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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科12巻2号

1958年02月発行

文献概要

特集 梅毒

精神神経科領城における抗梅療法

著者: 大熊輝雄1

所属機関: 1東京大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.109 - P.113

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まえがき
 近年,ペニシリンその他の抗生物質が梅毒の治療にいちじるしい効果をもつことがみとめられ,ひろく一般に使用されるようになつてから,この領域の治療は劃期的な進歩をとげてきている。しかし一方では,これらのあたらしい治療法によつても改善されることのすくないいわゆる抗療性梅毒と,これにたいする対策の問題を,あらためて検討しなおす必要が強調されている現状である。そこで,わたくしは精神神経科領域においてもつともしばしば遭遇する後期梅毒性疾患で,各種の治療にたいしてつよい抵抗性をしめす進行麻痺について,おもにその治療方面に関する最近の動向を紹介したいとおもう。
 いうまでもなく,進行麻痺は,梅毒病原体自身によつておこされる真正の中枢神経系の梅毒性疾患であり,梅毒感染後数年ないし数十年の潜伏期をおいて,多くは中年期にいたつて臨床的に発病し,一般に後期梅毒とよばれている。脳病理組織学的には,大脳皮質を主として脳の広汎な領域におたる病変がみられ,梅毒性の炎症機転と,変性機転としての神経細胞の脱落や神経線維の変化がみられる。このような広汎な脳実質の破壊は,結果として永続的な機能低下をおこし,これは精神症状の面では進行麻痺の中軸症状である器質性痴呆としてあらわれるが,これをその他の精神症状が多彩にいうどつて,痴呆型,激越型,抑欝型,誇大型,妄想型,分裂病型などのいくつかの病型がわけられている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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