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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科1巻3号

1947年08月発行

雑誌目次

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子宮腺上皮の細胞學的研究

著者: 川中子げん

ページ範囲:P.167 - P.190

緒言
 1.子宮内膜に關する從來の研究對象と其缺陷
 成熟期婦人の子宮内膜の研究は,1908年に於けるHitschmann及Adlerの周期性變化の發見を劃期として夥多學者の追試によつて長足の發展を招來したが,1912年に於けるR.Schröderの再檢討を以つて一旦は終止符を與へられた觀あつて其後大なる改訂は加へられず今日に及んだ。而して是等研究を通覽するに其殆んど全部は内膜組成の集合體(Komplex)を研究の對象としたものである。即ち内膜の最重要な構成分子である子宮腺に就ては細胞集團全體としての粗大な形態と機能とを總括的に觀察したのみで,腺細胞各個の微細構造を觀察した内外の業績は極めて少數である。換言すれば子宮内膜の形態及び機能に關した研究には,尚ほ缺陷があつて等閑に附し得ない一要素を殘したものである。從つて細胞學的研究によつて,既に完璧であると信ぜられるSchröder説に新知見を加へるは勿論,或は其一部に改訂を必要とすること無しとしない。私が本研究を企圖した所以も亦た此點にあるのである。

子宮癌患者の電氣心働圖檢査に於ける部分誘導法に就いて

著者: 藤森速水 ,   三木利雄

ページ範囲:P.191 - P.196

第1章 緒言
 電氣心働圖檢査法は内科的領域許りでなく,産婦人科的疾患の診斷にも必要缺く事の出來ない事は更めて紹介する迄もない。殊に我々が子宮癌根治手術の施行に際し,局所の癌進行程度の外に,循環器機能程度の上からその手術可能性を豫測せんとする爲には,電氣心働圖檢査法が絶對不可缺の1方法である事は周知の所である。
 然し乍ら臨牀的に行はれて居る在來の肢誘導法は心臟筋肉内に起る働作電流を四肢に於いて把え,それに依つて得られた圖形に據り心臟機能を判斷する方法である。從つて,この方法は心臟機能を判斷する爲には直接的方法とは云ひ難く,更に又,この時の導子に傳導する電流波は心臟の左右から發する電位差の電波の干渉の結果の像を示すものに過ぎない。それ故,心臟の左右何れに障碍が存するかを窺ふ爲には,在來の肢誘導法を以てしては全く不可能である。

子宮癌手術前後に於ける電氣心働圖に就て

著者: 藤森速水 ,   吉田秀夫

ページ範囲:P.196 - P.197

 子宮癌手術患者の循環器機能檢査法として電氣心働圖が利用されたのは既に20數年前であるが其の手術後の經過と電氣心働圖との關係を時日を追ひ檢索せしものは文獻には見出されない。然し藤森は昭和16年7月號の「産科と婦人科」誌上に既に子宮癌手術施行後に於ては心臟機能は健常に復す傾向ある事を發表したのである。故に余等は最近子宮癌手術患者の多數例に渉り在來の肢誘導法電氣心働圖檢査の他にGroedelの提案した部分誘導法をも併用し,以て藤森の見解を再び確認せんと試みたる所興味ある成績を得た故茲にその内容を發表する次第である。
 余等の檢索し得た結果の要點のみを表にて示せば下表の如くである。

新産兒性器出血に就て

著者: 佐田勝淸

ページ範囲:P.197 - P.199

 新産兒には極めて稀に性器出血を惹起し醫家を訪れる場合がある。新産兒性器出血は出血性外陰疾患として1865年Birchenalにより報告されBayer (1902年),Juda (1913年),Mayer (1921年)等は先天月經或は早期月經として報告してゐるが,月經の樣に一定間隔を以て反復しないこと,卵巣機能と無關係なこと,又早期月經の樣な早熟状態を呈しないことが特徴である。この新産兒の性器出血の從來の報告は體重3000瓦以上の成熟胎兒であり魔乳分泌を伴ふものが多かつたが最近私は體重1900瓦にして魔乳分泌を伴はない1例を經驗し先人諸家報告に追加する次第である。

