icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科10巻13号

1956年12月発行

特集 産婦人科及びその境界領域の循環器系疾患

妊娠中毒症と眼底血管

著者: 徳田久弥1

所属機関: 1東京大学

ページ範囲:P.974 - P.979

文献概要

 妊娠から出産という女性個有のcouseにおいて,色々な眼症状が現われることは,古くから知られている。例えば, 1)早期からみられる軽度の甲状腺機能昂進のための眼瞼の開大後退と,みかけ上の眼球前出。勿論一過性のものであつて,悪性ではない。 2)副腎のhyperfunctionによる眼瞼の色素沈着。 3)アドレナリンに敏感になつてくるので,血清点眼で散瞳が起る。90%陽性といわれる。 4) 眼圧の低下。血圧低下と女性ホルモンの関係によるもので,昔から妊娠中に緑内障(眼圧の昂進する疾患で,中年女性に多い)が起きないという統計的事実が知られている。 5)脳下垂体腫大による視交叉部圧迫所見。視野の両耳側半盲がその眼症状であるが,ひどい場合は視神経萎縮を起し視力低下を来す。この場合レントゲン写真で,トルコ鞍の拡大が明らかに見られ,子滴等を起し易いといわれている。 6)脳,腎など網膜細小動脈のangiospasmによる,妊娠中毒性眼底変化→視機能の低下。
 このような症状ないし変化は,妊娠に際して内分泌,新陳代謝及び循環機能の調整が変調を来すために生ずるものであるから,いわば準生理的なものと云い得る。従つて妊娠が順調な途を辿つて,出産が無事完了した時には跡かたなく消失するのが普通であるが,その変化が,ひとたび病的な域にふみこんだものは,もはや不可逆的であつて,永久的な障碍をのこし,その後の妊娠を再び危険なものにすることが多い。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら