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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻5号

1957年05月発行

雑誌目次

原著

妊娠に合併した子宮癌に就いて

著者: 今尾孝 ,   田中新平 ,   大沢昇 ,   長勝彦 ,   山口正義 ,   戸島博文

ページ範囲:P.295 - P.300

第1章 緒言
 子宮癌と妊娠との合併は,その頻度は極めて低率である事は一般に認められているが,妊娠,分娩,産褥の癌に対する相互関係に就いては未だ定説を見ないものも多い。
 又最近内分泌学方面の進歩に伴い,ホルモンと腫瘍との関係に対する考察も種々行われているにも拘らず,妊娠を伴う子宮癌(以下妊癌と略記す)の病理組織学的方面の報告は殆んど見当らない状態である。

子宮頸癌治療後発生した膀胱腟瘻について

著者: 宿輪亮三

ページ範囲:P.301 - P.304

1.緒言
 近時,子宮頸癌治療法は根治手術々式にしても,或いは放射線療法にしても長足の進歩を遂げており,治療後に膀胱腟瘻を発生することが減少しているのは一般に認められている所である。
 然しながら手術に際して,膀胱の剥離操作によつて局部的に膀胱壁の菲薄化を来たした後,或いはラヂウム治療を始めてから,かなり長期間を経過した後に発生する膀胱腟瘻は今尚あとを絶たぬ不愉快な治療後合併症の一つである。

婦人における所謂フイラリア症々状,特に乳腺炎様症状について

著者: 森一郎 ,   横山淳一

ページ範囲:P.305 - P.308

緒言
 フイラリア症は熱帯および亜熱帯に広く分布する地方病で,わが国においても鹿児島から青森に至る各地でみられるが,とくに鹿児島は最浸淫地とされて多くの報告がある。なお産婦人科領域における本症については,教室の前田1),および末広2)によつて研究報告されているところで,とくに前田はその広汎な統計的観察から,本症は臨床的に女性では男性に比し感染し易く,その症状具有者も多く,その症状発現の誘因として,一般に過労や,気候の変化や,妊娠や,産褥や,月経等を重視し,なお本症によつて性周期が変化したり,さらに妊孕力すら亢進することを実験的にも証明している。われわれの,本症最浸淫地である奄美大島及び南西諸島における昭和29〜30年の本症観察成績も,第1および2表に示すように,ほぼ前田1)の成績に一致し,全く婦人においては症状具有者,仔虫保有者を問わず本症が多いことを識つた。
 ところが本症々状の種類と発現頻度,年齢,誘因等の関係についてはなお不充分な点が多いため,われわれは本年奄美大島地方における調査で,その症状の著明な45例につきこれらの関係を詳細に検索した。なお本症は極めて多岐な症状を呈するし,症状の調査に当つては過去のものも問診を行わなくてはならないので,症状の表現には当地方でいわれる表現型式を採用した。

産婦人科手術に於けるウインタミンを主剤とするカクテル麻酔について

著者: 糸永健次郎 ,   菊池繁弘 ,   平井慎六郎

ページ範囲:P.309 - P.312

 1951年FranceのH.LaboritはPhône-Poulence研究所に於いて合成されたPhenothlia-zine系薬物を投与し,之に全身冷却を加えた人工冬眠Hibemation artificielleを試みた。近年我国に於いても物理的冬眠に対して薬物冬眠Hiber-nation Pharmacodynamiqueが俄かに注目を浴びるに至つた。その特徴とする所は,自律神経遮断作用により物質代謝を低下し,基礎代謝の上昇を阻止し,低体温保持,抗ショック作用,抗痙攣作用,抗悪心,嘔吐作用,及び鎮静鎮痛と同時に麻酔剤への増強作用を期待する事が出来る点である。我々はChlorpromazineの本邦製剤Winterminを主剤とするCocktail lytiqueを強化麻酔Anes-thèsie potentlaliseeとして応用し,昭和31年3月以降8月迄に産婦人科手術患者72例に使用し,非常に良好な成績を得たので大略を報告する。

婦人科手術に於けるクロルプロマジン使用経験(第2報)

著者: 米倉亮 ,   肥田木孜

ページ範囲:P.315 - P.319

 先に婦人科手術の前麻酔剤としてウインタミン25mgを使用し有効なことを報告したが,今回はウインタミン25mg,ピレチアジン25mg,オピスタン70mg Cocktailで前麻酔を行い更に有効なことを認めたので報告する。

