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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻2号

1954年02月発行

雑誌目次

綜説

冬眠麻醉について

著者: 羽田野茂 ,   大谷五良 ,   垣內直樹 ,   阿曾弘一 ,   藤原國芳 ,   斎藤聰芳良

ページ範囲:P.57 - P.61

 LaboritとHuguenard1)は術後のショックの予防およびその治療,重篤な化膿性疾患の治療,又重症患者の手術に対する麻醉法として1951年L'hibernation artificielle人工冬眠を臨床的に創案実行した.その根拠とする所は生体を一定條件下で冷却せしめることにより,その細胞の酸素消費量を減少せしめ,生命を延長し,一時的に生体の諸機能を最低位にもち来し,手術侵襲その他外傷に対する人体反恋を最少限度に喰い止めんとするものである.
 このフランス法はphenothiazin誘導体であるPhenergan(Atosil),Diparcol,4560RP(Megaphen)等の自律神経遮断剤や抗ヒスタミン剤を主とし,その他opistan,procain,筋弛緩剤,栄養剤等を混合し,これをcocktail lytiqueと名付け,靜脈内に点滴注入しつつ身体を冷却し,長時間に互り低体温を保たしめる方法で,本法に関しては東大名誉教授都築正男博士と羽田野とが日本医事新報紙上にその文献と共にこれを既に紹介しており,又最近刊行せられた桑原悟助教授著「人爲低血圧と冬眠下手術」2)中にも記載せられているのでその詳細に関しては省略する.

膵切除後の糖尿問題

著者: 鈴木礼三郞 ,   金子保彥 ,   斎藤伸夫 ,   佐々木健孝

ページ範囲:P.63 - P.66

 膵の惡性腫瘍に対する膵全摘,亞全切除,或は部分切除により糖質代謝がどうなるかと言う事は極めて重要な事である.一方膵切除量と糖尿の研究が広く動物実驗によりなされて来たが,本問題を論ずるには先づ臨床例に就いて観察されなければならない.
 昭和25年6月から同28年7月迄の間に桂外科教室に於いて取扱われた症例は22例で,之に就いての経驗と動物実験による2,3の知見から此問題に就いて論じてみたい.

補液としてのGlyco-Alginについて(第5報)—糖代謝附臓器に及ぼす影響

著者: 高山坦三 ,   菅原古人 ,   小川正克 ,   高橋哲男 ,   大庭嘉人 ,   金谷寬 ,   露口幹彥 ,   丸山行道

ページ範囲:P.67 - P.72

 1 われわれは,過去の4篇の論文において,われわれの創案した補液剤「グリコ・アルギン」(以下「グリ・アル」と略記する)が,下降血圧の上昇維持の点においてきわめて優秀なものであることを各面から檢索,立証してきた,すなわち本剤は,体内水分配置に対する影響の点においてほゞ理想に近いものであること,詳言すれば,循環血液,血漿量をほゞ理想に近く改善して,細胞外相をほとんど増大せしめないこと,とくにその点滴靜注は心機能および腎機能に対してまつたく惡影響をおよぼさないこと等を見てきた.
 ついでわれわれは本剤がブドー糖製剤である点からみて,糖代謝に及ぼす影響ならびに肝における糖代謝に及ぼす影響について檢索をおこなつたので,そのえた成績をこゝ発表する.

胃癌手術の拡大と直接成績について

著者: 石原恵三 ,   宮下謙治

ページ範囲:P.73 - P.79

 胃癌に対する胃切除術は,1881年,Th.Bill—rothによつて始められてから広く普及して数えきれないほど多数の患者に回生の悦を與え,その治療成績は年々向上しているが,永続治癒率は甚だ低い.手術後5年以上の生存者は根治手術例の20〜25%に過ぎず,しかも腫瘍剔出率が精々50%で,手術死亡率が10〜20%に達し,手術を受けられないものを入れると手術によつて永続治癒が得られるのは胃癌患者全体の僅か5%前後となる8)9)20).最近は成績がやゝ向上し19)11)28),W.Waltersは1907〜1916および1940〜1949年間の成績を比較して,5年生存率が180%増して14%に改善したと報じている.これを見ても胃癌の從来の手術成績がほかの癌(乳癌50%,結腸癌45%)にくらべていかに貧弱であるかが判る.胃癌は発生頻度において上位を占め,かつこれに対しては手術以外に有効な治療法のない現状からみて,これは由々しい問題である.

