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原著
2,3の薬剤による腟トリコモナスの治療経験
著者: 藤生太郎1 利重五郎1 中野義三1 尾崎悦夫1
所属機関: 1山口県立医科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.565 - P.571
文献購入ページに移動Donnéによつて1837年発見されたTricho-monas vaginalis(以下「ト」と略称する)の病原性に関しては,種々と議論されてきたが,大約次の三説にわけることが出来る。即ち第一は,Hoehne, Davis, Less, Liston等によるもので,完全なる腟炎病原体であるとの意見。第二は,R.Schröder, Sess, Moench等によるもので「ト」を単なる腟の共棲者,細菌帯下の利用者とのみ考えており且帯下の快方に向う時は腟中より消失するという考え方。第三は条件的に炎症の原因であるとの説である。然し1916年Hoehneによる広範なる研究によつて,その生態が明らかにされて以来最早今日「ト」の病原性に関し疑を抱いているものはいない。「ト」によつて腟炎を起すと帯下は一般に多量,淡黄緑色を呈し,膿汁様,泡沫状(これは「ト」に特有のものではなく共存するMicrococcūs gasogenesによるといわれている)となる。患者は帯下並びに外陰掻痒感に悩まされ他覚的には腟及び子宮腟部粘膜の充血をきたす。
帯下を検鏡すると,白血球の増加,腟上皮細胞の減少,デーデルライン桿菌の消滅,他種雑菌の混入等が見られ,腟清浄度も低下し三,四度のものが多い。
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