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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻13号

1957年12月発行

特集 麻酔の進歩

麻醉と筋弛緩

著者: 北原哲夫1

所属機関: 1東京逓信病院外科

ページ範囲:P.1009 - P.1017

文献概要

Ⅰ.緒言
 手術の種類によつてその程度に多少の差こそあれ,術中少くとも手術部位において筋が弛緩状態にあることが望ましいのは今さら多言を要しない。腰麻が理想的に効いた場合腹壁の筋が完全に弛緩して開腹術がやりよいことはだれしも経験がある。そもそも麻酔として要求される条件を分析してみると,これは決して単に手術部位を無痛にすることのみではなく,さらに患者の鎮静と筋弛緩という三つの要素から成立つており,この何れの一つに欠けても完全な麻酔とはいい難い。かつ今日ではこの三者をそれぞれに適した別な薬剤ないし別な方法を用いて目的を達し,それらの綜合結果として理想的な麻酔状態を得ようとする傾向にある。たとえば以前はエーテルの吸入法一本で全身麻酔をかけようとしたため,手術に支障ない程度の筋弛緩を得るには必然的に深い麻酔をかけねばならず,下腹部手術ではIII期の2相,上腹部手術にはIII期の3相までの深さを必要とした。それだけ患者の生理機構に及ぼす影響が大きく,全麻は患者の体力を最も要する麻酔法との観念が深くしみこんでいた。しかし今日ではたとえば盛んに行われる笑気,ペントタールに筋弛緩剤を併用する麻酔法について見ると,笑気の鎮痛作用,ペントタールの鎮静作用,筋弛緩剤による筋弛緩作用を各別に調整統合できる結果,極めて浅い深度でしかも手術に十分適した状態をもたらし得て息者に及ぼす悪影響が少く,全麻の安全度が著るしく高められたといえる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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