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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科11巻9号

1957年09月発行

病例研究

産科的シヨツクの1例

著者: 松岡広次1 村田奎二1 岩井長太郎1

所属機関: 1大阪赤十字病院 産科婦人科

ページ範囲:P.635 - P.639

文献概要

緒言
 産科領域では,出血や外傷なしにひどいショックを起す少数の産科的合併症があり,産科以外の領域ではこれに相当するものが見当らない。これが所謂"産科的ショック"(obstetric shock)であり常位胎盤早期剥離も亦此れに属す。此等は出血以外に他の何んらかの原因をも考えなければならない程の激しいショックを惹起することがある。N.J.Eastman1)は此の種のショックを産科に特異的なものであると強調して,羊水栓塞,常位胎盤早期剥離,妊婦の体位性ショック,分娩後の血管運動神経性虚脱,子宮内反症,及び産科領域の空気栓塞等をその範疇に入れている。就中,常位胎盤早期剥離は産科合併症中,母児に対してその予後が最も不良なるものの一つであり,且つ1936年にW.J.Dieckmann2)が本症患婦の無—乃至低線維素原血症(a-,or hypofibrinoge-nemia)を報告して以来,本症のショック発現機転の相関関係について夙に米国に於て重視されて来ている。
 吾々は最近,分娩時の出血量を750c.c.にとどめ得た常位胎盤早期剥離であるにもかかわらず,産褥で重篤なるショック症状を呈したが,適時適切なる処置に依りようやく母児共に救命できた貴重な1例を経験した。尚加うるに本患婦は妊娠前及び今回の妊娠経過をも詳細に観察されあるを以て,興味ある事項もあると考えるので茲に報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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