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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻12号

1954年12月発行

雑誌目次

綜説

門脈圧亢進症に対する外科的治療法の検討

著者: 今永一 ,   磯部吉郞 ,   永田弘 ,   張九二次郞 ,   山本貞博 ,   松崎一郞 ,   斎藤秀偉 ,   白木孝男

ページ範囲:P.835 - P.848

 門脈圧亢進症に対する外科的治療法に関して,私共は茲数年間に亘り,大網膜腎被包術に就いて実験的並に臨床的に考究を進め第52回日本外科学会1),第39回日本消化機病学会2)3)及び其他の機会4)5)6)にその成績を発表してきたが,こゝでは私共の最近の実験並に臨床上の成績に基いて門脈圧亢進症に対する外科的治療法として提唱されている数種の手術的療法に就いて若干の検討を試みたいと思う.

大腸運動と回盲部腸重積

著者: 植草実 ,   岡田三郞 ,   遠藤博 ,   林亨

ページ範囲:P.849 - P.856

 回盲部腸重積の成因に就ては早くから興味を持たれているが素因,誘因に就てはとも角,その発生機序に関しては未だ殆ど不明である.腸重積の発生には今日でもNothnagelの痙攣説が広く行われているがこれを人の回盲部に当てはめるにはなお疑問があつてこの方面にはその後何等の新知見がない.その大きな理由はこの部分での実験的研究の困難性にあると思う.またそれが生体に起りうる条件で試みられねばならぬことも理由の一つである.
 古くから腸重積がしばしば腸壁腫瘤を先端として発生することはよく知られたところで,しかもその殆どすべてが下行型であることから,この場合,重積が発生,進行するには腫瘤が腸内容として腸運動によって牽引され附着部腸壁がこれに伴うのによるのであろうと云うことが考えられる.

外科領域より見たる最近の血管收縮剤(1)

著者: 田中大平 ,   傅賴全 ,   近藤芳夫 ,   河合逸郞

ページ範囲:P.857 - P.871

緒言
 最近の麻酔及び手術の目覚しい発展に伴い,手術時或いは術後循環障碍の危険が極めて多くなり,その対策が各方面から講ぜられている.その対策として,第1には輸血輸液に依つて,血管床に対する血量の過少を補う方法,第2には血管収縮剤を投与して,末梢血管床の容積を減少させ,重要臓器での血量との不均衡を是正し,血圧を上昇させる方法等が有効と見做されている.その様な見地から吾々は数年来血管收縮剤を再検討する必要を感じていたが,昨年末興和化学の尽力に依つてNeosynephrine hydrochloride(ネオシネジンコーワ)を入手する事が出来たので,これを機会にこの研究に着手した.
 血管收縮剤としてカフェイン,ストリキニーネ等の中枢興奮剤や,ヂギタリス,麦角等の血管壁筋自身の刺戟剤を除き,交感神経末梢興奮剤の中,近年欧米で盛に研究せられている交感神経興奮性アミンに関して検討を加えたのである,これは外科的ショック或いは類似の循環障碍の時に,臨床的には最近特に交感神経興奮性アミンが問題になる為めである.

小児のNo Rebreathing型吸入麻醉

著者: 山本眞

ページ範囲:P.873 - P.881

まえがき
 外科的治療の発達は小児にも手術的侵襲を加える機会を増加せしめているが,小児に全身吸入麻酔を施行する事に対しては尚お不安を抱く人が多い.その不安の原因は別として小児手術にとつての全身吸入麻酔の必要性について少しく考えてみると,小児に観血的治療が施行される場合,疼痛に対する感受性のごく未発達の時期は別としても小児は一般に恐怖心,依頼心強く,抑制力が弱く,且つ自律神経機能の不安定なものが多く,通常採用される浸潤麻酔,伝達麻酔,脊髄麻酔では手術の真の意味の完成を期し難い事が多い.こゝに小児の全身麻酔の必要性が見出される.図1は九大整形外科教室における最近3年間の各麻酔法の使用頻度である.
 全身麻酔の方法としての静脈麻酔,注腸麻酔,筋注麻酔,骨髄内注入麻酔等は麻酔上最も確実であるべき薬剤量の調節という点が不確実であり,従つて麻酔が過深となつた場合の処置に困る訳である,それ故に小児の安全で完全な麻酔法としては吸入麻酔が採用されるべきであると考えられる.小児の吸入麻酔法には開放点滴法によるものが最も多い.開放点滴法は簡便で種々の小児に適した利点を有するがその呼吸,循環,薬剤量,麻酔深度等の管理という様な機能性が小さい.成人にとつて甚だ有用な閉鎖循環式又は往復式麻酔器は回路の抵抗も大きく小児にとつて不適な点が多く,気管内挿管も施行後の浮腫等安全性の上から考慮すべき点が少くない.

