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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻3号

1957年03月発行

雑誌目次

原著

機能性子宮出血に対する男女性ホルモン混合製剤の止血作用について

著者: 唐沢陽介 ,   出口奎示

ページ範囲:P.139 - P.144

I.緒言
 機能性子宮出血の発生機序に就いては,今尚明らかにされていない点が多いが,間脳一下垂体一卵巣系の失調を本体とすることは一般の認めるところである。従つて内分泌機能系の障害にはホルモン療法が最も合理的であるとの考え方から,本症には古くより各種ホルモン製剤による療法が行われている。しかしながら内分泌機能系は極めて複雑な有機的関聯性を有し,原発部位として最近漸く注目されるに至つた間脳一下垂体系の機能が如何なる状態にあるかを知る的確な診断法が見出されていない為もあつて,本症の治療法も概ね経験的な形式に依存する傾向が強かつた。
 従来行われているGonadotropin, Estrogen, Progesterone等による療法では相当な止血効果を収めながら,かなりの率において再発を見ていることも本症の複雑さを物語るもので,投与方法の改善と合理化とは治療効果の向上に対しては勿論,延いては本体の解明に対しても重要な問題であると云わなくてはならない。

婦人科領域における男女性混合ホルモン剤の使用経験

著者: 唐沢陽介 ,   鈴木博

ページ範囲:P.144 - P.147

I.緒言
 最近の内分泌学の進歩に伴い,産婦人科学の臨床にあつても,ホルモン製剤の使用法が次第に合理化され,Estrogen, Progesterone, Androgen等の相互作用の研究の成果は,これ等ホルモンの単独使用にまさるいくつかの混合製剤を生み出した。これは生体内におけるホルモンの作用が,常にいくつかのものゝ共同作用として営まれると云う観点に基いて,葉剤の投与方法を生理的且つ有効なものにしようとする努力の現われとも云うことが出来よう。
 余等もEstrogenとAndrogenとの混合製剤を使用して各種婦人科疾患の治療を行つたので,その概略を報告する。

女子学生の月経統計

著者: 伊藤一哉

ページ範囲:P.149 - P.152

まえがき
 戦後既に10年余,社会状勢もやゝ安定してきた今日,月経統計に関する報告がいくつかなされているが,私は比較的良い環境に育つた中流以上の子女を擁する成城学園生徒の月経に関する統計的観察を行つたのでその成績を発表する。

月経と智能変動

著者: 松本隆治

ページ範囲:P.152 - P.155

緒論
 月経と作業能率,月経と犯罪,月経と性格等々の関連については幾多の業蹟が発表されて居る。私は巷間よく女子学生の学業成績が,平素非常によく出来る生徒にして或る時には著しく低下したり,或る時には考えられぬ様な処に間違いを生じたりする事を教師や生徒より聴く事が屡々あり,果して月経時に於いでどれだけの智能力に変動を生じるものかと云う事を調査してみた。
 先ず客観的に教師の側よりみて変動の有無を調べ,次で主観的な変動即ち生徒自身の訴えを調査し,最后に脳研式智能検査を実施してその変動について推計学的な検討を加えた。

トロホブラストホルモンの臨床応用(その1)

著者: 永田秀一

ページ範囲:P.155 - P.159

緒言
 Zondek-Ashheim妊娠反応は下垂体前葉に由来するホルモンによるという説は,その後多くの学者によつて訂正され,胎盤ホルモンによる事が明らかとなり,白井・飯田等は胎盤絨毛上皮細胞より産生されるのでトロホブラストホルモン(以下トロホと略す)と名付けた。彼等はこのトロホを水溶性として抽出する事に成功し,基礎的実験で人工黄体発生を確証した後,既に臨床的にも人工不妊化・性器出血・月経痛等の治療に優秀な成績をあげている。私は伏見製薬所よりトロホの提供をうけ,当教室外来で臨床に応用したので茲に小数例であるが報告する。

