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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科10巻9号

1956年09月発行

雑誌目次

綜説

精液中の酵素に就いて

著者: 町田禾昌

ページ範囲:P.597 - P.600

 近時不妊症研究の進歩に伴い,主要な男子不妊因子として,精液の検討が行われた結果,Hy-aluronidaseの如き酵素が脚光を浴び,その受精に対する役割が明らかにされた。しかし精液中には猶其他種々な酵素が認められ,或ものはその精子の代謝との関係が論じられているが,大部分はその意義が十分明らかにされていない。此等の酵素について文献に表われた所を考察紹介する。

原著

妊娠月令より見たる羊水諸性状の消長に就いて—(第4報)妊娠月令より見たる羊水蛋白分屑の消長に就いて

著者: 新井賢治

ページ範囲:P.601 - P.608

緒論
 著者はすでに第1報1),第2報2)及び第3報3)に於いて,妊娠月令より見たる羊水諸性状の消長に就いてそれぞれ詳細に報告したが,それらのうち羊水の量,比重,総窒素濃度及び総蛋白濃度はいずれも妊娠初期より中期に亘つて漸増し,妊娠VIヵ月前後にて最大となり,その後は妊娠Xヵ月に亘つて漸減の傾向にあることを確認し,これらの傾向は胎盤の形成,完了,老化の時期的傾向に極めてよく一致することより著者は羊水のこれ等の性状は胎児側よりむしろ胎盤の性格に影響されることを知つたが,例外的に羊水のpH値は全妊娠期間に亘つて大差なく移行するのであるが,更に羊水残余窒素濃度については之れ又妊娠初期より妊娠Vヵ月まで漸増の傾向にあるも,Vヵ月以後はXヵ月に亘つて大差なく移行した。この残余窒素濃度については妊娠後半に於ける胎児尿の影響が可能性から言つて高く考えられるにも拘らず,上述のごとく胎児の成長の旺盛なる妊娠後半に於てその濃度は月別により殆んど大差がなかつた。この残余窒素の月令別消長の傾向は,極めて注目すべく羊膜に何等かの炉過作用が存在するか又は胎児尿そのものの検討の必要を示唆した。

Phenolsulfonphthalein液による卵管疎通検査法(P.S.P.test)の追試成績—(特にIndigocarmin液による卵管疎通検査法との対比成績)

著者: 渡邊金三郎 ,   中尾昭 ,   邨瀬恒雄

ページ範囲:P.609 - P.612

緒言
 G.Speck(1948)の創案にかかるPhenolsul-fonphthalein液による卵管疎通検査法(以下P.S.P.testと略記す)は,試薬の入手難に禍され,我国に於ては僅かに小国の追試成績をみるのみである。
 従つて試薬Phenolsulfonphthalein (以下P.S.P.と略記す)入手の容易になつた現今では当然追試検討さるべき方法であると共に,三谷教授の創案にかかるIndigocarmin液(以下I.C.と略記す)による所謂Chromotubationとも比較検討さるべきであるに不拘,未だこの検討は行われていない。依つて我々は一昨年来P.S.P.testと子宮卵管造影法とを同一患者につき同時に施行し,両者の成績を比較すると共に,一部患者にはI.C.液によるtestをも併用し,更に又我々が先に発表したI.C.液によるChromotubationの追試成績とも対比検討し,P.S.P.testの優秀性を再確認したので茲に報告する。

赤毛猿の性周期に及ぼすアンドロゲンの影響

著者: 蓮井敏子

ページ範囲:P.613 - P.617

 近時,ホルモン測定法の進歩と共に,女性体内に於ても異性ホルモンであるアントロゲンが分泌され,而もエストロゲン,ゲスターゲンとの相互作用によつて円滑に性機能が遂行されていることが立証され,又一方,婦人科疾患に対する治療法としてもアンドロゲンが広範囲に利用される等,婦人科領域に於てアンドロゲンは益々重要視されつつある。然し乍ら,女性体内に於けるアンドロゲンの代謝及びアンドロゲン療法の作用機転等については尚,不明の点が多く之が究明は目下の緊要事であると云わねばならない。
 赤毛猿は,人に近似した月経周期を有するのでホルモン研究に於ける最も重要な基礎実験動物であり,特に私が既に発表せる如く,月経状態の変化,直腸腹壁双合診,腟内容塗抹標本,頸管粘液等によりその性周期の変化を容易に観察することが出来,その成績は人に対しても充分に推測し得る利点がある。茲に私は,赤毛猿の性生理の観察の一部としてアンドロゲン投与による性周期の変化を観察したので報告する。

