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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻10号

1957年10月発行

雑誌目次

グラフ

Prof.Dr.Schröder

著者: 大野精七

ページ範囲:P.649 - P.650

Schröder博士略歴
 Prof.Dr.med.Robert Schröder.Direktor der Universitäts-Frauenklinik Leipzig.
 1884年(明治17年)8月3日Rostock市に誕生。現在73才。父は外国航路の船長で,荒天の中できたえあげられたその血を受けて,博士は今尚非常に元気で活躍中である.

原著

人卵巣内動脈の形態と機能とに関する研究

著者: 庄子俊昭

ページ範囲:P.651 - P.665

緒言
 Okkels & Engle1)に依り子宮内膜血管に関する微細構造の研究が発表されて以来,内膜血管に関する多数の文献2)3)4)が発表されるに至つた。
 これらの文献の殆んどすべては,月経発来機序に関する研究と云つてよく,此の機序と子宮内膜ラセン動脈との関係が深く注目されることとなつた。

アンドロゼン投与時の生体反応

著者: 沢崎千秋 ,   小野和男 ,   芦田義通 ,   岡部啓介 ,   関本泰男 ,   正岡康蔵 ,   高田喜彦 ,   井上薫 ,   鈴木文七

ページ範囲:P.667 - P.671

Ⅰ.まえがき
 最近の医学の著しい進歩に伴い内分泌学領域でも次々と新事実が発見され,その知見を増しつつあり,従つてホルモン剤の臨床応用範囲も次第に拡大されるに至り,ホルモン剤の本来の目的である内分泌状態の整調化に伴う不可避的な生体代謝への影響も亦看過し得ないものとなりつつある。ましてや代謝の亢進をその応用目的としているホルモン剤,就中蛋白同化ホルモンでは,その本主作用は勿論同時に及ぼすその他代謝への諸影響をも考慮してこそ,はじめて適正応用が可能となる。
 生体の生成発育現象は合成過程が分解過程と共軛し,しかも前者が後者に優位した調和に於て営まれていく事を考えると,ホルモン剤の作用を上述のような立場から見ることは真に重要な意味を持つものである。さてそれなら先ず第一にどの代謝への影響を注目すべきかというと,生体反応は水を媒体として行われているから,これを基礎とすることが出来る。ホルモンの水代謝への影響は沢崎1),塚田2)氏が既に実証報告している如く,ステロイドホルモンにはその種類により程度の差こそあれすべてに認められて居り,従つて電解質代謝にも関連し,ひいてはA.D.S.との関係も問題視されつつある現状であり,Pashkis3), Selye4), Homburger5), Thorn6),吉利氏7)沢崎1),塚田氏2)等により報告されているから,常に水貯溜を考慮に入れつつ他の代謝への影響の程度を論ずべきである。

症例研究

分娩による眼球結膜下出血及び皮下出血について

著者: 森下宗司 ,   鷲見敏 ,   宮河昭夫

ページ範囲:P.673 - P.676

はしがき
 眼球結膜下出血は臨床上しばしば遭遇する疾患,であるが,分娩によつて起る症例は可成り稀であり,我が国では昭和5年の久慈1)の2000余の分娩中5例の症例報告を始めとし,石丸2),久保田3),大崎4),中山・他5),沢崎6),井上7),吉村8),田中9),成松10),新11),山元・他12),塚田・他13)等が順次報告している。
 分娩時の皮下出血に関しては,皮下出血の単独に起つた症例をW.Wenck14),Cathala & Bern-ard-Griffiths15),Stone & Bunim16),馬島17),塚田・他の諸氏が,眼球結膜下出血と合併した症例を久慈,石丸,吉村,馬島,塚田・他の諸氏が報告しているがいずれも数例を数えるのみである。