症例研究

子宮頸癌手術後の肋骨転移例

著者: 根本致知

ページ範囲:P.321 - P.323

 子宮頸癌の骨転移はかならずしもめずらしいものではないが,わたくしは子宮頸癌第Ⅱ期の診断で手術後放射療法を行い,そのごまもなく肋骨に転移を認め,その切除に成功した一例を経験したのでここに報告する。

腹式帝切術後ペニシリン・アレルギー及び猩紅熱様発疹を続発せる1例に就いて

著者: 藤下春敏

ページ範囲:P.323 - P.326

緒言
 最近ペニシリン・アレルギー(以下P-Aと略記)の問題は重大な関心を持たれるようになり,アナフィラキシー・ショックの症例報告も増加し,軽症のアレルギー症状に至つては日常時々見られる所であるが,著者は帝切術直後P-Aと思われる症状を発し,その消退後更に猩紅熱様症状を続発して重篤な経過を辿つた1例を経験したので略記してみる。

後腹膜脂肪腫症の1例

著者: 山本文男 ,   田島大像

ページ範囲:P.326 - P.330

1.緒言
 1829年Lobsteinが始めて,後腹壁腹膜下に発生し,腎,副腎,膵並びに性器に関係なき腹膜下腫瘍を記載して以来,本症例に関する報告は内外,外科,内科,泌尿器科並びに婦人科領域に於いて多数発表された。併しその診断はしかく容易ではなく,予後も又不良なものが多い。本症の予後を推定するには,何よりも確かな診断が必要である。筆者等の一人,山本は嘗つて,卵巣腫瘍と誤つた後腹膜線維腫を経験し,今回再び同様の誤診の下に後腹膜脂肪腫を経験した。幸い,両者共良性腫瘍であつた為,良好な経過を辿つたが,本症の診断の困難さを痛感した。この機会に本症に関する内外の症例を集め得たので,我々の経験を報告すると共に,文献的に見た後腹膜腫瘍に就いての概略を述べて見たい。

妊娠末期に見られた肝臓被膜下巨大血腫の1例

著者: 佐藤和照 ,   茅根龍平 ,   高山和夫

ページ範囲:P.332 - P.335

はしがき
 わたくしたちは,正常位胎盤早期剥離の疑いで開腹し,死亡した患者で,肝臓被膜下の巨大血腫形成による出血がその死因であることを,剖検により知りえた1例を経験したので,ここに報告する。

分娩及び産褥時の外陰血腫

著者: 矢内原啓太郎

ページ範囲:P.335 - P.338


 本症に就いては成書にも記載があり本邦の文献も多数見られ小畑,田代等の綜合報告もあるがその症状は極めて軽症から致命的重症に至るまで千差あり,治療に就いても学者により意見を異にし成因に関しては尚充分明かでない点もあるので,筆者最近の症例報告に兼ねて手近の文献から綜説を試み卑見を加えた。本来如斯症例報告に当つては文献を渉読する繁雑から兎角ためらい勝ちになり易いが若し多少の参考に供し得れば甚幸である

実験と理論

乳腺の発育に関する一実験

著者: 本阿弥省三 ,   渡辺邦緒

ページ範囲:P.341 - P.344

 ウサギに於いてはestrogen, progesteroneの単独の作用では乳腺は生理的に妊娠性に発育しないこと,両者の協力によつてのみ妊娠時のような高度の発育が起ることは藤井(1938)が確認したところである。Gomez&Turner (1938),Miχner,Lewis&Turner (1940)等はラッテに於いて,これらsteroid hormonesは直接に乳腺に作用するのではなくて,先ず下垂体前葉に働き,2次的に前葉からMammogenが産生放出されてはじめて乳腺に発育が起るという説を立てた。私達は西尾法(1936)によつてウサギの下垂体を完全に剔除することが出来たのでこの点を再検討することにした。

綜説

外陰部線維筋腫の診断と治療について

著者: 滝一郎 ,   沖本照男 ,   岡本利彦 ,   杉田長久

ページ範囲:P.345 - P.349

Ⅰ.緒言
 外陰部線維腫は性器腫瘍の内比較的稀なものでFullerton(1925)は2300人の外來患者中6例に之を発見している。この腫瘍の発生母地は種々であるが,既往報告例では大陰唇より懸垂せる例が多い。最近当科に於いて大陰唇より膣壁に半球状に突出せる線維筋腫,及び陰核より発生せる線維筋腫の2例を経験したので報告し併せて文献的考按を試みたい。

