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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻2号

1957年02月発行

雑誌目次

特集 不妊手術は有害か

婦人の不妊手術は有害か

著者: 久保木元

ページ範囲:P.75 - P.79

緒言
 婦人の不妊手術は有害でろあうか。之が筆者に課せられた課題である。この問題は,不妊手術を施行するものの増加に伴つて,近時卵管不妊術后の後障害について報告するものが漸増するにつれて起つて来た問題であつて,世界文献に徴するに我国に於いて特に著しい問題であると思われる。年度産婦人科展望集(産婦の世界8巻9号)中ので昨森山は「以上の様に卵管不妊手術后には,かなりの障害があるが,之等の原因については,或いは精神的影響となすもの,或いは心身症といゝ,自律神経障害となすもの等あるが,未だ不明な点が多く,今后研究を要する処であると述べている。然しながら之等成積を見るに多く術后成積から斯々の月経異常性欲乃至性感異常,違和感等を認めたとしているのであつて,之を手術による影響と判定するに当つては,肉体的変化の外に,精神的,経済的乃至時日の経過による要素等が加つてくる為にかなりの慎重を要し,従つて現在直ちに不妊手術を有害として斥ける者は見当らない様であるし,事実障害なしとする報告も多い。
 国民生活と深い関係を有する本問題は,森山の指摘するように今后研究を要する問題であつて,臨床に携わるものゝ一人として些か検討を加えて見たい。

男子不妊手術としての精管結紮(切断)術について

著者: 志田圭三

ページ範囲:P.83 - P.88

I.緒言
 丈夫な子供を生み,強く育て,しかも充分な教育を与える事は夫婦とし,かつ親として課せられた責務である。従来の如く,無計画な出産はいたずらに"貧乏人の子沢山"のそしりをうけるのみである。現在の日本の如く狭い国土で,しかも貧しい経済状態のもとにあつては,子供を立派に育てる為にはいきおい出産を制限しなければならない。経済事情の許す範囲に於いて結婚後数年の間に何人かの小供をうみ,その後は出産を制限する事が必要となつてくる。
 数人の子供をもうけた後にも,一般に夫婦は若く,相当長年月の間受胎能力をもつている。従つて,器具により,また薬物を使用して受胎を抑制する事はあまりにも煩雑で,長期間の実施は不可能となる。こゝ於いて1回の操作で,永久的乃至半永久的に受胎を不能ならしめる操作が必要となつてくる。これが不妊娠手術である。

避妊を目的とする手術についての私見

著者: 藤井久四郎

ページ範囲:P.91 - P.91

 受胎をさけたい夫婦間に於いて排卵暦,種々の殺精剤,器具,或いはその組合せを応用する方法が広く行われ,指導も相当になされておる今日に於いては,或る程度は目的を達しているものと思われるが,それらの方法の性質上,その確実さに於いて不十分であり,実際に於いては幾多の困難が伴つており,避妊に失敗して人工妊娠中絶手術を受ける婦人が甚だ多い。
 排卵を臨床的にに抑止しようとする研究は間断なく行われており,最近に於いてはlithospermum属植物の抽出物質,progesterone, 19-nor-17-ethinyltestosterone,17-ethinyl estraenenoloneなどの内服による実験も行われつつあるが,まだその見透しさえもついていない。

原著

新産児の呼吸様式と酸素及び各種薬剤の影響に就いて(その2)

著者: 木多𣳾正

ページ範囲:P.93 - P.100

第3節 酸素供給時の呼吸曲線
 他の呼吸強盛剤に比較して全例有効である酸素を新産児の種々の状態に与えた影響に就いて検討すれば次項の如し。

思春期婦人の周期性機能の発達に就いて殊に都市と農村との比較

著者: 松本清一 ,   福島省吾 ,   若松歌子 ,   瀬川煕 ,   宮部黎子

ページ範囲:P.100 - P.105

1.緒言
 思春期は小児期から成熟期へと移り行く時期であつて,この間に卵巣機能は殆んど休止している状態から完全な機能状態へと発達すると共に,また身体的にも精神的にも全身に著明な変化が起る。ただし思春期に於ける卵巣機能の発達は決して休止状態から或る時を境として一気に完全な状態へと飛躍するようなものではなく,おそらく次第次第に変化しつつ完全な機能状態へと漸次移行して行くものだろうことは,今日種々研究結果から想像される所である。一方子宮からの初めての出血,すなわち初潮は,卵巣機能が或る程度発達し,卵胞が殆んど成熟卵胞にまで到達して,そこから分泌されるestrogen量が子宮内膜を変化させる程度にまでなり,且つ子宮がそれに反応出来れば,排卵の有無に拘らず,子宮内膜に対する卵巣ホルモン作用の結果として招来されるのである。従いなか潮前に卵巣機能の発達課程が全く行われてつて初つたわけでもなく,また初潮によつて,卵巣の機能が完成したと老えることも出来ない。すなわち初潮は卵巣機能の発達に伴つて起つてくる性器の発育や第2次性徴の出現などと同様に,思春期という移行期に現われる多くの徴候のひとつに過ぎず,卵巣機能発達課程の1時期を示すものであつて,思春期の間のいかなる時期にも起り得るものである。