子宮腟部筋腫の1例

著者: 竹村幸子

ページ範囲:P.677 - P.679

緒言
 子宮筋腫の大部分は子宮体部に発生し,頚部殊に子宮腟部に発生するものは極めて稀である。1778年Smellieがはじめて報告してよりVorbeck(23例),Kolb (29例),Gueissatz (101例)その他により報告並びに文献的考察がなされており,本邦でも既に60例余が数えられ,中60例は伊藤により統計的観察も行われているが,その発生は全子宮筋腫の僅か1%以下にすぎない。私は最近当科において,子宮腟部前唇より発生した小手挙大の1例を経験したので,ここに追加報告する。

自然分娩に於ける臍帯断裂の1例

著者: 柳瀬恒範

ページ範囲:P.681 - P.685

緒言
 分娩時に於ける臍帯の断裂は墜落分娩,或は手術分娩の時に見られ,自然分娩には甚だ稀とされて居ります。Forsellは14,639例の自然分娩中,臍帯断裂を来したものは僅か2例に過ぎないと報告しています。本教室に於いてもこの症例を経験致し,又この上に母親が,妊娠肝炎を合併して,分娩後に子宮弛緩症による出血を来し,新生児も出生後Sclerema oedematosumで死亡する等,興味ある経過をたどった1例を報告致します。

臍帯真結節の1例

著者: 浦田啓司郎 ,   松村喬

ページ範囲:P.685 - P.687

緒言
 臍帯真結節は分娩時比較的稀に遭遇する臍帯異常で臍帯が真に結節形成するものを称する。本症の妊娠中に於ける診断は困難であるが分娩時又は妊娠中に生じ,結節の絞扼が強い場合は胎児の血行障碍を来し胎児の生命を脅かす事がある。
 私は今回本症例を認めたので報告する。

臍帯真結節の2例について

著者: 田中瑞穂 ,   山崎善久 ,   七島一雄 ,   田崎泰

ページ範囲:P.689 - P.690

まえがき
 臍帯真結節に関する症例報告は稀に見られるが,単胎に於ける単純結節1個,複雑結節1個計2個の臍帯真結節を有した1例及び単純結節1個を有した1例を経験したので之を報告す。

臍帯頸部5回巻絡による胎児死亡例

著者: 山下徹 ,   山田武男

ページ範囲:P.691 - P.694

はじめに
 臍帯巻絡は,吾々が日常屡々経験する分娩合併症の1つであるが,単純な巻絡は胎児・分娩経過に対してそれ程重大な影響を及ぼすものでないとさかている。しかし,巻絡形成が複雑となると,屡々胎児に危険をもたらすものであることは数多く報告されている。吾々は,最近,臍帯頚部5回巻絡のため,分娩開始時胎児死亡を来した1例を経験したのでここに報告する。

臍帯過度捻転によると思われる子宮内胎児死亡の1例

著者: 岡田和親

ページ範囲:P.694 - P.696

緒言
 臍帯の過度捻転による子宮内胎児死亡については,1838年D'Outrepontが始めてその症例を報告し,本邦に於ては1917年菅野の報告以来石塚(1952)迄僅か10数例に過ぎず,その後国富,肥後,三原,藤田,赤岡等及び小平等の報告を見るのみである。最近私も臍帯の過度捻転が原因と思われる子宮内胎児死亡例に遭遇したのでここに報告する。

胎盤ポリープの3例に就いて

著者: 大野和生 ,   宮村通敏 ,   永松幹夫

ページ範囲:P.696 - P.699

1.緒言
 分娩又は流産後に発生すると云われる胎盤息肉は,母性保護の見地から人工妊娠中絶の広く行われている今日,益々増加の傾向を示すものと考えられるが,その報告は稀でWalter, Rosenstein,Kurtz,大槻,和田,錫,鈴木,磐瀬,梅田,木田等の報告を散見するに過ぎない。われわれは最近3年間に典型的な胎盤息肉の3例を経験したので報告したいと思う。