治療室

2,3の術式に応用した吾々の新縫合法に就いて

著者: 佐藤龍也 ,   佐藤恵子

ページ範囲:P.351 - P.352

緒言
 我々産婦人科医が日常の診療に当り,時折不快な術後創の哆開,特に腟式手術創哆開に相遇する事がある。術後創哆開は患者にとつて,精神的・肉体的に,甚大な影響を与えるが故に,術者は,細心の注意を縫合に於いても,充分に払わねばならない事は論を待たない。
 我々は,2,3の手術々式に応用し,見るべき効果を得る事が出来た縫合法を,ここに報告し,諸賢の批判を乞う次第である。且つ,個々の応用術式に於ける縫合に就いて,述べた方が理解され易いと思われるので,次の如く,2,3の術式を挙げて記載する。

卵膜外リバノール液注入による妊娠中期中絶法の経験

著者: 小林一郎

ページ範囲:P.352 - P.356

緒言
 妊娠中期の中絶法には,ブージー法,ラミナリア法,メトロイリーゼ,コルポイリーゼ,高位メトロイリーゼ,ブージメトラノイクテル併用法,羊水パンピング法,卵膜穿刺法,臍帯結紮法,薬物投与法,羊膜腔内薬液注入法,卵膜外薬液注入法,子宮下部切開法等,多種多様の方法が有るがかく種々の方法が用いられている事は,何れも一長一短が有る事を物語つている。卵膜外薬液注入法は最近我国でも多く行われる様になつた。本法は1846年CohenのPechwasser, Frank-Pelzerのグリセリン注入法に始まる。その後チモール水,硼酸水,食塩水,過マンガン酸カリ液,沃丁法等が次々追試された。沃丁法の中毒例及び死亡例,又1931年HeiserのInterruption注入による腹膜炎,室気及び脂肪エンボリーによる死亡例等報告されている。我国でも注入薬液も,リバノール液(柏原,藤林),生理的食塩水(清水,宇津野),蒸溜水(中野),稀沃丁液(橋爪),リバノール寒天(川島),アネラチンゼリー(柚木),グリセリン(奥,岡島),5%アクチゾール液,リンゲル氏液,ホモズルファミソ液,弗化ソーダ液等,多数が報告されている。0.1%リバノール液は,静脈注射でも副作用なく,且つリバノール液自体に殺菌力の有り,安価なので,私も本法を用いて妊娠中期の中絶法を行つた。茲に成績を述べる。

蛋白分解酵素の帯下治療に対する応用(第2報)

著者: 太田一夫

ページ範囲:P.356 - P.359

緒言
 帯下と婦人科疾患については,今更改めて申す迄もなく,吾々産婦人科医にとつては,身近かな症状の一つであり,その治療法も要するに原因療法の一語に尽きる様である。従来から多くの学者により,帯下治療に対する業績が発表せられたが,いずれも腟内清拭殺菌作用によつて,腟内自浄作用の常態を保つことを主眼とし,又卵巣機能不全によるとしてホルモン剤も使用された。更に化学療法の出現により,各種の化学療法剤が帯下治療に応用せられ,確かに治療効果の進歩した事は喜ばしい事である。
 吾々は先に蛋白分解酵素"ナガーゼ"を帯下治療に応用する目的で,その基礎的実験を主とし,これに加えてその臨床成績の少数について本誌に発表し,事実試験管内実験に於いても又患者自身についての経験でも5回の使用で自他共に帯下の消失を来し,治療経過を短縮せしめ得たことを指摘した。今回は更に例数を追加して些かの知見を得たのでここに報告し,諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

幽門狹窄症を思わせる新生児の頑固なる嘔吐に対するChlorpromazineの一治験例について

著者: 矢花勲 ,   篠原拓男 ,   大瀧隼人

ページ範囲:P.360 - P.361

1.緒言
 フランスに於いて発見されたChlorpromazine(Ch.p)は1951年H.Laboritによつて人工冬眠療法薬として使用されて以来,麻酔,外科領域を初め広く各科に応用され,我国に於いても2〜3年来すべての科に使用され且つ其の効果が賞用されているが,著者等も幽門狹窄症と思われる新生児に応用し極めて満足すべき結果をみたのでここに報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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