icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科9巻8号

1954年08月発行

雑誌目次

綜説

脊髄麻痺法時の麻痺波及に関する臨床実驗的研究

著者: 庄司希光 ,   庄子文雄 ,   佐藤沢也 ,   奥野保 ,   小関誠之助 ,   常世克己 ,   高橋文治 ,   高垣彥一

ページ範囲:P.483 - P.488

 脊髄麻痺法の麻痺波及に影響する内外諸因子の問題に関しては,従来より多くの臨床成績が報告されているが,尚不明の点が少くない.私達は高比重化麻痺液ペルカミンS使用の症例に於て,脊椎管内における薬液の移動拡散状況に関連して,薬液中ペルカミンの吸着消失の状況,脊髄液圧変動の薬液移動に及ぼす影響並びに個体の脊柱彎曲度等の関係を吟味し,外的因子としては,注入速度,部位,台傾斜等の技術上の諸点を検討し,更に完全及び不全痛覚麻痺帯と関連して痛覚及び自律神経麻痺帯の吟味を刺針と発汗試験を以て検討し,併せて麻痺波及に伴う腹壁及び膝蓋腱反射の消失状況と筋電図学的所見とを綜合して,脊麻時の麻痺波及について2,3の考察を行つた.

蝮咬症における血中溶在性SH基の変動とSH剤の効果について

著者: 片山洋平

ページ範囲:P.489 - P.492

はしがき
 本誌第7巻第7号に,蝮咬症に対する「ハイポ」動注療法の効果について発表以来蝮咬症に関して,更に研究を続け,ハイポ動注の有効性は,蝮蛇毒が生体の血中SH基に与える影響を防止することにあるではなかろうかと考え,これを実験的に追求すると共に其他のSH基の有効性についての比較検討を行つた.
 尚今迄に取扱つた蝮咬症の臨床例について治療方法別の治療日数を比較すれば,第1表の如くである.

噴門癌の隣接臓器に対する浸潤程度のX線学的判定について

著者: 石川義信 ,   又重常雄

ページ範囲:P.493 - P.499

 噴門癌で手術の難易及び,適不適を決定する重要因子は周辺に対する浸潤の程度であり,噴門外への浸潤の無いものは巨大な腫瘍ても容易に剔出可能であるのに反して,たとえ原病巣が少しでも噴門周辺に転位浸潤の高度のものは非常な困難を認め或いは手術不能となる.即ち肝,脾門部,膵,横行結腸,横隔膜裂口部及び後腹膜への浸潤が問題となり,特に後腹膜への転位,浸潤の程度が,手術の難易,適不適を決定すること大である.
 噴門癌の手術適応及び噴門部周辺の状態をX線診断に依り判定せんとする試みはSherman1)Pack2)James3)Sweet4)大辻5)其の他数多くの人々に依つてなされているが,大低の人々は腫瘍に依る陰影欠損位置及び其の広がり方から,想像するだけであり,James3)のみが後腹膜の淋巴腺に関して述べている.然し彼も腹腔動脈根部の淋巴腺の状態は把握できないとしている.

ノボカイン利用の2,3について

著者: 神谷喜作 ,   加川尋香 ,   伊島靖昌

ページ範囲:P.501 - P.502

 専ら局所麻痺剤としてのみ使用され,又それ以外の薬理作用は殆んど無視されていたノボカイン,殊に静脈内に入ることは極度に危険視されていたノボカインが,静脈内注射により鎮痛その他の目的に使用されるに至つたことは誠に興味深いことである.私達はこのノボカインを輪血副作用防止のためと,もう一つは動脈撮影をする時の血管痛の軽減,又同じ意味において骨髄内注入時の痛みを軽くする為とに使用して次の様な成績をえたので報告する.

急性虫垂炎における尿所見及び細菌学的1考察

著者: 小林和人 ,   加納覚 ,   高橋貞昭

ページ範囲:P.503 - P.504

 吾々は最近数年間に手術した急性虫垂炎患者,約375例の尿について簡単な検査を行い,其の結果,或る程度の成績を得たので,茲に報告する次第である.

余等の経驗した虫垂炎について

著者: 松尾権一 ,   中山靖佐

ページ範囲:P.505 - P.506

 我等は昨年5月より10月迄に前任地国立下関病院に於て経驗した虫垂炎患者50例について虫垂突起の内容,細菌,術前の白血球数,術前術後の血清蛋白及び血清皺模様について検査し,些か興味ある結果を得たので,こゝに報告し,諸賢の御批判を仰ぐ次第である.

