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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻11号

1954年11月発行

雑誌目次

特集 整形外科特集号

椎間板ヘルニアに対する新手術々式

著者: 近藤銳矢 ,   藤田栄隆 ,   綾仁富彌

ページ範囲:P.769 - P.773

緒言
 椎間板ヘルニアに対して,之に手術的侵襲を加える場合,単に椎弓切除を行つて軟骨結節を剔出した丈では,椎間板ヘルニアによつて招来された疼痛は之によつて消失するとしても,椎弓切除術施行後術後症状として殆んど必発的に現われる腰部の不安定感や脱力感は,爾後の作業能力に重大な影響を与えるばかりでなく,本手術施行患者の等しく不満とする所である.それ故椎間板ヘルニアに対する諸家の諸術式も,挙げてこの不快な腰部後胎症の防止にその努力が傾けられ来たと称しても過言ではない.
 ところで,この不快な腰部後飴症が,椎弓切除による脊柱支持力低下に起因する事は,諸家も之を認める所であり,さればこそ椎弓切除術の諸術式も,ひとえに脊柱支持力低下防止に対する改良工夫にその目標が指向されて来たわけである.
 さてそれでは,この脊柱支持力低下を防止する為に,従来どの様な術式の改良工夫が試みられて来たか,それを大体3つの方針にわけて検討して見よう.

骨関節結核の関節切除術の成績

著者: 片山良亮 ,   大矢莞爾 ,   伊東秦也 ,   前田正彥 ,   沢田フサ ,   宗像朝雄 ,   相沢千代

ページ範囲:P.775 - P.781

緒言
 抗結核化学療法は骨関節結核の治療に,大きな進歩をもたらした.然し抗結核化学療法のみによる治療では左程の効果を望み得ないもので,之に従来の整形外科的保存的療法や観血的手術を併用した際にのみ極めて優秀な成績を期待する事が出来る.吾々は嘗つて抗結核化学療法と保存的療法の併用は,初期並に急性期には効果の大なる事を報告したが,今回は陳旧慢性例に対する観血的手術と化学療法の併用に就いて述ぶ.
 骨関節結核の観血的手術と化学療法の併用に就いては,1946年頃よりMorgan&Bosworth或はBrock等が冷膿瘍に対するSMと切開の併用法を発表し,Smith&I-Sen Yu は観血的療法とSM併用に依る瘻孔の治癒促進に希望を抱かせた.また片山は1949年混合感染を起せる瘻孔に,Pc療法を施す事により,瘻孔の閉鎖を促進し得ることを述べ,次でPcの応用下に瘻孔や膿瘍の剔出術が,之等の治療に或る程度有効に働く事を説いたが,(第22回日本整形外科学会総会宿題報告)更にSM其他の抗結核化学療法剤の発見されるや,同じく膿瘍や瘻孔の剔出術に応用した.(詳細は拙著「結核の化学療法」並に「骨関節結核に対する観血的手術並に骨欠損の補填と人工骨頭の応用経験:医学XIV. No.3」を参照され度い)

足関節固定手術の改善のために

著者: 宮城成圭 ,   矢野禎二 ,   田中淸一

ページ範囲:P.783 - P.792

いとぐち
 私がこゝに言う足関節固定手術とは足関節の一部又は全部を癒合せしめる関節癒着術,足関節運動の一部を制限する制動術及び両者を合併した手術方法を指して居る.関節癒着術はWienの外科医Albert(1878)が急性灰白髄炎後遺症(以下単にPolioと略す)の膝関節に支持性獲得の目的を以て手術したのを嚆矢とし,足関節に対してはvon Lesser(1879),Samter(1895).Kirmisson等に溯る.又制動術は反脹膝に対してWollenberg(1912)が,足関節に対してはToupet(1920)が始めて試みたがPutti(1922)によつて命名せられたものである.其の後之等の手術は非常に多数の学者によつて試みられ,各種原因による麻痺足に支持性を与える永続性,確実な方法として広く利用せられるに至つた.一方足麻痺を起す原因はPolioを最多として極めて多く,又麻痺に附随して起る変形も多種多様であり,其の程度も又千差万別である.その上に足関節は上下踝関節,Chopart関節等多くの構成要素をもつているので手術方式は多様である.個々の手術々式に関しては古くはWeilの総説を始めとし,神中先生の手術書,Campbell,Lange,Steuidler等,何れの整形外科手術書にも多くの紙面をさいて詳述されており,而も尚お新術式の提唱が其の跡を絶たない現状である.

股関節結核治療の検討

著者: 伊藤鉄夫 ,   植木省三

ページ範囲:P.793 - P.799

まえがき
 関節結核治療の原則は何れの関節に於ても厳守されなければならないのであるが,今特に股関節結核をとりあげた理由は,股関節結核は種々な治療法の効果を分折的に研究するのに最も好都合な条件を供えているからである.股関節は特有な解剖学的構造を有するために他の関節に於ては見られない様な複雑な病変が起り,そのために各病変に応じて治療法を変えてゆかなければ充分な治療効果を挙げることは出来ない.而もその治療法は常に一貫して関節結核治療の原則に従つておらねばならないのであるから,股関節結核治療に就いて研究することは関節結核治療の普遍的原則を研究することになると考えられる.それで茲では股関節結核における私共の治療経験について述べると共に他の関節結核の治療に就いても少しずつ検討を加えて行きたいと恩つている.そうすることによつて関節結核治療法の全貌が非常に明瞭になり,又正しい批判への基準が得られるだろうと思つている.
 これから述べることは,その大部分が以前から考えられ,また行われて来た種々な治療法の範囲を出るものではない.たゞこれ等の治療法を一つの体系として整理したいという望を持つているのであつて,これはそのための思惟過程であると理解していたゞきたい.