症例

空腸癌の2例

著者: 石井正文 ,   藤本吉秀 ,   二之宮景光

ページ範囲:P.883 - P.887

 小腸に原発する癌は,他の消化器に発生する癌に比較して甚だ少く,殊に空腸癌は極めて稀とされている.文献を見ても,本邦に於ては昭和2年に室月1)が報告して以来僅かに10例を数えるに過ぎず,欧米に於ても1824年にSorlinが最初の報告をしてから約200例の症例を見る程度である.稀な疾患である上に,臨床的に診断をつけることが一般に困難であり,従つて手術の時期がおくれて予後が悪いことを諸報告者がひとしく強調している.我々は腸狭窄症状を呈した患者で,手術により空腸癌と確診した2例を経験したのでこゝに報告し,併せて文献的考察を行い,諸家の御批判を仰ぐ次第である.

破傷風痙攣による胸椎圧迫骨折の1例

著者: 佐藤順

ページ範囲:P.889 - P.890

 破傷風痙攣発作による躯幹筋の收縮で,脊椎の圧迫骨折を生じた1例を経験したので報告する.

胸廓成形術に起因せる胸鎖関節脱臼の治驗例

著者: 大沢光彥

ページ範囲:P.891 - P.893

緒言
 胸鎖関節脱臼に関する報告はそれ程稀ではないが,その殆んどが外傷性のものまたは病的脱臼即ち関節それ自身に起つた病変を基礎として発症した例である.
 わたくしは胸鎖関節を形成する鎖骨及び胸骨とは直接関係を持たない部位の形変,すなわち胸廓成形術による胸廓の変形によつて誘導された.胸鎖関節脱臼の1例を経験し,観血的手術によりこれを治癒せしめ得たが,関節固定のため従来用いられた筋膜その他金属線等を用いることなく,ビニール管を使用良効果を收めえたので,こゝにその症例を記載し,諸家の御参考に供すると共に御教示を仰ぐ次第である.

右側卵巣嚢腫茎捻轉と急性虫垂炎性盲腸周囲膿瘍の合併症例

著者: 宮川忠弘

ページ範囲:P.895 - P.897

 腹部外科殊に婦人科との境域に於て比較的急剤な下腹部疼痛を以て始まり,術前其確診に困難を感じ,然も臨床医家の屡々遭遇する疾患に子宮外妊娠破裂,卵巣嚢腫茎捻転,急性虫垂炎性腹膜炎がある.之等は何れもその症状急激に来り結局早期に開腹手術を必要とし,診断決定のために徒に時間の遷延を許さぬ場合がある.亦各種の補助診断法を以てしても,尚お断定に苦しみ開腹して始めて合併症の存在を知る場合もある.私は右側卵巣嚢腫茎捻転と急性虫垂炎性盲腸周囲膿瘍と合併せる例を経験したので茲に報告する.

乳腺結核の2例

著者: 西成浩 ,   阿部啓一

ページ範囲:P.898 - P.899

 1829年Cooperは乳腺結核の存在を指摘し,又1865年Virchowは「乳腺に結核なし」と発表しているが,その後Dubar(1881)が臨床的に詳述し,又Cuneo(1868),Ohnacker(1883)が動物接種に,Roux(1861)が結核菌の検出分離に成功してこゝに乳腺結核の存在が確立され,現在まで外国では535例(Moor1)1953),本邦では86例(増田)2)の症例報告をみるに至つた.著者の教室に於ても高橋3)(昭9),佐谷4)(昭18),及川5)(昭24)が合計11例の報告をして居るが,最近更に2症例を経験したのでこゝに報告する.

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集談会

ページ範囲:P.900 - P.900

第531回東京外科集談会 29.10 16
 1)小児限局性肝硬変症の1手術治験例
           東大分院外科 河合逸郎・他
  演者の都合により中止
 2)急性直腸狭窄の手術治験2例
          国立横須賀病院 山田 佐・他
 48歳男子,頻回の浣腸,下剤投与により上部腸管の内容増大しS状結腸の軸捻転を来した.原病は直腸上部の狭窄性直腸癌.51歳女子,蜂窩織炎性虫垂炎に対し虫垂切除後イレウス症状を呈し,再開腹の結果ダグラス氏窩に嵌入せる皮様卵巣嚢腫の茎捻転による直腸圧迫が原因であつた.

「臨床外科」第9卷 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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