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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科13巻2号

1959年02月発行

雑誌目次

グラフ

子宮筋肉腫

著者: 東京大学医学部産婦人科教室

ページ範囲:P.91 - P.92

 50才,結婚21才,未経産,約半年前より腹部腫瘤,腰痛を主訴として来院。子宮筋腫の診断のもとに開腹,子宮全摘出術を施行す。
 子宮体は殆んど腫瘍で占められ,硬度稍軟で割面に灰黄白色を呈す(第1図並びに第2図)。

綜説

子宮内胎児心電図に就いて(附・臨床経験)

著者: 今村弘

ページ範囲:P.93 - P.97

緒言
 子宮内胎児の生理学的状態を知る1つの方法として胎児の心電図を撮影する事は産科医にとって極めて興味ある問題であるが,わが国では殆んど実施されていない。所が外国では広く研究され,有効な臨床的補助診断法であると考えられているので,ここにその概要をのべ一般の注意を喚起したい。
 本法は1906年Cremerが妊婦の心電図を撮る際遇然に胎児心臓による"フレ"を発見して以来注目され,Foa,Krumbhaar,Sachs,Haynal,Ke-llner,前川,豊島等も弦線電流計を用いて追試しているが胎児波の証明率(以下証明率と略)が悪く実用にならなかつた。所が1933年にSteffan,Strassman,Johnson等は標準の心電計を用いて若干の症例を報告している。ついでBell(1938)は本法の系統的研究に着手したが証明率が悪く(28%),誘導法も不適当であったので,同年St-rassmanは極板を広くし,四肢誘導で妊娠後期70日間の妊婦の87%に証明した。

文献抄録

予定日超過に対する卵胞ホルモン療法

著者: W.Kalkschmid.

ページ範囲:P.97 - P.97

 予定日の超過は児死亡率を増加せしめ,Bickenbach,Martius等の唱える如く処置を必要と認める。Pla-centaの変性萎縮による胎盤血行障碍及び母児の不調和が原因と考えられる。
 従来種々の方法があるが,われわれはFollikelhormonが無害な陣痛促進剤として適当であるとしてIn-nsbruck大学婦人科1951年より1955年に至る5年間分娩総数7236例中287日以上の分娩を予定日超過として取り扱い,その1469例について卵胞ホルモン療法を行つた。即ち第287日目から毎日5mgの卵胞ホルモンを筋注で5日間連続注射する。薬剤はScheringのProgynon,CibのOvocyclin,SandoのRetalonである。これで効果なかつたものには更に7日おき,第299日目から第2回の陣痛促進を同様に5日間行う。予定日超過1469例中482例が治療群で残り987例が対照群として無処置で比較された。

臨床研究

環境無月経について

著者: 唐沢陽介 ,   露口元夫 ,   塚田一郎 ,   白石恕人

ページ範囲:P.99 - P.102

Ⅰ.緒言
 無月経が極めて多種多様な原因によつて惹起されることは周知の通りである。そのうち,全身的な重篤疾患の部分症状として現われるものは兎も角として,尿崩症,シモンズ氏病,末端肥大症等明瞭な障害が間脳一下垂体系に存在するもの,Stein-Leventhal症候群のように卵巣に機能異常があるもの,或は子宮に何等かの器質的変化の証明されるもの等を除いては,多くの症例においてその原因を明確になし得ない場合が少くない。従来,間脳性,下垂体性,卵巣性と云うが如くに,本症の原因を分類する方法が好んで用いられているが,これ等は概念的にのみ可能なものと云つても過言ではなく,個々の症例についてそのいずれに属するかを決定し得るとは限らないのである。
 一方動物実験においては,間脳特に視床下部が,下垂体性腺系の機能維持に極めて重要な役割を果していることが立証され,人間の月経周期を自律的に営んで行く上にも,間脳の関与が常に必要なことが強調されるようになつて来た。かかる見地から,いわゆる環境無月経,戦時無月経,或は拘禁性無月経等と呼ばれる一連の月経異常が注目を集めるに至つたのである。少くとも中枢性の無月経を云々する場合,その典型的な病型としてこれ等の疾患は常に問題にされて来たのであるが,このような状態にある患者に対し,内分泌学的な検討を加えた者は決して多くない。