症例研究

同胞に見られた男性仮性半陰陽の稀有なる1型

著者: 宮信一 ,   柴田道也 ,   塩谷謙二

ページ範囲:P.163 - P.168

緒論
 周知の如く仮性半陰陽(Pseudohermaphroditi-sm)とは,男性或いは女性の性腺の一方を有しながら,外性器の形状が反対の性のものに類似した場合を指すもので,睾丸を有しながら外性器の形状が女性的である男性仮性半陰陽(以下P.H.M.)は,反対の女性仮性半陰陽に比し発生頻度が遙かに多いとされ,事実余等が蒐集した本邦に於ける明治以降現在迄の全報告例と思われる百数十例中約80例を占めており,従つてP.H.M.は真性並びに女性仮性半陰陽に較べてより詳細に記載され,又其の特質も述べ尽された感がある。これらの諸報告を通覧するに,本症の殆んど全部は例えば肥大した陰茎様の陰核,陰嚢に類似した大陰唇,男性型陰毛発生,乳房の男性化等に加うるに喉頭の隆起,従つて音声の男性化,男性的習性等の少くとも1症候以上を有するもので,以下報告する外性器の外観は何等正常女性と異らず,習性その欠くような他も全く女性であり,従つて前述の症候の凡てを特殊な型のもの(以下本型と略)は極めて稀に見られるに過ぎない。即ち半陰陽2000余例に基くNeugebauer(1908)の著書1)中でも,Moortin, A.の記載した僅か2人の姉妹のみがこれと一致するに過ぎず,本邦でも秋山2)(明41)が偶々同年本型と推定される1例を報告した。

真性半陰陽の1例

著者: 山下徹 ,   三上正 ,   大川璟姫

ページ範囲:P.168 - P.171

はじめに
 1個人が生殖腺として,同時に睾丸及び卵巣の両者を有する奇形である真性半陰陽は,比較的稀なもので,Wilkins等1)によると,文献上の368例の半陰陽中,真性半陰陽は40例という頻度を示している。本邦に於ける症例は,私達の調査した範囲では,10例を見るに過ぎない。今回私達は,当産婦人科教室の病歴(昭和17年)中に,真性半陰陽の1例を発見したのでここに報告する。

産褥性子宮内飜症に就いて

著者: 魏聯證 ,   蔡煒東

ページ範囲:P.171 - P.180

緒言
 子宮内翻症とは腸管に於ける疊積の如く子宮の一部が他部の中に陥入するか,又は全く翻転して子宮内面即ち粘膜面が外方に,共の外面即ち腹膜面が内方になつた状態を言う。実地上極めて稀に遭遇する子宮の位置形態異常で,古くはHippo-crates時代已に明確に記載せられ,その後Crosse(1843),Beckmann (1895),Vogel (1900),Thorn(1911),Zangemeister (1913),Mason&Rucker(1927),前田(1930),吉村(1934),Harer&Sharkey (1940),Das (1940),Bell&Wilson(1953)等の統計的観察もあり,その報告例は必ずしも少くはない。臨牀家として大病院におるものでさえ一度も遭遇しないが,あつても僅かに1,2例を経験しうるのみである点から,矢張り,子宮内翻症は稀有なる疾患に相違なく,我々は最近,妊娠8ヵ月の早産後に発生したと思おれ,已に10年3ヵ月を経過した陳旧性子宮内翻症の1例を経験したので,茲に報告する。

甚だ珍らしき下腹部腫瘍に就いて

著者: 上山武男 ,   水野悟

ページ範囲:P.180 - P.182

緒言
 婦人性器の畸型は双角子宮,重福子宮等,其の種類は種々あり,往々之に遭遇するものであるが,特に一側子宮附属器欠如の例は甚だ稀有である。
 然も子宮の一部及び片側附属器と思われるものが完全に遊離した例は未だ本邦及び欧米の文献にその例を見ない。私達は最近3回経産婦にて左下腹部の激痛を訴え入院手術した斯る1例を経験したので?に報告する次第です。

