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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科10巻12号

1956年12月発行

雑誌目次

綜説

子宮頸癌放射線療法の尿路に及ぼす影響

著者: 宿輪亮三

ページ範囲:P.801 - P.807

I.はしがき
 子宮頸癌治療に於いて放射線療法が卓越した効果をもつと共に時として周囲の健常組織殊に尿路に破壊的影響を及ぼす事はすでに早くより知られている(Haendly,1),Schugt2)(1923),Zeiss3),Dean4)(1927),Ottow5)(1930),Evertee6)(1934))。然し近時放射線療法の技術改善の結果,この様な放射線療法による尿路障碍は大分減少して来て居り放射後発隼する尿路障碍は寧ろ癌の再発浸潤が原因であると云われている(Diehl, Hundley7)(1948),Spence, Hare8)(1949),Aldridge9)(1950),Linde10)(1950),Ward11)(1952))。
 今日放射線療法後のひどい尿路障碍が余り見られなくなつたのは事実である。然しながら生体の健全な細胞と難も癌細胞同様放射線の影響を受けるのは云うまでもない事であり,唯その感受性に差があるのみにすぎない以上放射線療法後の尿路障碍は絶無とは云えず,なお検討すべき幾多の問題がある様に思う。

原著

機能性子宮出血の子宮内膜像について

著者: 斉藤幹 ,   八尾十三 ,   谷内泰寛 ,   鈴木福子

ページ範囲:P.809 - P.814

 子宮及び附属器に何等異常を認めないのに係わらず不正子宮出血又は過多月経を見る場合,これを機能性子宮出血と定義している。われわれは内診上,出血原因を子宮並びに附属器に見出しえない時にかく診断し,その内膜像について検索を行つた。
 元来,機能性子宮出血は内分泌異常に起因するもののみに命名されたものであるが,学者によつてはかくの如き出血はfunctional uterine blee-dingではなくてdysfunctional uterine bleedingとすべきてあるとの意見もある(H.Fedrikson)。然し厳密に云うならば内分泌異常に基ずく出血と診断すること自体が必ずしも容易なことではなく,又機能性出血と云う診断名を日常臨床上に使用する場合には,広義に解釈する方が甚だ好都合である。このことは原因不明の無月経を臨床上,機能性無月経と云うのと軌を一にする。

子宮卵管造影法の後障碍に就いて

著者: 林基之 ,   江口貞雄 ,   百瀬和夫 ,   福水正一

ページ範囲:P.815 - P.819

はしがき
 子宮卵管造影法(以下GSGと略)は,卵管の通過機能検査法としては,重要なものであり,不妊症の診断及び治療に際して,日常最も多く用いられるものであるが,必ずしも安全無害な方法とは去い難く,幾多の障碍,副作用が報告されているのである。吾が教室でも昭和29年7月より,昭和31年6月迄の2年間に総数959例のHSGを行つたが,11例の後障碍例があつたので,之等を纒めて報告し,考按して見ようと思う。

両性混合Hormone depotの臨床的検討

著者: 八尾十三 ,   征矢嘉行 ,   本阿彌省三

ページ範囲:P.819 - P.823

 従来更年期障碍に対しては,Estrogen療法が行われ,良く反応することが知られていたが,子宮内膜の増殖に伴う子宮出血等のいくつかの好ましくない副作用がみられていた。処が近時Geist等1)(1941)はEstrogen-Androgen therapieが,Es-trogen therapieに優るということを提唱して以来,Greenblatt2),Glass3),Newman4)等は追試して混合剤の優秀性を確認し,両性混合Hormone製剤は次第に広く用いられるに到つた。然しそのDepot剤については未だ日浅く,Frank5)(1954),Boshann&Geese6)(1954)等の報告,及び本邦では貴家7)(1955),織田8)(1955),伊藤9)(1956)等の報告があるにすぎず,未だその検討は充分に行われていない。

クロロマイセチン・パウダーによる帯下の治療経験

著者: 長峰敏治 ,   川中子春江

ページ範囲:P.823 - P.828

緒言
 近来抗生物質の相次ぐ発見に伴い,それらの全身的或いは局所的応用により帯下の治療法に改革を来した。ペニシリン・オキシテトラサイクリン・クロールテトラサイクリン等の帯下に対する局所療法についての報告は枚挙にいとまない程であるが,クロラムフェニコールについてはGreenblatt(1951)・長尾(1953)・当教室(1955)・赤須他(1956)等の報告をみるに過ぎない。
 当教室においては先に高田・吉元・山野井・高山等(1955)がクロロマイセチン腟坐薬(250mg含有)使用による腟内容性状並びに細菌叢の変動について発表したが,今回吾々はタルクを基剤としクロロマイセチンをそれぞれ20%・10%・5%・2%・1%の各濃度に含有するクロロマイセチン・パウダー(カンジダの発生を防止する目的で,1g中にMethlparaben 80mg及びPropylparaben20mgを含む)を帯下患者に使用し,腟内容性状及び細菌叢に及ぼす影響を観察する機会を得たのでここにその成績を発表する。

