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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻1号

1957年01月発行

文献概要

特集 クロールプロマジン

無痛分娩におけるクロールプロマジン

著者: 尾島信夫1

所属機関: 1慶応義塾大学産婦人科教室

ページ範囲:P.15 - P.18

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 Chlorpromazine(以下CPと略)及びそれを含む遮断剤カクテルが正常分娩の産痛緩解に有用なることは既にLaorit一派によつて説かれたところであり,婦人科手術時の前投薬及び術後管理にCPの優秀性を日常経験している私達には,無痛分娩におけるCPの価値は興味深い問題である。「産科の疼痛は我々の進化の代償である」という産痛に関するLaboritの哲学的饒舌には私の承服し難いものがあるが,ここには冬眠療法という犬系を離れて,CPそのものについて無痛分娩に対する効果を扱つてみたい。
 新製剤を使用するに当つて(殊に産痛緩解の様な救命的意義を含まない目的に対しては)第1に問題とすべきは副作用のことである。子宮体部筋肉の支配が交感神経系であるとする説を承認するならば,交感神経系遮断剤であるCPによって陣痛(陣縮)微弱を来し,或いは弛緩性出血を来す虞はないであろうか?CP投与に必発といつてよい位の血圧降下が,胎児仮死の原因とならないであろうか?肝に対する影響乃至酵素系への作用が血液凝固機転に影響して後出血の量に変化を来さないであろうか?胎児に移行したCPが胎児脳幹の中枢を抑制して仮死の頻度を増加しないであろうか?ショック症治療の場合や,手術前後に用いる際と異り,複雑な反射機能の連続ともみられる分娩時におけるCPの地位を定めるには以上の様な各種の危険発生の可能性に対する経験的な保障が必要である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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