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文献概要
特集 産婦人科及びその境界領域の循環器系疾患
子宮筋腫と心臓
著者: 秦清三郎1 相馬廣明1
所属機関: 1東京医科大学産婦人科教室
ページ範囲:P.959 - P.965
文献購入ページに移動1.はしがき
子宮筋腫患者の心臓に特別な変化があるのではないかという疑問は古くから云われて来ている。殊に筋腫患者が術後突然死をすることが往々にしてあつたことから,特別な関係を推定するようになつた1885年Hofmeier氏の同様の死亡例の発表以来,筋腫と心臓との特殊関係は種々論ぜられ,所謂"筋腫心臓(Myomherz)と名付けられた心臓症状を巡つて,20世紀の初頭から臨床的,病理学的,或いは内分泌学的な立場から検討されて来た。その存否の論議は仲々興味あるものである。事実私共は筋腫患者の訴えの一つとして,屡々心悸亢進や頻脈,或いは呼吸促迫等の自覚症状を聞くことがある。これらの症状がそのまま心障害とは結びつかなくとも,類似組織にある両者の関係が想像されることは不思議ではない。然し乍ら現在の婦人科医の考えはこの筋腫心臓という特別な変化を否定しており,ただ貧血や全身衰弱等による二次的因子の影響としてこれを扱つている。然しこの問題は必ずしもこれだけで解決した訳ではなく,全く両者が無関係であるとして一笑に附するにはまだ疑問が残つているようにも思える。この際今一度筋腫と心臓との論議の歴史をふり返つて臨床的な再検討を試みることもあながち無駄ではないと考える。
子宮筋腫患者の心臓に特別な変化があるのではないかという疑問は古くから云われて来ている。殊に筋腫患者が術後突然死をすることが往々にしてあつたことから,特別な関係を推定するようになつた1885年Hofmeier氏の同様の死亡例の発表以来,筋腫と心臓との特殊関係は種々論ぜられ,所謂"筋腫心臓(Myomherz)と名付けられた心臓症状を巡つて,20世紀の初頭から臨床的,病理学的,或いは内分泌学的な立場から検討されて来た。その存否の論議は仲々興味あるものである。事実私共は筋腫患者の訴えの一つとして,屡々心悸亢進や頻脈,或いは呼吸促迫等の自覚症状を聞くことがある。これらの症状がそのまま心障害とは結びつかなくとも,類似組織にある両者の関係が想像されることは不思議ではない。然し乍ら現在の婦人科医の考えはこの筋腫心臓という特別な変化を否定しており,ただ貧血や全身衰弱等による二次的因子の影響としてこれを扱つている。然しこの問題は必ずしもこれだけで解決した訳ではなく,全く両者が無関係であるとして一笑に附するにはまだ疑問が残つているようにも思える。この際今一度筋腫と心臓との論議の歴史をふり返つて臨床的な再検討を試みることもあながち無駄ではないと考える。
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