上腕骨顆上骨折に対するキルシュナー鋼線固定法の考察

著者: 橋倉一裕 ,   千田武 ,   伊藤邦彥 ,   米田忠久 ,   松丸禎夫

ページ範囲:P.81 - P.85

まえがき
 日常屡々経驗する小児の上腕骨顆上骨折に対する治療法は殆んど完成の域に達したかの感を有するが実際には神中氏が指摘する如く本骨折は整復及び固定に充分の経驗技術を要するために変形治癒が少なからず見られ,必ずしもすべての症例に於いて満足すべき成績が得られていないようで,片山氏も尚お改良の余地を有する治癒域であろうと述べている.周知の如く骨折に対しては原則的に非観血的整復固定法を行うべきであるが,治療の促進治療期間の短縮並びに継発的合併症の予防のためにはより合理的効果的療法を取らなくてはならない.最近屡々施行されている骨折固定法の一つとしてキルシュナー鋼線固定法が應用され,Dieterle Murray, Telson, Wheelden,天兒,水野,宮城,永井,原田等の諸氏は大腿骨頸部,下腿骨,鎖骨,上腕骨,前腕骨,顔面等の骨折に対して経驗し,良成績を挙げている.然し上腕骨顆上骨折に対するキルシュナー鋼線固定の應用経驗例は少く,非観血的にはSwenson A. L(1948)が應用し,観血的にはDonchess J. C.(1949)が後方縦切開より侵入整復固定例を発表して居り,更に松野奥田(1952)は5例の経驗報告を行つているが,いづれも固定の確実性と早期運動訂能の利点を挙げている.吾々も同様な方法で昭和26年来観血的整復を要する11例について経驗し,比較的良成績を得たので2,3の考察を行つて見た.

Clearance Testの1私案

著者: 加藤敏昌 ,   服部保

ページ範囲:P.87 - P.90

 近年アメリカに於ける腎機能の研究の発展に依り腎のどの部分がどの程度に侵かされているか.即ち腎血漿流量(R.P.F.)糸球体濾過値(G.F.R.)尿細管排泄極量(TmPAH)尿細管再吸牧極量(T—mG)糸球体濾過率(F.F.)の計測が可能になり腎機能槍査法は全く面目を一新した.
 之に依り從来不可能であつた糸球体及び尿細管機能の個々別々の分析が容易となり,各種外科的疾患の病因究明或は予後判定,治療上大きな利点が齎らされた.

下肢靜脈瘤の1治療法についで

著者: 泉周雄 ,   高村博臣 ,   義江正義

ページ範囲:P.91 - P.93

 下肢靜脈瘤は主として大伏在靜脈壁及び弁の器質的変性に起因する疾患で,我が國に於ては欧米に比してその発生は少い.從つてその治療法に関しても諸種の方法が行われては居るが,特に定見はたてられていない.我々は最近かゝる患者に対して大伏在静脈の結紮切断及びその末梢部えの高張葡萄糖液注入療法を行つてゝ好結果を得たのでその成績を報告し,簡便にして有効なる方としてこれを推賞する次第である.

ファロー氏四徴症に対するBlalock-Taussig氏手術経過中の動脈血中酸素飽和度の変動

著者: 中山耕作 ,   木村賢二 ,   松田和雄

ページ範囲:P.95 - P.101

 近年心臓外科の発達に伴い,Anoxiaに関する問題が種々檢討される様になつたのであるが,外科領域に於ける流血酸素飽和度計による測定に就いては,本邦では未だ余り記載されていない様に思われる.
 此処で吾々が問題とするのはファロー氏四徴症であつて,始めから低酸素血状態にあり,之に対して開胸,吻合手術等の侵襲を加えることは,更に高度の低酸素血状態を惹起し得る危險に常に曝されている.從つて,常にその流血酸素飽和度を測定することは極めて重要であり,之によりその生起する危險を未然に防ぐことが可能になるわけである.

症例

膀胱全剔除術の1例

著者: 幅田保 ,   渡辺紋郞 ,   麻生弘

ページ範囲:P.103 - P.106

 膀胱惡性腫瘍に対する從来の姑息的治療法では,その治療効果に一定の限度があるために,最近その根治療法として,膀胱全剔除術がとりあげられるようになり,それに伴う尿管腸吻合術が,色々と検討されてきている.ここ数年間に於ける化学療法の進歩,輸血,輸液の研究,麻醉の発達は,この大手術の安全性を大きくし,膀胱惡性腫瘍の根治療法は一段と向上するようになつた.我々は最近人工肛門造設を兼ねた直接式腹膜内尿管S字状結腸吻合術を行い,膀胱全剔除術を一次的に施行し,術後1ヵ年を経て,比較的順調なる経過をたどつた1例を経驗したので報告する.

肝動脈結紮後生存せる1例

著者: 梶谷鐶 ,   山田粛

ページ範囲:P.106 - P.111

 肝動脈結紮は古来致命的処置として怖れられ七いるところであるが,我々は今度胃癌手術後の出血事故のために肝動脈を結紮し,5ヵ月余を経た現在少くとも著明の肝障害なく生存している1例を経驗したので,興昧ある症例として報告する.

アミピロンの臨床成績

著者: 伊藤健次郞 ,   寺田俊郞

ページ範囲:P.111 - P.114

 1884年Knorrがアミノピリスを合成して以来ピラツォロン系鎭痛解熱剤中アミノピリンは最も広く應用され,且つその効果が認められて来た.
 1926年Schottmüllerが急性関節ロイマチスにアミノピリンの大量衝撃療法が卓効を奏する事を提唱したが,アミノピリンの経口的使用は胃腸障碍を起すことが多い爲に,又非経口的使用はこれが水に難溶性であつて適当な製剤が得られない爲に,急性関節ロイマチスに適切なアミノピリン療法が行われなかつた.

胃軸捻轉症の1治驗例

著者: 山田勲男 ,   河田幸一

ページ範囲:P.114 - P.115

 胃軸捻轉症は極めて稀有な疾患とされているが,私共は最近Acute Abdomenの患者を開腹し本症なることを確認し,之れを治癒せしめ得た1例を経驗したので茲に報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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