,(Paravertebral procaine block)爾来本法は今日に至る迄広く採用されている。図1はレイノー氏病患者に本法を行い,術側皮膚温の著しい上昇を示したものである。但しこの方法は,プロカインが実際に交感神経節に充分達し得たか否かが明かでなく,從つて反應陰性の場合の成績判定に迷うことが屡々ある.我々はこの点を考慮して,2,3の檢査方法を考案施行して居るので,ここにその概略を述べたいと思う.
 昭和27年第52回外科学会総会及びその他の学会で屡々発表したように3),生体中心部温度は末梢皮膚温度と逆相関の関係を示す.即ち図2に示す如く発熱に際しては皮膚温度の下降に從い,生体内温度例えば肝臟部温度は上昇し,下熱に際してはこれと逆の現象が起る.

胃癌に対する胃全剔及び胃亞全剔について

著者: 武田久 ,   井出愛邦 ,   難波進

ページ範囲:P.25 - P.27

 早期発見,早期手術と云うことに対して,多大の努力が拂われているにも拘らず,尚お胃癌手術の遠隔成績は寒心にたえない現状である.我々は陣内外科教室に於て昭和23年4月より昭和26年10月末に至る3年7カ月間に胃癌,噴門癌,噴門食道癌に対して行つた胃全剔及び胃亞全剔手術施行48例について,統計的観察を加え,いさゝか所見を得たので,こゝに報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である.

症例

慢性腸間膜動脈性十二指腸閉塞症1新手術法「十二指腸轉位術」の提唱

著者: 工藤惟之 ,   西脇勉 ,   三吉秀彥

ページ範囲:P.29 - P.32

 Rokitansky(1863)がはじめて腸間膜根の圧迫による十二指腸閉塞症を発表して以来腸間膜動脈性十二指腸閉塞症が世に知られたのであるが,その成因に関しては古来Habererの代表する機械的圧迫説とMelchiorの代表する胃十二指腸急性アトニー説とが対立して未だに論議が絶えない.多くの急性型報告例を見ると胃十二指腸の極度の膨満と上腸間膜動脈の走行に一致する閉塞とが認められて,かゝる末期では機械的閉塞と胃腸管麻痺との孰れが先行し,孰れが主役を演じたかを判別し得ないことが多い.そこでこの樣な劇烈な症状を呈しない以前の慢性型の存在が重要な意味を持つて来る.
 私共は先に18歳女に発生した急性腸間膜動脈性閉塞症の1症例について雜誌外科上に報告すると共に些か考察を試みたが,その後偶々本症の慢性型に遭遇したのでその特異な解剖学的所見を報告すると共に,これに対して行つた新手術法「十二指腸轉位術」を提唱して諸先輩の批判を仰ぐものである.

左耳下腺部刺創に対し同側総頸動脈の結紮を行える1例

著者: 中村和義

ページ範囲:P.33 - P.35

 総頸動脈の結紮は,屡々同側の脳組織の循環障害による脳軟化症等の危險症状を惹起すると云うことは,多くの成書に述べられて居る所であるが,戰傷経驗例によれば必しもかゝる障害を惹起するものに非ずとも云われて居る.
 私は,最近耳下腺部刺創により,止血困難なるために止むを得ず,左総頸動脈を結紮した所,失語症,反対側の半身不随,及び,知覚麻痺を来した一症例を経驗し、比較的長期に亘つて,その経過を観察する機会を得たので,こゝに其の大要を報告し,併せて,文献的考察を試みた.

外傷性股動脈塞栓症に対する血管移植例

著者: 石森彰次 ,   中村嘉三

ページ範囲:P.35 - P.37

 血管外科に関しては古くから多くの報告がなされ,特に1952年には日本外科学会に於て,木本1),戸田2)両教授の詳細にわたる報告が行われた.
 抑々血管移植に関しては,用いる移植血管の種類,保存法,吻合法,及び縫合材料科学に関して数多くの動物実驗並に臨床報告が行われ,最も安全で誰にでも行いうる方法が要望された次第である.木本教授はその報告の中で動脈移植には同種動脈を,保存には70%アルコールを用いる事が最も確実性が大であり,而も簡便である事を報告した.我々も常々血管外科に興味をもち,同教授の報告に基き予め血管保存を行つて,血管移植の必要にせまられた際の用に備えるところがあつた.

Hydrocephalus internusを伴うOsteogenesis imperfectaの1例に就て

著者: 吉田一次

ページ範囲:P.37 - P.39

 Lobstein(1833)は骨横径成長に障害を有し成年に発現した一症例をOsteopsathyrosis idiopathicaと名付け,Vrolik(1848)は同樣疾患をOsteogenesis imperfectaと命名して夫々今迄知られた先天性骨系統的疾患とは全く別個のものであると唱えた.其の後この研究は陸続として現われたが其の本態に関しては不明の点多く,各報告者によつて各自各樣の名称で呼ばれて来たがLooser(1906),住田(1910),内藤(1938)らの研究によりこの疾患は臨床的組織学的に同一疾患と考えられるに至り一般にOsteogenesis imperfectaと称えられるに至つた.
 私は最近,Hydrocephalus internusを伴う定型的Osteogenesis imperfectaの1例を経驗したので,ここに其の概要を報告する.

