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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻10号

1954年10月発行

雑誌目次

綜説

小兒に対する筋注麻醉の應用

著者: 勝屋弘辰 ,   江口健男

ページ範囲:P.707 - P.715

I.緒言
 小児の麻酔法は従来,種々の方法が工夫,発表されてきたが,それらには各々利害得失があつて,小児の生理的並びに精神的特殊性,あらゆる種類の手術に応用できる方法の普遍性,わが国の経済上の制約からの隘路(例えば,第1級病院におけるような陣容,手術間の完備の欠如)等を一挙に解決しうるような麻酔法は残念ながら存在しなかつた.
 しかも,アメリカの影響によつて,麻酔の進歩発達は目ざましいものがある.このため,いままで主として行われた局麻一点張りの手術はもはや存立を許されない段階に立至つた.一方すでに,ヨーロッパでも,近代麻酔学は,その方法においても,精神愛護的方法(das die Psyche schonendeVerfahren)であることを要求していたのである.

脊麻に於ける注入藥液の分布

著者: 吉田潤

ページ範囲:P.717 - P.727

緒言
 Bier(1918)に始まつた脊麻法は,Braun,Jonesen Pitkin其他多数の工夫と努力を経て次第に進歩し,広く応用される様になつた.
 例えばSpinocain(1928)は低比重及び高比重を調製し,薬液の比重及び体位により任意の高さ迄の麻痺を発現させる調節脊髄麻酔法を考案,大いにその普及につとめた.

胆嚢炎とアレルギー

著者: 石橋幸雄 ,   澁谷勳 ,   田上尚弘

ページ範囲:P.728 - P.736

いとぐち
 嘗つてKrukenberg(1902)1)が胆石様疝痛は石がなくても起ることを初めて明らかにして以来,胆道のヂスキネジー(Gallengangsdyskinesie,biliary dyskinesia)は一般の注目を惹く所となり,過去20年間にその病像に関してはWestphal2),Chiray-Pavel3),Boyden4),Talman5),Ivy6)を初め多数の学者の研究があり,可なりはつきりして来たが,その本態に関しては未だ定説がない.所謂ジスキネジーはOddi氏括約筋のhypertony,胆嚢のhypotony又はatonyの結果,胆汁がうつ滞する現象であると解釈されているが,此の様な状態は実験的にmorphin,Codein等の鎮痛剤投与,或いは総胆管に弱塩酸を灌流(Long7),Shingleton8))しても起つて来る.又消化管の機械的刺戟例えば盲腸に電気を通じても(Birch,Boyden9)),結腸を水で充盈させても(Ooldman,Ivy10))Oddi氏筋を通過する胆汁は減少或いは全く停止する.

手術後の検索と解剖

著者: 山崎佐

ページ範囲:P.737 - P.746

1.事案の概略
 私は一昨年本誌に「外科手術後の解剖」と題して書いたが(本誌7巻1号)近頃これに類似した頗る興味深い事例を取扱つたので,その経過と判決の大様を記述して,臨床外科医諸君の参考に供する.関係者に迷惑がかつてはならぬので全部慝名を使うが,この事案を理解するには,かようなことはどうでもよいことであつて,たゞ客観的な事実だけを見ていたゞきたい.そしてこれが覆轍の戒となれば幸甚である.
 東京の東南A市にB病院がある.こゝには市立の大きな病院があるので,本来ならば裁判所や警察検察庁では,傷害事件の治療や死体の解剖などを,市立病院に持込むべきであるにも拘わらず,いつも必ずB病院に頼む慣わしとなつていた.