副胎盤が前置胎盤となれる1例

著者: 鷲見敏 ,   井島昭彦 ,   寺田功

ページ範囲:P.701 - P.702

緒言
 胎盤の形態異常は比較的稀なもので,Schiff-mann (環状胎盤),Bayer (心臓形),Courant (紡錘形胎盤),Pankow (舌状胎盤),Myxner, Hyrth(有窓胎盤),Lahm, Schatz, Bumm (二裂胎盤)本邦では八木(腎形,蝶型胎盤),板倉,猪原(四裂胎盤),八木(七葉性胎盤),猪原(九葉性胎盤)等の報告がある。胎盤形態異常の頻度は報告者により,0.14%から1%と云われるが,久保によれば,副胎盤は低位に附着する事多く,酒向,並木の例,松本,山本の例の如く,前置胎盤と合併せる例も散見する。最近吾々は9ヵ月の早産で,前置胎盤の診断をうけ,分娩後,胎盤前置部分は一個の副胎盤であつた事が判明した1例を経験したので,報告する。

薬剤の臨床

産婦人科手術時に於けるデキストランの臨床使用経験

著者: 市川秀一 ,   本田三郎 ,   京田直文 ,   中原芳子 ,   松尾良治

ページ範囲:P.703 - P.707

はしがき
 近年の輸血,輸液に関する業績は目覚しく,麻酔法の進歩と相俟つて,飛躍的に手術領域を拡げているが,更に患者の病態生理により,如何なる場合に,如何なる輸血や輸液が選択して用いられるべきか等と,深く研究検討されつつある。特に輸液に於ける血漿代用品としては,我が国でも,デキストラン,アルギン酸ソーダ,グリコアルギン・カラメルリンゲル等があり,外科領域の報告は尠くなく,漸時,批判採用されつつある。吾々は最近名糖産業から,0.85〜0.95%食塩に,5.7〜6.3%のデキストランを含む邦製デキストランの提供を受けたので,産婦人科に於ける手術に使用した。 外科の消化器系に加える手術では,術前,術後の栄養歴及び術後の栄養摂取法という因子が,輸血,輸液の重要な考慮の対称となるが,産婦人科手術では,先ず術中のショック予防及びショック対策と,術後の回復力への寄与という点により多くの関心が向けられる。吾々は,これらの点を中心として,デキストランの使用経験を述べて見度いと思う。

月経障害に対するイーブ錠の効果

著者: 佐藤友義 ,   山屋浩一

ページ範囲:P.707 - P.709

1.緒言
 現在クロルプロマジンは各科で広くもちいられており,産婦人科領域でも強化麻酔,手術後,分娩時および悪性腫瘍患者の鎮痛鎮静,放射線療法,癌化学療法の副作用,自律神経症,月経困難症などの治療にもちいられ,その偉れた効果が報告されている。われわれは吉富製薬よりクロルプロマジンとアミノピリンの合剤イーブ錠の提供をうけ,月経障害の婦人に使用する機会を得たので,その効果を報告する。

産婦人科領域の感染症に対するオムナシリンの治療効果

著者: 渡辺公明 ,   針谷成夫

ページ範囲:P.711 - P.713

緒言
 最近ペニシリン無効例に就いて種々論議されて居るが,ペニシリン感性菌でも抗ペニシリン性質を多分に持っ様になつて来た事はペニシリン発見当時からの乱用にも一部罪を帰す事が出来るが菌の抵抗と云う事丈で,ペニシリン無効例の凡てを説明する事は誤りである。色々研究されてきたが結局の所Günther, Reploh, Gericke の云う如くに生体防禦機能や免疫状態が最も重要の様である,即ち慢性疾患とか老人病の様に生体防禦機能が低下した時には如何なる抗生物質も無効か或は一時的の効果は見られても持続作用は見られ無いと述べて居る。そもそも抗生物質を使用すると此の生体防禦機能も抑制される事実が多く報告されて居る。即ち Welch は試験管内で高濃度のペニシリンの白血球喰菌現象停止作用を認め,またBieder-mann, Gilbertは生体内でも常用量のペニシリン投与により葡萄状球菌に対する血液の喰菌能力が著しく抑制されると云い,最近ではMayer-Rohnも之を実証して居る。此処に於てペニシリン療法には生体防禦機能を同時に亢進させる事が問題なく重要になつて来た。Gericfee, Reploh等は抗生物質で低下する生体防禦機能を非特異性免疫元療法で再亢進出来ると述べKuroda, Schnitzer,Bi-elingも之に賛成して居る。

