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臨床原著
黄体ホルモン,卵胞ホルモン混合剤ペレツトに関する研究
著者: 唐沢陽介1 松枝和夫1 杉本毅1
所属機関: 1東京大学医学部産科婦人科学教室
ページ範囲:P.590 - P.596
文献購入ページに移動Progesterone(以下黄体ホと略す)とEstrogen(以下卵胞ホと略す)との混合製剤が無月経の治療として有効なことは,既に周知の事実である。余等1)2)も本剤油溶液の筋肉内注射,水溶液の静脈内注射及び経口投与剤の内服によって,すべて同じような急墜出血を起し得ることを明らかにし,既に発表した。しかし,これ等は治療によつて無月経が治り得るか否かと云うよりも,無月経患者の子宮内膜より急墜出血を起す作用機序により多くの興味があると云っても過言ではなかつたのである。即ち,極めて短い期間に投与されるホルモンによつて無月経と云う一つの疾病が治癒すると云うことは殆んど期待出来ないのである。
本治療法の創案者,Zondek等3)も云う如く,本法の特徴は,従来のホルモン療法が持っていた一番大きな欠点である時間的に患者を長期間束縛し,やがては治療を放棄の止むなきに至らしめると云うことをなくして,兎も角も月経様出血を惹起せしめることにあるのである。従つて無月経治療の本態である排卵を誘発して正常周期を恢復せしめると云うことは全く考慮されていないと考えられ,そこに本療法が一部学者によって非難され,時には無視されもする原因が存在すると云えよう。
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