側迷入甲状腺腫の文献的考察(自家経驗1例を加う)

著者: 矢野周 ,   奥出保

ページ範囲:P.507 - P.510

 側迷入甲状腺腫とは,所謂副甲状腺腫(Neben—kropf)の1分類名である.副甲状腺腫とはSch—ragerに依れば正常又は病理的な甲状腺の構造を有する組織塊が正規甲状腺より一定の間隔を保ち且つ之と何等の連絡なしに諸臓器組織間に占有するものゝ謂いである.而も甲状腺固有の内分泌機能が,之の迷入甲状腺のみに営まれ,正常の位置に正規の甲状腺を欠如することがあることより,早くから一部学者の間に,之の副なる形容を妥当ならずとして,迷入甲状腺(aberrant thyroid)の語が用いられている.
 後述の如く解剖学的又は病理解剖学的に発見される迷入甲状腺の数は決してすくなくない.しかしながら生体に於て迷入甲状腺が注目されるのは,それが病的の発育により一定の大いさに達して自覚的に又他覚的に識別可能となつた場合である.かような例の代表的なものが,所謂迷入甲状腺腫であるが,之の臨床上の頻度は決して多くない.最近我々は教室に於て之の1例を経験したので之を報告し且つ些かの考察を加えてみたいと思う.

股関節に於ける一過性滑液膜炎

著者: 笠井実人 ,   大橋良三 ,   粟屋梧老

ページ範囲:P.513 - P.516

 股関節に於ける一過性滑液膜炎は,ドイツではCoxitis simplex,Coxitis,fugax,ephemereCoxitis,Coxitis incertae causaeなどと呼ばれ,アメリカではtransltory coxitis,coxitls serosaor simplex,acute transient epiphysitisとも呼ばれている.本疾患は決して珍しいものではなく,吾々の外来に於ても昭和27,28の両年度に於て20例を経験した.然し之に関する記載は少く,神中整形外科学にも股関節結核の鑑別診断の項に僅か数行述べてあるに過ぎない.偶々J.of theA.M.A.(146.9.1951)にEdwardsが本疾患について詳細な報告をしているのを読み,興味をもつて症例を観察して来たが,丁度20例に達したのでこゝにまとめて報告する.

症例

急性汎発性腹膜炎に合併せる破傷風の1治驗例について

著者: 鈴木武松 ,   山口滋嗣

ページ範囲:P.517 - P.519

 滅菌操作の発達と化学療法の進歩により開腹術後に見られる破傷風は,極めて稀なものとなつた.本邦文献には岡野氏1),中田氏2),城戸氏3),等の虫垂切除後に発生した例,弘中氏4)の胃切除後に伴つた例,山田氏5)の帝王切開後に発生した症例等の記載が見出される.
 私達は最近小児の汎発性腹膜炎患者に破傷風が合併した症例を経験し,種々の処置の結果,幸いにも治癒せしめ得たので以下に症例を報告し,簡単な考察を施してみたいと思う.

先天性肩甲骨高位症を伴つた先天性肩関節脱臼の1例

著者: 高橋喜美雄

ページ範囲:P.521 - P.522

 先天性肩甲骨高位症は1863年Eulenburg氏にょり初めて報告され,1891年Sprengel氏により詳しく記載されたので一般にSprengel氏変形として知られて居り外国にはその報告例も少くないが,我が国に於いては1908年田代氏が初めて報告して以来22例が報告されて居る.しかし,1839年R.W. Smith氏により初めて記載された先天性肩関節脱臼は外国には先天性肩甲骨高位症同様多くの報告があるが,我が国に於いては,1934年小菅氏,1949年田村氏,1950年中川氏の各々1例づつ合計3例が現在まで報告されて居るに過ぎず極く稀な疾患とされて居る.
 私は先天性肩甲骨高位症,潜在性脊椎披裂,鎖骨形態異常等を伴つた先天性肩関節脱臼の1例を経験したので報告する.

嚢腫状汎発性気管支拡張症の1例

著者: 星野日出男 ,   太田誠

ページ範囲:P.523 - P.525

 気管枝拡張症は最近大いに注目されている疾患の1つである.限局性の拡張症は種々の疾患の合併症及び後貽症としてごく普通に見られるものであるが,1側の全肺葉に亘る汎発性の気管枝拡張症は比較的稀であり種々の点について興味がある.我々は最近そのような1例を経験したので報告し,これについて若干の考察を行つて見たいと思う.

肋骨に発生せる巨細胞腫の1例

著者: 角南敏孫 ,   井上正幸

ページ範囲:P.525 - P.527

 巨細胞腫は古来幾多の学者によつて種々の名称の下に報告されているが,従来考えられていた巨細胞肉腫または骨髄腫様肉腫等の悪性のものではなくむしろ良性で.1922年Stewartによつて破骨細胞性の破骨細胞腫と報告され,1940年Jaffeは巨細胞腫と名称づけた.局所的には限局性で周囲に対してやゝ破壊侵蝕性ではあるが元来臨床的には良性の経過をとる腫瘍であるが,時に悪性変化をする場合もある,我々は教室に於て54歳男子の肋骨に発生し,手術後肋膜腔及び肺臓に転移した腫瘍で,病理組織学的に蜂窩状肉腫に酷似した組織像を有する破骨細胞性の巨細胞腫の1例を経験したので茲に報告する.