雙角雙頸子宮重複腟一側閉鎖による偏側性子宮腟溜膿腫の一例

著者: 杉浦淸 ,   杉浦淸四郞

ページ範囲:P.199 - P.202

 (内容抄録) 17歳の處女。左下腹部腸骨窩より小骨盤腔を充たし左側腟壁に伸び腟腔を完全に壓閉したる小兒頭大の腫瘍,内診不能,腟壁より穿刺排膿約600cc爾後内診精査,經過觀察中,上記稀有なる1例たる事を診定す。其の後6年を經て患側左子宮角に妊娠し開腹術を行ひ同子宮角内容除去。同側卵管結紮を行ふ。

雙角雙頸子宮重複腟左側閉鎖による左側子宮腟溜膿腫の治癒後患側子宮角に妊娠せる一例

著者: 杉浦淸 ,   杉浦淸四郞

ページ範囲:P.203 - P.204

緒言
 同一婦人である。昭和16年6月3日前記疾患完全治癒退院後,何等異常なく健康體として昭和22年1月17日結婚,不思議にも直ちに患側子宮に妊娠し小院を再び訪づれた者である。

妊婦に發生せる兩側外陰部血腫の稀有なる一例

著者: 加々美孝 ,   邨瀨淸 ,   水野高平

ページ範囲:P.204 - P.207

1.緒言
 外陰部血腫は妊娠分娩或は外傷等と關係あるものとして本邦に於ても數多報告せられたるも,其の大部分は分娩及産褥時のものにして,妊娠中に發生せる外陰部血腫は外國に於て10數例,本邦に於ては昭和12年12月名古屋醫科大學山原,伊藤兩先輩が,「臨牀産科婦人科」に綜説的に報告發表せられた唯1例を見るのみなり。余等は最近當教室に於て36歳の初妊婦に發生せる兩側外陰部血腫の1例に遭遇せるを以て追加報告せんとす。

性周期の法則—欧米人との差

著者: 堂元貢

ページ範囲:P.207 - P.211

 日本人の月經周期は未だ明にされていないのであつて,生理學及び婦人科學の成書にも歐米人と同じく28日周期とされているのであるが,果して兩者共同じ周期で繰返されているのであろうか。以下性周期の法則によつてこの點を明にして見ることとする。
 從來周期の代表値は統計の平均値を以つて表わされて來た。しかしこの平均値はその統計の資料の如何によつて變化する。即ち初潮期,閉經期,産後及び疾患時等の移動のはげしい時期は別としても,成熟期婦人の正常の場合と云ふ定義かむづかしい以上資料となる婦人の健康状態及び數量によつて平均値は變化するから,平均値丈では代表値とする事に不安を覺えるのである。從つて平均値が切角31日或は30日となつても是が日本人の基本周期であると主張する事が出來なかつたのである。これは又歐米人の周期が既に28日とされてゐるから,これに拘泥するためでもあつて,日本人も又恐らく歐米人も日本人の平均値は資料が惡いために生じたものだろう位に考えられて來た樣である。

子宮脱に對するノイゲバウエル、レフート氏腟中央縫合術の經驗

著者: 富井眞文

ページ範囲:P.211 - P.212

 今次大戰の中頃より食糧不足の爲,國民一般の榮養が著しく低下し,種々の疾患が發生するに至つたが,婦人科領域に於て注目すべきものは,戰爭無月經及び子宮脱垂症である。元來子宮脱垂症は體質異常と密接な關係あるものであるが,最近に於ける脱出症の増加は,この體質異常に加ふるに,榮養低下に伴ふ,骨盤底筋肉,圓靱帶等子宮支持裝置の萎縮弛緩,脂肪組織の消失,腸内ガス發生による腹壓の亢進等の素因が加り,更に婦人が平素慣れない,激しい腹壓を加へる樣な重勞働を餘儀なくされた結果と思はれる。
 子宮脱に對する手術々式は極めて多種多樣であるが,ハルバン,又はシヤウター氏の方法は將來妊娠の可能ある若年婦人,子宮の著しく萎縮した高年者には不適當であり,子宮の腹壁固定術ドレリー氏手術は榮養の著しく低下し,腹壁の弛緩膨滿せる者には不適當で,イレウスを起す危險もあり,且前2者は著しく不自然な方法である。最も合理的な方法は哆開せる生殖裂孔を縮小すると同時に,アレキサンダー氏手術により圓靱帯を短縮する方法で,子宮腟部延長を伴ふ場合は,これを切斷しシュツルムドルフの縫合を行ふ。余等は大部分の症例に本法を行ひ,手術後妊娠分娩せる者もあるが,1例も再發を認めない。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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