手術手技

陷凹乳頭成形手術

著者: 木下二亮 ,   佐分利六郎 ,   伊藤一哉 ,   大石雄二 ,   栗原洋

ページ範囲:P.185 - P.187

はしがき
 陥凹乳頭は珍しいものではなく,且つ新生児の「哺乳に甚だしく不都合であるに拘らず,一般に乳頭牽引を繰返えすに止まり,積極的に手術されない。これは数多くの乳頭成形法mammilliplastyがあるに拘らず,成績が不良で,1年以内に旧態に戻るためであろう。余等は簡単な皮膚切開を用い,良好な遠隔成績を得たのでこゝに報告する。

人工妊娠中絶の手技に就いて

著者: 舘繁雄

ページ範囲:P.189 - P.196

1.緒言
 終戦とともに,戦時中の法規は殆んど廃棄せられたが,独り国民優生法第16条は世相に抗して残存した。
 国敗れ,国家は経済上破綻に見舞われ,国民生活の保障すら出来ず,国民は「インフレ」の波に押し流され,全く塗炭の苦しみに喘ぎ,殊に家族の増加を極度に怖れ,既に妊娠している者は,これを中絶するために,産婦人科医或いは非医者の許を訪れて,非合法の手術を求めた。当時は深刻な世相の進度が速く,法的措置が遅れていた結果,戦時中の国民優生法第16条の該当事項,即ち生命に危険を及ぼす疾病の場合にのみ中絶手術が許されていたために,産婦人科医は世相と法との板挾みとなり,一部には法的制裁を受けた者もあり,又は強迫,恐喝を被る等,不愉快な事態の発生に悩まされた。

診療室

乳頭疾患に対するビタミンAD軟膏の効果

著者: 田島安之助

ページ範囲:P.199 - P.200

1.まえがき
 乳頭の表皮剥脱,皹裂,潰瘍等の一連の皮膚疾患は,授乳婦人特に初産婦に屡々認められ,乳腺炎の主な原因といわれ,又哺乳時の疼痛の為,授乳障害を来す事が多い。
 これらの疾患に対しては,従来色々の治療法が行われている。即ち硝酸銀液等を以てする焼灼法,肝油,マーキロ,沃度丁幾,グリセリソ,及び種々の軟膏類の塗布法,太陽燈,赤外線等の光線療法がそれである。特にビタミンA及びD (以下V.ADと略記)の局所応用が,外傷や各種皮膚疾患に用いられて以来,産婦人科領域に於いてもこれら乳頭疾患にV.ADが使用せられ,その治療効果の優秀性が報告されている(内海等,昭11,赤須,昭12,柴山,昭15)。

妊娠悪阻に対する抗プラスミン剤(イプシロン)の使用経験

著者: 城登 ,   吉川正治

ページ範囲:P.200 - P.204

緒言
 血液を体外に採り出した場合,凝固するが一旦凝固した血液は,ある種の条件の下では,再び無菌的に溶解する現象も見られる。斯かる現象は相当古くから気付かれていて,Zimmerman (1846),Green (1887),Daster (1894),Rulat (1904),Nolf (1905),Morawitz (1906),等により報告されているが,近年に至りこの臨床的意義が研究されるようになり,斯かる現象の本態の一部は,血漿中にある蛋白分解酵素plasminが,ある場合に急激に活性化されて,このplasminと拮抗作用を有するAntiplasminとの間の動的平衡が破れ,一旦凝固したものが再び溶解するという現象即ち,線維素溶解現象乃至は血漿蛋白の溶解の起る現象に外ならないと,Macfarlane, Zoomis等により説明されるに至つた。更にこの線維素溶解現象は,外傷時,Shock状態,手術後,月経中の血液,高血圧症,月経困難症,妊娠中毒症例えば子癇や妊娠悪阻時等にも起ることが,Yudin,Maefarlane, Imperati, Kaulla, Mole, Wexlerand Ellis, Smith and Smith, wilson andMunel, Tagnon等により次々と発表された。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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