外科領域における蛋白補給の問題をめぐつて

著者: 高藤歲夫 ,   三宅壽郞 ,   永井長純 ,   水川五郞 ,   榎本尚美

ページ範囲:P.747 - P.751

I.いとぐち
 手術を対象とする外科臨床に於て,蛋白補給の問題が最も重要かつ不可欠のものの1つであることは,今日の外科医にとつて常識とされているところである.さればこそ,手術侵襲前後の蛋白代謝ないしは窒素平衡に関する諸研究は相接いで発表されており,就中,大村,渋沢,堺,湯浅,高山等々の諸氏によるこの方面の業績は,まことに注目に値するものである.われわれもこゝ数年来,柳病院長及び本名前病院長ご指導のもとに,外科領域における輸液の研究を続けてきた.たまたま昭和28年10月,第8回医務局研究発表会のシンポジウムに於て,各科領域における蛋白質補給の諸問題がテーマとしてとりあげられた.同学会に於て,われわれもこれまでの研究の中,蛋白に直接関連のある事項をまとめて発表する機会を得たので,こゝに記述して大方のご批判とご叱正とを乞いたいと思う.なおわれわれの別稿に於て,先に報告したところと一部重複する事項も含まれることを諒とされたい.

症例

閉鎖孔ヘルニヤの1例

著者: 栗津三郞 ,   高木寬

ページ範囲:P.753 - P.754

 閉鎖報ヘルニヤは稀な疾患で,吾国では未だ5例しか報告がない.吾々は最近此の1例を経験したので此処に報告する.

肺切除手術後の授動肋骨にみられた骨破壊像の1例

著者: 大久保信雄

ページ範囲:P.755 - P.756

 肺切除手術に際して胸腔内の合併症は種々の報告があるが胸壁に於ける合併症に関してはあまり報告をみない.然るに我々は,本手術を行い術後胸壁に於ける合併症を体験した,即ち肺切除施行後40日後に切断授動肋骨の前方授動部の崩壊を来し,胸腔に瘻孔を形成したため,この部分の肋骨切除をしなければならなかつた1例を経験したのでここに報告する.

頭部外傷心電図の興味ある1例について

著者: 白沢昭光

ページ範囲:P.757 - P.758

 頭部外傷は日常割合に多く見られる疾患であり,そのうち大半は事故等による不慮の災難によつて起る事は言うまでもないし,生命に対する危険は極めて多い.従つて心電図に何らかの変化が現われるのは当然と考えられたので,昨夏以来,頭部外傷時の心電図の変化を約10例分析してみたのである.併しながらその外傷の部位,程度,等により心電図の変化は正に多種多様であり,そこに一貫した共通の変化は見られなかつたが,そのうち興味ある一症例を発見したので報告する.

後腹膜癌腫の1例

著者: 橫山貢

ページ範囲:P.759 - P.761

 最近後腹膜癌腫の一例を経過したので,其の簡単なる文献的考察と共に自験例を報告する.
 後腹膜腫瘍は1829年Lobsteinが「後腹膜壁に発生し同時に存する臓器とは無関係なる新生物」と定義し,1901年Göbelがこれを狭義にして,「上は横隔膜より下は分界線に至る後腹膜に発生し,既存の臓器と関係ないもの」と定義して腸間膜腫瘍と区別したが,腫瘍増大して腸間膜に侵入すると腸間膜腫瘍なりや,後腹膜腫瘍なりや診断に迷う事もあろう.

瓦斯壊疽の1治驗例に就て

著者: 鈴木武松 ,   山口滋嗣

ページ範囲:P.763 - P.766

緒言
 瓦斯壊疽は主として戦傷に細発する創傷感染症で平時の外科に於ては比較的稀な疾患とされている.本邦に於ても平時発生例の報告は極めて乏しく,山口氏1)の自験例2例と其の蒐集した20例,藤河氏2)の5例,長生氏3),立花氏4),藤野氏5),小西氏6),杉山氏7)等の報告例を数えるに過ぎない.偶々私共は最返本症の平時発生例を経験し,臨床的観察を加えると共に病理組織学的及び細菌学的検索を施し得た.旦幸いにも主としてペニシリンの投与に依り患肢の切断をしないで治癒せしめる事が出来たので以下に症例を報告したいと思う.

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集談会

ページ範囲:P.767 - P.767

 第530回東京外科集談会 29.9.18.
 1)先天性十二指腸狭窄症の1治験例
           日大若林外科 板垣嘉和
 1年7ヵ月女児,食後1時間にして起る嘔吐,削痩を主訴.十二指腸空腸轡曲部附近の先天性狭窄によるもの,十二指腸空腸吻合により治癒,次第に栄養回復す.本邦報告例44を数え得.15例手術内9例治癒.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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