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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻3号

1954年03月発行

雑誌目次

綜説

陽性石鹸について

著者: 石田正統 ,   鹿田和夫 ,   常松之典

ページ範囲:P.117 - P.123

 近時各方面で陽性石鹸が注目され,手術手洗いに用いれば從来のFürbringer氏法に勝るものであるといわれ1)2),其の製品も十数種に及び研究改良が加えられて各社其の特長を誇示するに至つて居る.
 著者等は追試の目的を以て市販の数種を選び,殺菌力の検査と共に其の手洗法を細菌学的に從来の方法と比較し,又如何なる使用法が最も合理的であるかを檢討した.其の結果これらの使用は明かに手洗時間を短縮するばかりでなく,いくつかの点に於て從来の方法に勝ることを知つたので多少の文献考察を加えて茲に発表する次第である.

スキー外傷について

著者: 金田賢之介 ,   杉谷晃俊 ,   北岡宇一 ,   岡田允克

ページ範囲:P.125 - P.127

 ウィンタースポーツの花は恐らく何と云つてもスキーに止めをさすであろう.最近これが益々隆盛の一途をたどりつゝある事は誠に喜ぶべき事であるが反面相当多くの外傷患者が発生している事は遺憾である.特にスキーに対する予備知識や,当然起り得べき外傷に対する知識の持合せのないものが大部分であり而も相当有名なスキー場でさえ救急処置の施設すらなく,外傷患者も姑息的な治療で放置されている状態である.スキー外傷に対する報告は我国では比較的少く斎藤氏は5ヵ年間に三つのスキー練習團体についての統計をあげ捻挫が最も多いとしている.奥田氏は山岳難誌書外傷発生の諸種の要因を挙げている.Hohmannはスポーツ外傷では骨折の外膝関節外傷の最も多いのはスキーと蹴球であると云つている.我々は昭和28年1月,2月の日曜だけ国立公園大山スキー場に仮救護所を設けて今後の救護施設設置の参考に資する爲,外傷患者の救急処置を行い短時日の間に28例の外傷を経験したのでその概略を報告する.

移動性盲腸の縫縮法変法について—(腸管縦軸索引縫合法)

著者: 米沢徹馬 ,   加納和雄 ,   山川明寬

ページ範囲:P.129 - P.132

 移動性盲腸はHausmann(1904)に依り始めて命名されたものであるが,我々が日常遭遇する疾患の1つである.又虫垂炎手術に際し,著明な移動性盲腸を認める機会が多いが,可なり強い移動性があつても何等の症状を呈せぬ場合もあり,移動性の程度とは一定の関係は無い様である.我々は症状の有無に拘わらず,虫垂切除時必らず移動性盲腸に対する手術をも施行せるのを立前としている.
 手術々式としては縫縮法(盲腸皺襞形成法Delbet 1905. C. ten Horn)により,他の固定法(Wilms),切除法等を行わねばならぬ様な症例に我々は遭遇していない.縫縮法は盲腸上行結腸の両結腸紐を相互に縫着して,その間の腸管壁も内腔に嵌入し,腸管壁を狭少にするのであるが,これにより内容停滞を無くし,腸管機能の恢復を計り,所謂移動性盲腸症状の消褪を企図せんとするものである.術式として極めて簡單であり,多くの人により実施されているのであるが,縫縮法施行後の術後不快症状を発して,我々のもとに来院,再開腹する機会を得たる2症例を経驗,縫縮法は確実に然も丁寧に行わねばならぬことを教えられ,このことから從来の方法を再檢討し,縫縮法変法ともいうべき私案を工夫,これを移動性盲腸患者15例に施行して,極めて確実容易に縫縮法を行い得,且つ又不完全縫縮に続発する不快症状を防止し得る利点があることを確信するに至つたのでこゝに報告する.

外用ペニシリン錠の使用成績—第3報 ビリミジンペニシリンG2号外用錠

著者: 布施貞夫 ,   川俣芳雄

ページ範囲:P.133 - P.134

 ペニシリンを局所に使用すれば,必要な部位に大量適用することが容易であるので,從来,水溶液塗布注入,灌注,及びパスタ塗布の形で行われて来た.
 併し,今,粉末撒布ということが出来るならばその応用範囲は一層自由である.之の形式がペニシリンでは行われ難かつたのには勿論理由があつつもつ吸濕性の僅少という性格によつて,錠剤中のペニシリンの安定性に格段の差がみられ,從つて製品の市場性も出て来たので,私の教室で取扱う範囲の症例と共に報告する.

再度の心臓マツサージによって恢復せしめた1例

著者: 傳田俊男 ,   中村嘉三 ,   正津晃 ,   鈴木達雄

ページ範囲:P.135 - P.140

 急性心動停止(急性搏停止)に対して心臓マッサージを行つて救助し得た報告は,本邦にても木本教授1)の詳細な報告,林田氏其の他追加報告があり,特に目新しい問題ではないが,同一患者に対して2回の手術を行わんとして急性心動停止を来し,心臓マッサージにより2回共恢復せしめ得た例であるので検査其他不備な点もあるが敢えて報告する次第である.

