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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻13号

1957年12月発行

特集 麻酔の進歩

全身麻酔に関する理論の進歩

著者: 細谷英吉1

所属機関: 1慶応大学医学部薬理学教室

ページ範囲:P.935 - P.940

文献概要

 麻酔(全身)現象は,種々の薬剤によつて惹き起される意識と痛覚との消失を主とする症候群であつて,必ずしも単一の機作によつて起るものではないようである。従来の麻酔学説が夫々優れた点を持ちながら凡ての人を納得させ得なかつた大きな理由は,一つの理論のみによつて,あらゆる麻酔現象を説明しようとしたところに無理があったためではなかろうかと筆者は思う。
 生体の中でも殊に複雑を極めた中枢神経の作用機序に就いては,現在でも判つているのはそのホンの一部に過ぎず,大部分は未知の分野に属している。そして,生理的作用機構さえよく判つていない現在,中枢神経の可逆的な抑制現象である麻酔の本態など,どうして知り得ようか。早い話が,脳内アセチルコリン一つをとりあげてみても未だ決らないこと,判らないことだらけであり,又最近では,アセチルコリンよりも寧ろセロトニンやノルアドレナリンが脳内自律神経の伝達物質であろうという説1)2)なども出てくる有様で,将来これら脳内伝導物質に関する諸種の説がinteg-rateされて,略々定説に近いものとなった時,麻酔の理論も完成に近づくのであろうと思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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