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病例研究
十二指腸潰瘍を有せる新生児メレナの1症例
著者: 長勝彦1 橋本和人1 窪田一隆1
所属機関: 1東京大学医学部附属病院分院産科婦人科
ページ範囲:P.639 - P.642
文献購入ページに移動新生児レメナは多くは生後一週間以内に,突然,吐血,血便を発し,通常速やかに虚脱に陥る重篤なる疾患であり,比較的稀なものである。診断は一般に容易であるが,この治療は困難であり死亡するものが多いようである。1722年エーベルトが初めて本症を詳論し,漸次学者の注目する所となり,その原因に関しても種々の説が述べられているが,現在の段階では尚多くの不明な点が残されている。胃,腸の潰瘍は剖検時の主要所見であるが,その発生原因に関しては,中毒性,伝染性,分娩時外傷による循環障害等,帰一していない。然し,最近ではメレナ,臍出血,脳出血,脳膜出血,肺出血,その他臓器出血を総括して,新生児出血症と呼び,その根底には,プロトロンビンの低下があると云つている学者もある。
本邦に於いては1900年,弘田1)の食道下部潰瘍を有するメレナの報告が最初にして,以後加藤,沢崎等の報告を見ているが,剖検所見の明確なものは比較的少いようである。吾々は剖検上,肉眼的並びに病理組織学的に明らかに認められた小豆大の十二指腸潰瘍を有せる新生児メレナに遭遇したので,こゝに報告する次第である。
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