メフェネシン系薬劑メプロバメート(ミルタウン)の使用経験

著者: 今木重雄 ,   蘆田勝

ページ範囲:P.713 - P.717

Ⅰ.まえがき
 開腹術施行患者の術前の不安,緊張,興奮除去の目的で,当教室では,従来,バルビツール系薬剤の投与が行われて来たが,今回レダリー社より今迄の鎮静剤と異つた化学的組成を有するミルタウンと名付けられた,メフェネシン系薬剤の提供を受けて,臨床実験の機会を得,ほぼ満足すべき結果を得たので報告する。
 ミルタウンは,1950年にLudwigとPiechによつて,初めて合成され,臨床的にはBergerにより報告された。ミルタウンの化学式は

産婦人科領域に於けるDioctyl Sodium Sulfosuccinate「バルコゾール錠」の使用経験

著者: 山崎敬逸 ,   藤本次郎 ,   曾爾一男 ,   江本幸三

ページ範囲:P.719 - P.723

緒言
 産婦人科診療に際して,常習便秘,妊婦,褥婦,術後及び環境性の便秘に対して,従来種々の下剤,浣腸に依存して来たが,これ等は不快な副作用と習慣性になり易い欠点があり,改善が望まれていた。
 「バルコゾール錠」(以下「バ錠」と略す)はDioctyl Sodium SulfosuccinateとSodiumCarboxymethyl Celluloseよりなる。前者は,高度な表面活性剤で,表面張力,界面張力を著しく低下させ,滲透性,浸潤性,分散能が強く,従来の下剤と異り,腸粘膜に刺戟を与えず,而も充分に消化された便で,何等不快感を伴わず自然の状態で排便を促進する。これは1955年Wilsonand Dickinsonが始めて下剤として用いたもので2mg/kg以下経口投与し,有効であつたと報告している。後者は純良植物性線維として排便を促すものである。此の度「バ錠」を産婦人科領域の種々の便秘に使用する機会を得,好成績を上げたので報告する。

手術的侵襲並びに放射性Co60照射前後に於けるグロンサンの使用効果

著者: 楠田雅彦

ページ範囲:P.723 - P.726

緒言
 一般に手術的侵襲や放射線照射は肝機能を障碍するといわれる。最近私は中外製薬より,葡萄糖の酸化成績体であり,種々の有毒物質を抱合して複合グルクロン酸として解毒機能を現わし,肝機能を改善するといわれるグロンサン注射液,及び40%の葡萄糖液にグルクロンサン500mgを含む,グロンサン糖注の提供をうけたので手術患者及び放射性Co60,大量遠隔照射を行った患者についてこれを使用し,肝機能を中心としてその使用効果を観察した。

産婦人科領域に於ける新複合鎮痛坐劑Ircodinの試用成績に就いて

著者: 山田文夫 ,   後藤田克己 ,   井上公男

ページ範囲:P.727 - P.728

第1章 緒言
 鎮痛乃至和痛の目的の為には古来アルカロイド剤を始めとして幾多の薬剤が使用されて来たが,副作用尠く,使用簡便で効果が迅速にして持続性を有するものはさほど認められない。吾々は今回上記の様な特性を具備する様創案されたIrcodinの提供をうけたので,その試用成績を発表する次第である。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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