症例

巨大結腸の1例

著者: 中岡武彥 ,   渡辺とうる

ページ範囲:P.141 - P.143

 Hirschsprungが先天性巨大結腸について報告(1886)して以来,多くの人々によつてこれに類似の疾患が,Hirschsprung氏病或は巨大結腸として報告されているが,その内容は多種多様である.
 最近私達は,国立岩国病院に於いて,イレウスの手術後新しく生じた癒著によるS字状部の捻転によつて形成され,しかもその間の経過の明らかな巨大結腸の一例を経験したので,其の症例を報告す為とともに,いささか考察を加えてみたいと思う.

急性虫垂炎性汎発性腹膜炎と誤まられた右側卵管間質部妊娠破裂の1例

著者: 宮川忠弘 ,   斎藤尚二

ページ範囲:P.143 - P.144

 子宮外妊娠は産婦人科に於ては日常屡々,経験する所であるがその一部である卵管間質部妊娠は比較的稀に見られる疾患である.沢崎,輿石氏等によると,東大産婦人科教室に於ける30年間(1931〜1950)の子宮外妊娠は197例にして卵管間質部妊娠はその中僅か4例(2.03%)に過ぎない.而して本症は胎嚢破裂により又は卵の死亡によつて妊娠が中絶されるが多くは早期に卵管壁破裂を来し,突然の疼痛発作,惡心,嘔吐を伴い急性腹部症状を呈し,時として急性穿孔性腹膜炎との鑑別困難なことがある.我々は妊娠第3月に合併せる急性穿孔性虫垂炎による汎発性腹膜炎の診断の下に開腹し,右側卵管間質部妊娠破裂症なるを確認した症例を経験したので茲に報告する.

胆嚢除去後の再発性胆石症の手術治験例

著者: 小林誠 ,   檜久男

ページ範囲:P.145 - P.146

 胆石症にて胆嚢を除去し,胆石を除去するも,相変らず術前と同様に疼痛発作に苦しめられることが屡々ある.かゝる場合に外科医はPseudorecidivという曖昧な言葉を使い,内科的治療にゆだねることが多く,再発症に対する再手術は比較的少いようである.私は胆石症にて胆嚢除去後10年目に再発し輸胆管より胆石並びに蛔虫の摘出を受けた患者が,その後4年目の最近三度再発し肝臓膿瘍と膵臓炎を併発せしも,輸胆管より結石4個を摘出し,輸胆管,十二指腸吻合術を行うことにより幸い治癒せる一例を経験したので,茲に報告し諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う.

純型肺動脈狹窄症に対する手術

著者: 木村賢二

ページ範囲:P.147 - P.151

 純型肺動脈狹窄症と呼ばれるものは,先天性心臓奇型の一種であつて,肺動脈弁に狹窄がありFallot氏四徴とは異つて心室中隔欠損を伴わぬものである.但し多くの場合心房中隔欠損を伴う.斯る心臓奇型は外国には多数報告せられて居るが,吾国では此処に報告する吾々の症例以外には報告をみない.
 本症は臨床症状に於てもFallot氏四徴とは大いに異なる.本症に対してはBrockが1949年始めて手術に成功,以来1949年15例,1951年40例等の報告をみた.その他Blalock, Kiefer, Potts, Müller, Longmire等欧米では多数の手術報告例がある.此処に報告する症例は吾が東京女子医大榊原外科に於て1951年6月及び1952年3月並びに1953年3月に手術し,治癒したものであり,本邦に於ては今日迄の処.之等の症例以外に手術の施行された例はない.尚お第1例及び第2例は1952年度第53回日本外科学会総会並びに雑誌上に発表した.從つて第3例を主として記することにする.

Nitrominが著効を示した石灰化粘液嚢炎の1例

著者: 黑木健夫 ,   木內直

ページ範囲:P.151 - P.153

 いわゆる五十肩における石灰像は1908年Stiedaが始めて記載したものであるが,本症はそれほど稀なものでなく,多数の報告がなされ,三木教授によれば,いわゆる五十肩400例のうち26例,すなわち6.5%に腱および粘液嚢の石灰化を認めたとのことである.
 筆者のうちの一人黒木は,昭和26年8月,いわゆる五十肩の症状とは大いに趣きをことにした症状をもつて急性に発病し,手術的に石灰化物質を剔出して短時日内に症状を消褪せしめた肩峰下石灰化粘液嚢炎の1例を深膝下粘液嚢炎の稀有なる1例と共に報告した(整形外科,Vo12, No.3)

足関節嚢より発生した巨大細胞腫の1例

著者: 堧水尾泰馬 ,   波多野元之

ページ範囲:P.153 - P.154

 良性巨大細胞腫は骨より発生する場合が多い.腱,腱鞘或は関節嚢より発生する場合は欧米の報告には比較的多く稀有なるものとは言い難いが,我国での報告は寥々たるものであつて,今迄の処11例である.我々は最近左足関節嚢より発生した良性巨大細胞腫の1例を経験したので報告する.