化学療法下における骨関節結核の観血的手術とその再燃について

著者: 伊丹康人 ,   前田正彥 ,   川戶一 ,   柳瀨孝德

ページ範囲:P.801 - P.807

まえがき
 1943年Waksman一派によるStreptomycin(SM)の発見は結核治療の上に暗夜の燈とも言うべきものであるが,Lehmannによつて結核に有効な事が発表されたPAS,Benisch,Mietsch並にSchmidt教授等によつて創製せられたTB1,或はFox,Schnitzerによつて合成され,抗結核化学療法剤(化学療法剤)として取り上げられたIsonicotinic acid Hydrazine(INAH)等の出現は結核治療の上に一大変革をもたらしつゝあるといつても過言ではない.併しながらこの方面の研究が山積すると共に,又反省の日月が過ぎるにつれ,諸学者によつて,之等化学療法剤の効力の限界が次第に明示されると共に,之等薬剤の適応症の選定或は最も効果的な運用法が種々論議されつつある事は現今化学療法界の大きな流れというべきであろう.
 吾が片山整形外科学教室に於てはSMが導入せられて以来,多数の臨床例と動物実験に於て,詳細なる細菌学的,病理組織学的検索がなされてきた.而,片山教授が骨関節結核の治療は極く初期のものを除いては,化学療法下に病巣の可及的完全なる剔出術(関節切除術)こそ極めて効果的である事を提唱せられ,既に数年以上にもならんとしている.

股関節人工骨頭手術の随伴障碍

著者: 関巖 ,   土田勝

ページ範囲:P.809 - P.817

はしがき
 外傷或は諸種疾患の結果大腿骨頭部の欠損或は高度変形を来たせるもの,又惹いては陳旧性並びに新鮮大腿骨頸部骨折の治療法として人工的骨頭を挿入する手術は,1949年Judet兄弟によつて初めてAcryl樹脂製の人工骨頭(以下Prosthesis--Prと略記)使用例が多数且つ詳細に報告されるに及んで漸く学界注目の的となり,その後いささか濫施される観を呈したのであるが,本手術は未だ実験の域を脱せず,正しい批判を下すまでには今後尚お長年月の検討を必要とする現状である.私(関)は1950年頃より本手術を実施し,その結果は1952年以後毎年日本整形外科学会に報告して来たが,本手術は適応を誤らなければ確かに優秀な効果を挙げ得る自信を持つに至つた.然し乍ら多数症例の中には直接手術の影響による合併症を呈するもの,又術後経過中に発現する随伴現象が可成り多くあり,是等が手術効果を著しく阻害する事実を確認した.これら随伴現象の原因を探究し更にこれを予防する処置を考究することは,将来本手術が最も安全にでき且つ良好な成績を挙得げるに最も重要なことであると信じ,約40例の臨床実験から得た経験を記述し以て迫試される方々の便に供し度いと考える次第である.

胸椎並に腰椎上部のカリエスに対する病巣廓清術の経験

著者: 笠井実人 ,   大橋良三 ,   粟屋梧老

ページ範囲:P.819 - P.823

はしがき
 近時脊椎カリエスに対する治療は,化学療法併用の下に骨病巣に直接手術的侵襲を加える所の,いわゆる病巣廓清術が行われつゝある.京大近藤教授は腰椎カリエスに対して,前方より腹膜外に病巣に達する方法を提唱し,且つ甚だ良好なる成績を挙げておられる.然し胸椎及び腰椎上部のカリエスに対しては,前方より病巣に到達することは困難である.吾々は胸椎カリエスに対しては肋骨横突起切除術,腰椎上部のカリエスに対しては横突起切除術を行つて,後方よりする所の病巣廓清術を行つて来たのでその成績を報告する.

先天性骨系統疾患の一型について

著者: 猪狩忠 ,   佐々木仁一 ,   志田進

ページ範囲:P.825 - P.831

緒言
 骨系統疾患を眺める一つの基準として,発現の場と造軟骨細胞及び造骨細胞の能力の立場から一元的に解釈しようとする傾向が強くなつて来ておる.私共が次に述べようとする一疾患は以上の観点から分類上の位置に因る様な,又文献的にこれ迄渉猟した限りでは島氏の類似例が唯一例,然も重要な造骨細胞の現れ方については必ずしも一致してないという先天性骨系統疾患で無理に類似性を求めるならばDysostosis cleido-cranialis, Os_teognesis-imperfecta.及びOsteopetrosis,の根本的に相異なる疾患を一緒にした様な疾患を経験したので出来る丈けの検索を加えて見た.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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