都市並びに農村女子中高校生の初潮に関する観察

著者: 松本清一 ,   福島省吾 ,   若松歌子 ,   瀬川煕 ,   宮部黎子

ページ範囲:P.828 - P.834

I.緒言
 女学生に就いての初潮年齢の調査や初潮に関する種々の観察は我国でも既に多数報告されていて今更新しく述べるまでもないが,ただ戦後我国に起りつつある急激な社会的変動は色々な意味で思春期婦人の性機能発達に重大な影響を与えているように考えられる。例えば初潮年齢に就いて見ても安田44),橋口他3),松本16)等によれば戦争末期から戦後にかけてそれが遅発する傾向が認められ,中村23),石沢他9),原2),山田他40),斎藤29),延島26)等,戦後に行われた調査では戦前に比し遅れていると報告するものが多い。一方また橋口3),斎藤29),中西24),高橋他33),松永19)等は最近では再び次第に早まる傾向があると述べている。
 また初潮は一般に文化程度並びに生活水準の高い方が早発するとされているが,我国で市部と郡部とを比較した報告を見ると,小川・八田28),内藤22),栗栖14)等の観察では市部に比し郡部では明らかに遅いとされているのに対し,石坂8),山田41),石沢9),斎藤他29)等両者の間に差異を認めないという報告も多い。

症例研究

子宮体癌及び卵巣癌手術後の腹壁移植転移例

著者: 金澤太郎 ,   山田貞一

ページ範囲:P.835 - P.837

 子宮癌手術後の腹壁手術創移植再発例は稀なものとされ,又卵巣悪性腫瘍手術後の腹壁手術創移植転移例の報告は更に少ない様である。吾々は最近相次いでその各1症例を経験したので報告する。

我が教室最近10年間に於ける妊娠子宮破裂例について

著者: 中山徹也 ,   佐藤弘 ,   池川重徳

ページ範囲:P.837 - P.840

緒言
 子癇,前置胎盤等と共に産科領域に於ける最も危険な合併症の1つと老えられている妊娠子宮破裂の1例を経験したので,之に就いて報告し,併せて最近10年間の我が教室に於ける同症例4例に就き略記して考察を試みたいと思う。

興味ある経過をとつた尿管直腸瘻の2症例

著者: 佐藤友義 ,   山屋浩一

ページ範囲:P.840 - P.843

緒言
 子宮癌根治手術後の尿管瘻については多くの報告があり,その発生機転,治療方法,予防対策などにつきいろいろ論議,検討され,化学療法の進歩による術後骨盤腔炎の減少,手術手技の改良などによりその発生頻度はいちじるしく低下してきたが,まだ絶滅を期しえない。われおれは最近非常に複雑な経過をとつた興味ある術後尿管直腸瘻の症例を経験したので,ここに報告し諸賢の御参考に供したいと思う。

胎児に発生せるRitter氏剥脱性皮膚炎の1例

著者: 宮尾敦 ,   野村長生 ,   鈴村敏子

ページ範囲:P.843 - P.846

 1878年Ritter von Rittershainが始めてDermatitis exforiativa neonatorumとして発表以来独立した皮膚疾患として認められ,欧米諸国ではRitterの297例を始めとして数百に達し,本邦では今日まで170数例の報告を見ているが,本疾患はその病名の示す如く生後第2週の初めに発病することが最も多い。本症が子宮内の胎児に発生する事は極めて稀であつて,欧米においてDugésが1821年報告したのを最初として,その後Tachauが世界各地の報告29例を集録している.本邦においては昭和26年土肥.平山両氏に依る唯1例の報告を見るのみである。
 我々は此の極めて稀な1例を経験したので報告する。

4才10ヵ月の幼女に発生せる顆粒膜細胞腫例に就いて

著者: 小濱正美

ページ範囲:P.846 - P.849

緒言
 顆粒膜細胞腫は卵巣充実性腫瘍の中でも比較的稀なものとされ特に乳幼児には少ないとされて居るが,私は最近満4歳10ヵ月の童女に之を発見し,その著明な女性化徴候の消長を術前,術後観察した結果著明な変化を見,且つ詳細な組織診により顆粒膜細胞腫と確め得た貴重な1例を経験したので茲に報告する。

速報

腰椎麻酔後の頭痛に対する塩酸プロカイン療法に就いて

著者: 矢花勲 ,   篠原拓男

ページ範囲:P.851 - P.853

Ⅰ緒言
 従来から腰椎麻酔による手術が行われ,其の副作用及び後遺症に就いて種々と予防及び治療が行われて来ているが,現在も又其の治療に難渋しているのである。この中で最も頻発し,患者及び医師共になやまされるものは頭痛症候群である。余等もこの頭痛を比較的多く経験したのであるが,塩酸プロカイン加ブドウトウ液静注法により見るべき効果をあげたので,ここに報告する次第である。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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