台湾猿の性生理に就いて

著者: 蓮井敏子

ページ範囲:P.618 - P.620

 婦人の性生理特に月経周期の猿による基礎研究は,諸外国に於ては多数の報告が見られるが,その大部分に赤毛猿が用いられている。しかし我国に於ては入手が非常に困難であり価格も高いのでその代用として台湾猿を用いて見たが赤毛猿と殆んど同様の成績を得たので報告する。

症例研究

妊娠4ヵ月迄継続した間質部妊娠の1例

著者: 沼部元夫 ,   藤本次郞 ,   曾爾一男

ページ範囲:P.621 - P.623

緒言
 卵管妊娠は妊卵の着床部位により峡部妊娠,膨大部妊娠,間質部妊娠に分類されるが,此の中,卵管間質部娠妊は非常に稀で,僅かに全子宮外妊娠の1〜3%であると言われている。我々は最近最終月経より18週目の右側卵管間質部妊娠と考えられる1例を経験したので茲に報告する。

卵巣妊娠の1例

著者: 依田富弘

ページ範囲:P.625 - P.627

緒言
 1878年Spiegelbergは卵巣妊娠の確診の為に充足すべき徴標を提唱した1)。即ち,(1)患側卵管は胎嚢形成に無関係であること,(2)胎嚢は局所解剖学的に卵巣の位置に存在すること,(3)胎嚢は固有卵巣靱帯により子宮体と連絡すること,(4)胎嚢壁に卵巣組織を証明すること,であつた。1899年van Jussenbrockが確実な症例を報告して以来,我国においても10数例2)〜11)の発表が行われたが,猶その発現頻度は比較的稀有なものとされている。著者は最近,子宮外妊娠破裂の診断にて開腹し,肉眼的,病理組織学的に卵巣妊娠であつた1例を経験したので報告する。

レ線像により三胎までを診断し得た二卵性四胎の1例

著者: 藤原幸郞

ページ範囲:P.627 - P.629

1.緒論
 多胎妊娠の中,双胎妊娠は比較的頻度が多く,臨床上の症状及び綿密な触診により,殊に最近はレ線診断の普及によりその診断はさ程困難ではないが,三胎,四胎となると,遭遇する機会も少なく,レ線像による他は妊娠末期に至つてもこれを診断する事は困難である。殊に四胎分娩については本邦では明治36年磯山が之を報告して以来,戦前において15例,戦後では村上1)(1948),小片,梶谷2)(1953)による2例が報告されているに過ぎない。余は二卵性と思われる四胎分娩に遭遇し,分娩前X線撮影により三胎までを診断し得たので報告する。

腹腔内大出血を来した顆粒膜細胞腫自然破裂の1例

著者: 高橋高 ,   富田哲 ,   近藤昭 ,   杉崎和泉

ページ範囲:P.631 - P.634

緒言
 過去20年間に,所謂女性化腫瘍と呼ばれる顆粒膜細胞腫について多数の研究があり,我国では樋口1)2)3)によつて明らかになつた点が多い。本腫瘍の自然破裂によつて,腹腔内大出血を来たした例は,内外とも其の報告は少く,我国では昭和7年北條4)の1例,及び昭和25年滝川5)の1例を見るに過ぎない。我々は其の典型的な1例を経験したので報告する。

