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第7回綜合医学賞入選論文
新生児重症黄疸予防としてのPolyvinylpyrrolidon投与に就いて
著者: 新井大作1 一宮勝也1 稲田裕1 寺門運雄1 片山初雄1 八木文夫1 尾崎純弘1 村越惇七1
所属機関: 1東京医科歯科大学産婦人科教室
ページ範囲:P.875 - P.880
文献購入ページに移動Rh式血液型の発見以後,新生児赤芽球症の治療と新生児重症黄疸の予防は交換輸血の施行に依つて飛躍的に発展し,この分野に於ける新生児の死亡率を急速に低下せしめた。そして従来,予後不良で原因不明であつた重症黄疸の大半が血液型不適合妊娠に由来する血清学的なものであることが判明したが,尚,新生児に黄疸を発生する機構には,梅毒を除いて不明な点が多い。又,核黄疸発生の頻度として血液型不適合に由来するものを除いてその75%は未熟児に発生する(Zuelzer1950)と報告されて居る。交換輸血を受けた赤茅球症児に於いても核黄疸の発生をみて死の転機をとるものも少なくはない。新生児の黄疸が生理的な範囲を越えて強度となり遂には核黄疸となる事は臨床医の最も恐れる処であり,一度,核黄疽を発生すると約65%(Victor 1950)は死亡し,幸いに死を免かれた児も軽度の運動失調から白痴を伴う重症な種々の神経障碍を残すのが常である。われわれは現在迄に11例の血液型不適合児の交換輸血を行い,その内の3例を核黄疸で死亡せしめて居る経験から核黄疸の予防及び,これが治療に少からぬ興味を抱いて居た。
一方,代用血漿剤として登場したPolyvinyl—pyrrolidon (Pereston-N—バイエル,以下P.V.P叉はP-Nと略す)は其の後の研究に依り各方面で応用され,血液組織洗瀞作用,色素排泄作用,毒素吸着作用等が解明されて来た。
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