甚だ速かに治癒せしめ得た足穿孔症の1治験例

著者: 槌谷薰

ページ範囲:P.155 - P.156

 足穿孔症は1852年Nélatonが初めて"Maladiesinguliere des os du pied"として報告したもので,その成因に就ては機械的病因説,血管障碍説或は神経障碍説等があり治療法も未だ確立していない.
 最近私は坐骨神経幹切断に基ずく足穿孔症に対し局所の圧迫を除去することに依り甚だ速かに治癒せしめ得たので之を報告する.

興味ある経過をとりし大腿骨巨態細胞腫の1例

著者: 岡田淸

ページ範囲:P.157 - P.159

 或る一つの腫瘍を手術した場合,例えそれが良性のものであつても其の再発,転移,又は惡性変化に関して吾人は,非常なる関心を持つものである.その一つに骨に発生する良性巨態細胞腫がある.何故ならば本疾患は1818年Cooperの報告以来Lebert, Nelaton, Copeland,Bloodgood等幾多先人により臨床的,組織学的に検討論議されて来たが,未だ其の再発,転移及び惡性変化に関しては確たる結論は得られていない現状である.而して又斯の如き四肢の疾患の場合其の機能的治癒と言う事は非常に興味ある問題である.私は最近術後14年を経過せる大腿骨巨態細胞腫の1例に就いて其の治癒状況を精査し,いさゝか興味ある所見を得たので報告する.

脊髄腫瘍を思わせた脊椎カリエス急性麻痺発現の1例

著者: 島田泰男

ページ範囲:P.159 - P.161

 脊髄圧迫麻痺に関しては外科的方面に属するもののみでも5,6には分類されるが,脊髄腫瘍にしろ,脊椎カリエスにしろ,大抵は,腫瘍の増大,カリエス進行,等に從つて徐々に麻痺症状が現らわれて来るものである.併し脊髄腫瘍の中,硬膜内髄外に発生する腫瘍はElsbergによれば,初期,即ち初発症状から神経痛様疼痛乃至脱力感ありて急激に麻痺状態へ進行するといわれている.
 私は最近高齢者に於て,両下肢の弛緩性麻痺を急激に呈し来た一例を経験し,手術により脊椎カリエスの硬膜外膿瘍並びに同部位の黄靱帯肥厚による圧迫麻痺と判明し,術後に術前所見を反省検討し,脊髄腫瘍ではなくて,脊椎カリエスに依るものと診断され得べき例であつた事を痛感したので報告する.

睾丸複雜性皮様嚢腫の1例

著者: 高須純也 ,   眞鍋行雄 ,   大竹信三郞

ページ範囲:P.163 - P.165

 睾丸腫瘍は稀な疾患で.結締織性腫瘍,上皮性腫瘍,混合腫瘍に分類され,混合腫瘍即ち畸型腫には我が國に於ては72例報告されている,其の中單に皮様嚢腫と云われているものは17例であり,三胚葉よりなる複雜性皮様嚢腫は現在迄5例報告されているに過ざない,私等は最近この種複雜性皮様嚢腫の1例を経験したので,此処に報告する次第である.

最近の外國外科

出血性胃炎に於ける胃切除,他

著者: W. Förster

ページ範囲:P.166 - P.166

 Zbl. f. Chirur. 1953. Nr. 20.
 著者は始に,個々の胃炎の型について述べ次に,胃出血を来す場合と,その手術適応について述べている.
 重篤で死に到る程の胃出血があり,而もその出血源を発見し得ないものを特発性実質性胃出血として報告されている.Konjetznyによると此の疾患に於ては,粘膜の炎症性変化が見られると云う.肉眼的にも顕鏡的にも原因の分らない出血は,恐らく神経性影響による毛細管性大量出血と考えられる.胃十二指揚潰瘍のある事が分つている時には,胃出血の診断は明瞭であり,此の場合は一般に手術をする.Finstererは胃出血中,潰瘍90%,胃癌1.3%,肝硬変症の欝血性出血4.7%,胃炎によるもの4%,と報告している.

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集談会

ページ範囲:P.167 - P.167

 第524回外科東京集談会 20.1.16.
 1)稀有なる腎脂肪腫の1例
     日赤中央病院太中外科 春日英昭・他
 32歳女子,左側腹部腫瘤と軽度の疼痛を主訴とし腎孟像稍々と縮小.経腹膜的に剔出.小児頭大(1412g).腎内部脂肪組織より発生せる脂肪母細胞腫であつた.本邦報告例は2例書過ぎない.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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