開腹時にSulfaisoxazole(Nu 445)を骨盤腔内に投与した時の血中濃度及び尿中排泄量に就いて

著者: 小林敏政 ,   平野清

ページ範囲:P.105 - P.108

 感染の疑いあるものは勿論,無菌手術の際でも感染予防の意味から開腹術時に骨盤腔内にペニシリンが投与されることが屡々あるが,ペニシリンのショックが喧伝されて以来,ペニシリンでなくサルファ剤をここに使用することが多くなつた様であるからSulfaisoxazole(Nu 445)を骨盤腔内に投与した時の血中濃度及び尿中排泄量について老察してみることとする。
 さて考えてみるとスルフォン一基のものは最早や過去のものとなりSulfanil所謂高級サルファ剤としてはSulfaisoxazole(5—Sulfanil Amido 3,4—dimethylisoxazole)Sulfadimetine(6—SulfanilAmido 2,4—dimethyl pyrilnidine)等が溶解度高く,副作用の少い点から賞用され殊にドイツに於いて広く用いられている。これは感染予防は勿論,尿路感染症,胆道感染症,其の他連鎖球菌感染症等では諸抗生物質に比して遜色ないと云われている。この外にSupronalはMarbadal(Sulfathio-ureaとHomosulfaminとの分子結合)とSulfamerazineとの混合剤で好気嫌気両菌に広いスペクトルムをもち,又放射線菌症にも有効とされている。

症例研究

子宮Adenoacanthomの1例

著者: 長洲達也 ,   二宮新次郎 ,   村上真

ページ範囲:P.111 - P.113

 Adenoacanthom (腺カンクロイドAdenocancroid, Adenokankroid)が子宮に原発した症例を経験したが,之は月経不順を主訴として来院し,偶々組織検査を行つて,術前にそれと診断し得た1例で,極めて興味深いと思われるので報告する。

所謂未解決卵巣充実性腫瘍(樋口)の1自験例に就いて

著者: 岡俊勝 ,   吉成勇 ,   清水昭

ページ範囲:P.113 - P.116

緒言
 卵巣充実性腫瘍は元来比較的稀なもので,その中には難解且つ学術的に興味深い腫瘍が少くない。樋口教授(1950)は「卵巣充実性腫瘍」を系統的に観察して分類した。更に樋口,天野(1952)は従来見解の一致を見ない卵巣充実性腫瘍例として1系の腫瘍群(未解決性腫瘍A群)を発表した。その後樋口,小林(1953)は未分化胚細胞腫の予後不良群を再検討し,腫瘍全体が定型的Disgerminome像のみを示す単一型及びDisgerminom像と管状網様或いは腺様配列及び乳嘴状構造が混在する混合型(未解決腫瘍B群)の2者を区分,且つ又B腫瘍群組織中にはA腫瘍群と極めて類似した腫瘍要素を認め,更にA腫瘍群とB腫瘍群が臨床的にも又類似の傾向を示す事を報告,2者の関連性を示唆した。更に樋口,劉(1956)はEwing, Pick等の奇形腫説の面より上記の未解決腫瘍群を追究し,腫瘍組織の全割面検索を施行,前述のA群様部或いはB群様部にTeratoidesElementの混在する1群(未解決腫瘍C群)を認めて報告した。我々も最近C群に属すると考えられる卵巣充実性腫瘍の1例を経験し,略々その全経過を追及し得たのでここに報告する。

食道気管瘻を伴つた先天性食道閉鎖症の1例

著者: 赤堀和一郎 ,   杉本修 ,   毛利進

ページ範囲:P.116 - P.121

緒言
 先天性奇形はその発生部位により体表面に見られる外部奇形と,内部臓器に見られる内部奇形があるが,前者は通常診断が容易であるのに対して,後者は発見され難く,從つて診断のうかない儘に適切な処置を逸し重篤な症状を呈する事が少くない。
 私達は最近食道気管瘻を伴つた先天性食道閉鎖症の1例を生前に推定し得,更に剖検によりそれを確認し得たので茲に報告する。

癌の再発と誤診された陳旧性リンパ潴溜腫について

著者: 橘高祥次 ,   百瀬和夫

ページ範囲:P.121 - P.123

緒言
 子宮頸癌根治手術後に発生するリンパ瀦溜腫は,その90%が術後20日迄に発見され,又その70%は退院時(術後約50日迄)には消失すると云われている10)。本症が陳旧になると癌の再発と誤診され易いことに就いては小林が述べているが2),この誤診の為に手術された2例が今迄に報告されている3)7)。吾々も術後10ヵ月目の定期検診時に右側労結合織に再発した癌腫と診断し,術後12ヵ月目の検診時に初めて陳旧性リンパ瀦溜腫として内容物を穿刺し,これが自然消失するまで観察し得た1例を経験したので報告する。

座談会

国際家族計画会議に出席して

著者: 石川正臣 ,   水野潤二 ,   木下正一 ,   高嶋達夫 ,   藤森速水 ,   藤井久四郎 ,   小林隆

ページ範囲:P.125 - P.132

編集室の行きちがいで1年4ヵ月以前の座談会を掲載することになつて御出席の方々にも申訳ありません。この国際会議がその当時日本産科婦人科学会の方々にあまり直接関係がなかつたのはやはり行きちがいと思われますが,特に日本では人口問題と受胎調節問題は年々切実さを増して来るし,また本年4月にはアジア婦人科学会会議が東京で開かれることになつているので,この座談会も意味があると考え,おくればせながら掲載します。 (藤井)

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

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