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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻1号

1957年01月発行

雑誌目次

特集 クロールプロマジン

Chlorpromazine—その副作用

著者: 熊谷洋 ,   小林司 ,   佐久間昭

ページ範囲:P.3 - P.8

いとぐち
 Chlorprozineは特異な中枢作用と多岐に亙る末梢作用とをもつ薬理学的には特異な薬物である。その薬理学乃至臨床経験については各方面からの発表があり,総説もあるが,その作用の全貌は明らかに解明されつくされておらず,今後の研究に待つべきものが甚だ多い。ここでは主として副作用の側面から考察した。
 Chlorpromazineは第1図のような化学構造式をもつているが,従来phenothiazine誘導体が駆虫に用いられたほか,何故に特殊な中枢作用を示すか等現在の知識では充分説明できない点が多い。塩酸として水に良く溶け,内服で良く吸収される。実験動物に対する急性毒性は第1表に示す通りである。

補助麻酔剤としてのクロールプロマジン

著者: 山村秀夫

ページ範囲:P.9 - P.14

 1950年12年にローンプーランでクロールプロマジンが作られるや,これに関する研究は算え切れない程あり,恐らく今までの薬剤でこれ程注目されたものはないのではなかろうかと思われる程である。
 従つてここではクロールプロマジンの薬理作用などを系統的にのべることなど一切省略し,補助麻酔剤としてのクロールプロマジンに主眼をおいてのべたいと思う。

無痛分娩におけるクロールプロマジン

著者: 尾島信夫

ページ範囲:P.15 - P.18

 Chlorpromazine(以下CPと略)及びそれを含む遮断剤カクテルが正常分娩の産痛緩解に有用なることは既にLaorit一派によつて説かれたところであり,婦人科手術時の前投薬及び術後管理にCPの優秀性を日常経験している私達には,無痛分娩におけるCPの価値は興味深い問題である。「産科の疼痛は我々の進化の代償である」という産痛に関するLaboritの哲学的饒舌には私の承服し難いものがあるが,ここには冬眠療法という犬系を離れて,CPそのものについて無痛分娩に対する効果を扱つてみたい。
 新製剤を使用するに当つて(殊に産痛緩解の様な救命的意義を含まない目的に対しては)第1に問題とすべきは副作用のことである。子宮体部筋肉の支配が交感神経系であるとする説を承認するならば,交感神経系遮断剤であるCPによって陣痛(陣縮)微弱を来し,或いは弛緩性出血を来す虞はないであろうか?CP投与に必発といつてよい位の血圧降下が,胎児仮死の原因とならないであろうか?肝に対する影響乃至酵素系への作用が血液凝固機転に影響して後出血の量に変化を来さないであろうか?胎児に移行したCPが胎児脳幹の中枢を抑制して仮死の頻度を増加しないであろうか?ショック症治療の場合や,手術前後に用いる際と異り,複雑な反射機能の連続ともみられる分娩時におけるCPの地位を定めるには以上の様な各種の危険発生の可能性に対する経験的な保障が必要である。

水性造影剤による子宮卵管造影法に於けるクロールプロマジンの使用経験

著者: 早乙女二朗 ,   大川璟姫

ページ範囲:P.19 - P.22

緒言
 水性造影剤は子宮卵管造影法の際,優秀な造影剤と認められながら,その刺戟性の強いのが欠点とされて来た1)2)3)4)5)10)12)14)15)
 水性造影剤による気管支造影法の際には種々の麻酔法が考案されて来たが6)7)8),子宮卵管造影法に於いては屡々激痛を訴えるにも拘らず殆んど注目されず,軽い鎮痛剤を用いることが記載されているのみである1)2)15)

妊娠悪阻に対するChlorpromazineの治療効果

著者: 野町淳

ページ範囲:P.22 - P.24

1.緒言
 妊娠悪阻の治療法としては,従来精神乃至暗示療法,薬剤療法(蓚酸セリウム,塩酸コカイン等の鎮吐剤,臭素,バルピッール剤等の鎮静剤,卵巣乃至甲状腺製剤,アチドーシス乃至過血糖に対するアルカリ,葡萄糖,インスリン投与等)等が行われていたが1),奏効的確なものは極めて少い状態であつた。然るに最近の化学薬品の進歩に伴い,極めて有効な解毒剤,鎮吐剤の利用が可能となり,殊に1950年に発見された所謂冬眠麻酔剤たるChlorpromazine (以下Cpと略記する)は此の方面で著しく注目を惹くに至つた。私も少数例ながら相当に良好な成績を得たので以下その概要を報告する。

"術後麻酔"の試み

著者: 安井志郎 ,   石田孟

ページ範囲:P.24 - P.29

1.緒言
 さき1)に"術後麻酔"と云う概念を提唱し,Isomital Soda (I.S.と略す)静脈麻酔による術後疼痛緩和法を発表した。従来この目的のためには一般に阿片剤が慣用されて来たが,最近冬眠麻酔剤Chlorprolnazine (C.P.と略)が各界に汎用される様になると共に,今日ではこの目的のためにも用いられる様になつた。
 然し術後の完全無痛を積極的に検討した報告は未だ之を見ない。