肝臓内刺入針摘出例

著者: 千葉公雄

ページ範囲:P.39 - P.40

 私は最近,満1歳の幼兒の右上腹部に刺入せる木綿針が肝臟内に刺入した症例を経驗し手術により,其の進入路を追跡し肝臟切開に依りて摘出得たので報告する.
 自驗例: 靑○則○ ♂ 満1歳双生兒の長子.初診昭和28年1月9日.

若年者胃癌の1例及びその統計的観察

著者: 富野武四 ,   小林和人

ページ範囲:P.40 - P.44

 20歳以下の胃癌は極稀で30歳以下の胃癌にしても1人で10以上経驗する医師は多くない.私たちは最近のその1を報告すると共に,当名古屋第一外科教室(斎藤外科及び戸田外科)に於ける昭和元年より27年間,12例の統計的観察を試みた.

膵臟結石の1手術治驗例

著者: 河合武夫

ページ範囲:P.44 - P.47

 膵臟結石は今日尚極めて稀な疾患であつて,1667年Graafが初めて本症を記載してから1946年までMo—urao及びSchindlerによると324例の症例報告があるに過ぎず,本邦に於ても阿部,望月,岡本,木下,宮村 中野,村山,富田,田宮,立入,小林,工藤,堀口,内藤氏等による16例の記載が見られるだけである.本症の発生頻度が稀であることは剖檢例の檢索からも明らかで,Simmondsは36000体に19例(0.053%).Edmondson及びBullockは36000体に26例(0.072%)を証明しているのみである.從つて膵臟結石の臨床的診断は容易ではなく,他の疾患と屡々誤られる.1896年にPearce Gouldが初めて膵臟結石を手術により剔出治癒せしめ得てから今日まで,欧米に於ても数十例,本邦に於ても僅か堀口,内藤の2例にしか過ぎない.
 最近教室に於て膵臟結石の1例を手術により剔出治癒せしめ得たので,その所見を記し症例を報告する.

蛔虫異所迷入の稀有なる1例

著者: 土生竜郞

ページ範囲:P.47 - P.49

 蛔虫により惹起される外科的疾患は極めて多く,胆道或は膵管内迷入等の症例は決して珍しくない.われわれは最近,右外鼡蹊嵌頓ヘルニヤの診断にて手術せる結果,大網が嵌頓しその中に死滅した蛔虫が迷入していた珍しい症例を経驗した.

異常な形のイレウス4例

著者: 篠原日出夫 ,   香坂義一郞

ページ範囲:P.49 - P.51

 イレウスのような重篤で急を要する外科的疾患では,殊に特異な形のものである場合,手術医の急速適確な判断と,それに基づく処理が患者の予後を決定する最も重要な要素となる.手に負えないから一應腹を閉ぢて,とゆうような事は絶対に許されない.このような疾患に直面した場合,先人の報告や,諸家の経驗の見聞によつて得られた一片の知識が患者の一命を救う事は,臨床手術医の誰もが経驗するところであろう.このような考えの下に,わたくし等が最近数年間に経驗した異例の形のイレウス数例を報告することは,無駄ではないと信ずる.

最近の外國外科

妊娠後半期に於ける虫垂炎について,他

著者:

ページ範囲:P.52 - P.53

(Zbl. f. chirur. 1953. Heft 6)
 新しい文献上妊娠性虫垂炎などの時期に於いても,早期手術を推奨しているが,妊娠後半期の虫垂炎に関しては,子宮壁が炎症に関與せる限りに於いては子宮内容の排出が必然的に併発するから中絶すべきだ.否,姑息的にすべきだ等の意見があるが.
 著者は経驗せる 1.6ヵ月,2.8ヵ月,3.7ヵ月の虫垂炎併発例より,單純性炎は虫垂切除後妊娠保持が出来たが,汎発性腹膜炎をおこし子宮壁に炎症が波及したものは早晩すべてに早期分娩が来るから,虫垂切除,誘導後子宮内容も同時に排出した方が,自然に経過する分娩に比し負担が少く,又腹膜の吸收面が全く減じるし,汎発性腹膜炎併発例はどのみち致死の結果を来し,出産を持続することは出来ないから,母親の生命への第1適應としては,自然娩出を待つ生活力ある胎兒を念頭におきながらも妊娠中絶を提案する.

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集談会

ページ範囲:P.54 - P.55

第521回東京外科集談会 28.10,17
 1) 胃捻轉症の1例
         東京医大外科 打越 慶三
 27歳女子.食後突如激痛,膨満,胆汁と混ぜざる嘔吐が起り,左側臥位のレ線所見に特異な像を認め術前診断を下し得た.開腹により腸間膜軸捻轉180°のものであつた.依つて整復,胃結腸靱蔕縫縮,治癒.本邦報告43例に就て考察を加えた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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