外傷性限局性癒着性脊髄膜炎の4症例

著者: 菊地保成 ,   高橋哲男 ,   武山勝也 ,   野崎成典 ,   奥茂信行

ページ範囲:P.527 - P.531

 限局性脊髄膜炎とは,周知のごとく脊髄膜が炎症または外傷の結果,二次的に局所に種々の癒着,瘢痕,肥厚等を生ずるもので,その症状が脊髄腫瘍あるいは横断性脊髄炎と酷似し,以前はかなり稀れな疾患として取扱われ,多くは脊髄腫瘍の診断のものに手術されるか横断性脊髄炎として治療不能とみなされることが少くなかつた.しかし近年Myelographieの発達により本疾患の診断が比較的容易となり,また本邦において昭和11年前田,岩原教授の脊髄外科の宿題報告により一殻に注目され,決して稀有なものでなく,日常われわれがしばしば経験する重要な疾患であることが認識されてきた.
 最近われわれは外傷をうけて一定期間無症状に経過し,漸次限局性脊髄膜炎の症状の著明になつてきた症例に遭遇し,これを観血的に治療し顕著な軽快をみた4症例を経験したので報告する.

胃癌手術時に偶々発見し共に切除し得た多発性空腸憩室の1例

著者: 栗田彰三 ,   森川一秀 ,   飯岡薰

ページ範囲:P.533 - P.535

 小腸憩室はメッケル氏憩室及び十二指腸憩窒を除けば稀なものである.このような非メッケル氏小腸憩室は欧米ではSir Astley Coopeが1884年に多発性空腸憩室を報告したのが始めである.わが国では岩永が1919年開腹手術中に偶々多発性空腸憩室を発見したのが最初で,それ以来現在に至るまで非メッケル氏小腸憩室を手術によつて発見した例数はいまだ21例に過ぎない.われわれは最近胃癌手術時に空腸に5コの多発性憩室を認めこれを切除し得た1例を経験したのでこゝに報告しようと思う.

淋巴腺腫を有する乳兒回盲部腸重積症の1例

著者: 南弘鱗 ,   安川恒信 ,   古川シマ ,   得景與

ページ範囲:P.537 - P.539

 腸重積症は乳幼児腸閉塞症の大部分を占めるものであり予後の点より非観血的療法が観血療法に比較して遙かに優れていることは諸家の等しく認めるところである.峯村2)はナルコポン・アトロピン注射後高圧浣腸を行つて21例中死亡1例を報告し,須藤3).は軽い全身麻酔下に肛門カテーテルによる空気注入法によつて100例以上の治癒例を得たという(死亡率3%以下).又速水4)は1年間に6例のレントゲン透視下バリウム注腸による徒手整復の全例を功成報告し,手術的に整復可能なるものは本法によつても可能であろうと言つている.我々も速水と同様の方法によつて最近2年間に10例(中再発4回1例,全例乳幼児)の治療例を有し本法が種々の点に於て優れていることを認め,今迄何等この方法に伴う副作用を経験していない.然し全例を非観血的に行うべきでもなく又非観血的に整復不可能なる例もある筈であり,かゝる例には時機を失せず開腹術を行うべきであろう.我々は非観血的に再度整復を試みたが成功しなかつた例を廻盲部切除により救命し得その開腹所見に興味ある1例を経験したので報告する.

出血性十二指腸潰瘍の1手術治驗例

著者: 坂井皐造

ページ範囲:P.539 - P.540

 十二指腸潰瘍よりの多量出血を止血せしめることは非常に困難な問題である.
 予は十二指腸潰瘍患者にビルロートI中山変法による胃切除をなし術後4日目に十二指腸より多量の吐血をなし危篤態状となつたが再開腹し胃十二指腸動脈の結紮により救助し得たのでこゝに詳細を報告する.

電気衝撃療法による上腕骨小結節裂離骨折の1例

著者: 平野広志 ,   七戶幸夫

ページ範囲:P.541 - P.543

 上腕骨小結節単独骨折は,甚だ稀な骨折に属する.最近我々は電気衝撃療法に基因する上腕骨小結節裂離骨折の1例に遭遇し,観血的整復によつて全治せしめ得たのでこゝに報告し,併せてその発生機序について考察を加えたい.

最近の外國外科

手術時靜脈血圧の測定に関する研究,他

著者:

ページ範囲:P.544 - P.545

 (Surg. Gyn. & Obst. 95:310-314, 1953)
 著者等は手術時ショックの発見に術中直接法による静脈血圧を測定し併せて術中の出血量(重量法)及び術前,術中の循環血液量(Evans blue法)を計測して術中の循環系態度,必要な輸血量のよきIndicatorたらしめた.
 実際出血に際し静脈血圧は動脈血圧の下降及び脈搏数の増加に先行して下降し適切な輸血が行われぬ限り正常閾に復しない.即ち静脈血圧の下降が顕著なときは動脈血圧及び脈搏が未だ何等のショック状態を現わしていない時期に於ても大量の輸血が必要である.又動脈血圧は輸血量が出血量に満たないうちに正常に復して了うが静脈血圧はこれを充分に補充し盡す迄は正常に復しない.要するに静脈血圧の測定は動脈血圧及び脈搏数の変化よりもショックの程度と出血量の評値に関しより鋭敏であり,ショック発見のよき指針である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?