合指症を合併した先天性皮膚欠損症の1例

著者: 庄司冏 ,   山田雄二郞

ページ範囲:P.635 - P.638

 先天性皮膚欠損症は,1826年Campbellが始めで記載して以来,外国では,Abt, Adair & Ste-wart, Terruhn, Neumann, Owing, Dowler,de Vink, Rogatz & Davidson, Stolowskyその他比較的多数の報告例を見,我国にては,和田,宇津,佐々木,難波,玉置,岩井及び鵜池その他の報告があるが,私達も最近,先天性皮膚欠損症の1例を経験したので報告します。

中央前置胎盤を惹起した二葉性胎盤の1例

著者: 山本龍一

ページ範囲:P.638 - P.639

Ⅰ.はしがき
 胎盤の形態異常の中,多葉性胎盤に就いては先にHyrtl及びRibemont-Dessaignesに依り詳細に検討され,其の頻度はRibemont352例に1例,Stöckel 1%,橋本0.14%,今井500例中4例,Ahlfeld 600例中1例とされ,必ずしも稀なものではないが,それが前置胎盤として形態異常と共存した場合は稀有であり,本邦でも今津,富井,松枝,松尾,酒向,松本等の報告があるに過ぎない。予は二葉性胎盤に見られた其の1例を経験し,幸に生児を得たので其の概要を報告する。

病例研究

子宮頸部筋層内妊娠の1例

著者: 鳴瀬寛爾 ,   前野操

ページ範囲:P.623 - P.625

 吾々は最近,内診中に大出血を来たしたので,絨毛上皮腫を疑い,手術所見から更に頸管妊娠を疑い,最後に組織学的検索により頸部筋層内妊娠であることが判明し,しかもその妊娠が内膜症に誘導されて成立したと考えられる極めて稀な1例を経験したので茲に報告する。

診療室

新止血剤アドレノクロムモノセミカルバゾン(アドナ)による機能性出血の治験

著者: 石山芳夫 ,   深田良雄

ページ範囲:P.641 - P.642

まえがき
 新止血剤アドレノクロムモノセミカルバゾンは,1943年Dr.F.Barconner等により合成され,ベルギー,フランス等で種々研究が加えられた結果,優れた血管強化並びに止血作用を有することが明かとなつた。
 之の止血機序は,従来の血液の凝固を促進させる止血剤とは異なり,アドレナリンの止血作用によるものである。すなわち,アドレナリンは生体内で酸化されて,アドレノクロム及びアドレノキシンとなり,止血作用を現わす。このうちアドレノクロムは交感神経刺戟作用がなく,止血剤として極めて有用なことが明かとなつたが,以前は不安定,且不溶性のため実用には供されなかつた。ところが或種の誘導体,特にモノセミカルバゾンは,乾燥状態でも水溶液でも,非常に安定であることが発見され,臨床的使用が可能となつた。

妊娠と避妊との関係についての調査

著者: 船橋守

ページ範囲:P.643 - P.645

はしがき
 母性保護の立場,個人的経済事情,更には人口問題解決等の面から,亦現今の社会情勢より受胎調節或は人口妊娠中絶を実行する者が多くなつて来て,此の問題に関する調査研究も幾多報告されている。
 而して,妊娠と避妊との関係について,妊婦が如何なる考えを持つているか,此の動向を知る事も亦大切な事と思われる。

子宮肉腫の2例

著者: 瀧澤晴雄 ,   新村忠 ,   福澤芳章

ページ範囲:P.647 - P.652

緒言
 最近吾々は比較的興味ある子宮肉腫の2例を経験したので報告する。

海外文献抄録

婦人科領域の癌診断と前期係数,他

著者: S.Timonen

ページ範囲:P.653 - P.655

 癌の細胞学的診断に於いて,核分裂の各期の長さを比較する方法について,性器癌と健康組織により比較検討を行つた。
 子宮頸部,子宮体部及び卵巣より組織を採取,顕鏡し分裂前期及び申期の細胞100コを数え,前期対中期の比(前期係数Prophase Index=PI)を見た。80例の癌,40例の非癌性病変,30例の健康組織について行つた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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