クロールプロマジンによる婦人自律神経症の治験

著者: 安井志郎

ページ範囲:P.29 - P.32

 器質的な変化がなく,自律神経障碍によると考えられる症状を主訴とする患者にしばしば遭遇するが,これは更年期又は去勢婦人以外にも多く,多腺性障害・自律神経内分泌性症状群・婦人自律神経症・血の道症1)・婦人神経症14)等と称され,Taylor13)の云う骨盤鬱血症(Pelvic congestion)の大部分も本症であろうといわれている6)
 その名称の多様な点からも窺われるように,本体及び原因は不明な点が多く,治療面では決定的な方法が確立されず,塩酸プロカイン静注法1)3)7)11)・ホルモン療法(エストロゲン・ボセルモン等)・臓器療法・鎮静剤・神経叢剔除法等多種多様な方法が行われている。

産婦人科手術時における強化麻酔の検討

著者: 斉藤幹 ,   寺門運雄 ,   山上徳司 ,   尾崎純弘 ,   本阿弥省三

ページ範囲:P.33 - P.41

まえがき
 Laborit等により自律神経遮断剤を使用する人工冬眠が発表実施されて以来,その適応範囲の広いこと,著明な鎮痛作用,抗痙攣作用,嘔吐阻止作用を有すること,手術等の生体に対する侵襲を軽減できること等の利点より,この方法は広く一般に用いられるようになり,産婦人科領域に於いてもその紹介,追試が多数行われ,悪阻の治療,手術麻酔,無痛分娩,早産児保育,妊娠中毒症の治療等各方面にその効果の優秀なことが報告されている。
 われわれもクロールプロマヂン(以下CPと略記す)を主体とする自律神経遮断剤を使用しての手術時麻酔につき産婦人科領域において少数例であるが経験を重ねたので以下その効果について報告したい。

綜説

子宮内膜症の発生起因—主としてSampson説について

著者: 彦坂恭之助 ,   荘進

ページ範囲:P.43 - P.45

 子宮内膜症に就いて最も興味あることは,その発生起因乃至組織由来である。私共は既に本症に就いて総括的の記述を試みたが1),その際,発生起因に関してもいささか触れておいた。従来,この点については種々の説があるが,最も有力なものの1つはSampsonの経卵管移殖説である。ここではこの説にのみ限局して述べ,私共の記述の補足としたいと思う。
 Sampsonの説は衆知の如く,月経時剥脱した子宮内膜が卵管を通つて卵巣及びその他の腹膜面に至り,そこに移殖すると云うのである。そして,この第1の移殖—増殖病巣から,更に第2の移殖—増殖をおこすという。従つて,この説では月経時の剥脱内膜が生存し且つ移殖能力を有することを前提とする。彼もこのことがなければ自身の説は成立しないと述べている。

原著

新産児の呼吸様式と酸素及び各種薬剤の影響に就いて(その1)

著者: 木多𣳾正

ページ範囲:P.47 - P.54

緒論
 新産児の領域では未解決の問題が多く,就中,前熟児対策は重要な問題にも不拘,十年一日の感が深かつた。近来,この方面に注目の眼が向けられて来た事は欣しいが,新産児の呼吸に関しては殆んど研究がない。著者はこの問題に就いて,重視すべき新知見を得たので報告する。

症例研究

後頭部脳膜ヘルニアの1例

著者: 宗田雅夫 ,   川中子春江

ページ範囲:P.55 - P.59

 先天性奇形に関しては,従来多数の報告があるが,頭蓋ヘルニアは比較的稀である。我々は最近これに遭遇したので茲に報告する。

ABO式血液型不適合による新生児赤芽球症にDiamond氏変法により交換輸血を行い成功した1例

著者: 杉田好朝 ,   三吉玲子 ,   一宮勝也 ,   新井大作 ,   山村惠次 ,   横山三男 ,   川村一枝

ページ範囲:P.61 - P.63

緒論
 1940年Landsteiner&Wiener1)に依り抗Rh抗体が発見され,母児の間の血液型不適合に依る新生児赤芽球症が判明し,1944年Halbrecht2)に依つてABO式血液型不適合に依つても新生児赤芽球症が起る事が始めて報告された。我が国に於いても古畑3),小川4)等の報告があるが,我々もABO式血液型不適合妊娠に依つて起つたと思われる新生児赤芽球症の1例を経験し,これをDiamond法5)の変法に依つて交換輸血し成功したので此処に報告する。

座談会

欧米産科の現況

著者: 安藤画一 ,   長谷川敏雄 ,   藤井久四郎

ページ範囲:P.65 - P.69

 慶大名誉教授安藤画一博士は31月5月から9月にわたりナポリで開かれた第2回世界妊孕不妊学会に出席ののち欧米を視察し元気で帰国された。「臨牀婦人科産科」編集室では帰朝早々の同博士を囲み示唆深い御土産話を伺つた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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