産婦人科患者血清によるN-N-Dimethyl-p-phenylendiamineの発色について

著者: 森下宗司 ,   伊藤敬

ページ範囲:P.103 - P.107

 1956年Nobel研究所のStig Akerfeldt1)がN-N-dimethyl-p-phenylendiamine(以下DPPと略す)を精神病者の血清に加えると,その色が藁黄色より乾ブドー色に変化してゆくことを発見し,この現象は精神分裂病の診断に用いられ得るであろうということを示唆すると共に,定量も出来る旨Chemical and Engineering Newsに報ぜられた。DPPとは下図の如き構造を有し,Wurster's redとして知られており,L.Micha-elis等2)がその発色機序を研究している。StigAkerfeldt3)はその後の研究を発表している。即ち,ゆるやかなDPPの酸化によつて,下図の様にセミキノン型の遊離核を形成するものだと考えている。
 この物質は552mμで最大吸収を有しており,健康人から摂つた新鮮血清へDPPを加えると約5分間のlag periodをもつて乾ブドー色に呈色して,その間は吸光係数は僅かしか増加しないが,その後直線的に増加してゆく。一方精神病患者の新鮮血浩では,その呈色のlag periodは非常に短いか,あるいは之を欠いており,しかも直線的に吸光係数は増加してゆくという。この現象を彼3)は生化学的に研究している。しかし,此の反応が精神病者に特異的な反応とはいえない(例えば肝疾患,妊娠等の場合にも起り得る)ことを認めている。

精子欠如症及び両側卵管閉塞と診断した夫妻間における妊娠成立例について

著者: 斉藤幹 ,   青木一郎 ,   田中晃 ,   鈴木一男

ページ範囲:P.109 - P.112

Ⅰ.緒言
 近年,不妊症に関する知見は著しく増大し,その診断と治療はかなり合理的なものとなつて来ているが,未だ解決されねばならぬ事柄は甚だ多いのが現状である。
 子宮卵管造影法の実施後,或は内膜掻爬手術後に妊娠したという例はよく見られるが,その成立機序に関しては不明な点が多く,又夫婦共に受胎が不可能と考えられる状態であるにも係らず妊娠が成立し理解に苦しむ実例も時々見られる。Moore15)(1956)は夫婦を科学的に検査し,受胎不可能と思われたものが妊娠した例を述べ,医師は不妊患者に対していかなる場合においても妊娠が不可能であるということを断言してはならぬと言つている。

吾教室性器結核の臨床及び検査成績について

著者: 村越充明

ページ範囲:P.113 - P.119

Ⅰ.緒言
 女子性器結核の研究は1779年Morgagniが14才少女の1剖検例を記載した事に始まる。それ以后の報告は単なる解剖学的な報告にとどまつていたが,Hegar1)(1886)が臨床的に独立した疾患として体系づけて以来,本症に対する関心が高まり,相ついで多くの研究報告がみられるようになつた。
 本邦に於ては水2)(1934),石井3)(1934),山田・美馬4)(1936),木村5)(1953),水谷6)(1955),等による臨床的及び組織学的研究の記載がみられるが,篠田7)−24)及びその門下は1939〜1956年の17年間に亘り一連の系統的研究を発表し,女子性器結核の臨床及び診断面に大きな功績を残した。

女子性器結核化学療法の再検討

著者: 村越充明

ページ範囲:P.120 - P.130

Ⅰ.緒言
 女子性器結核の治療はHegar1)(1886)の手術療法の発表を嚆矢とし,ついでSimmonds2)(1909),Taylor3)(1916),Olow4)(1926)等の手術療法が続き,一方Krönig (1911),Wagner6)(1927)等は保存的療法,Opitz7)(1911),Gal8)(1935)等は照射療法を支持し,Heynemann9)(1927)等は手術療法と照射療法の折衷を主張し,結論を得ずに多くの論争が繰り返されて来た。
 しかしWaksman (1944)のstreptomycin (以下SM),Domagk Behnisch (1946)のThiose-micarbazon(以下TB1),Lehman(1946)のPara-aminosaltylic acid (以下PAS)等の発見により,結核の治療は大きく変貌し,化学療法の時代に入つた。

実験的研究

非妊・妊娠・授乳各期に於けるウサギ臓器Alkaline Phosphomonoesteraseに対する諸種物質の影響について

著者: 藤井久四郎 ,   加藤宏一 ,   神山善三 ,   大条景一郎 ,   西望

ページ範囲:P.131 - P.134

緒言
 アミノ酸によるAlkaline Phosphomonoes-teraseの賦活並に阻害様式の報告1)2)3)は,数多くあり,赤松4),麻生5)により理論的に解析せられた。更に麻生6)は,Dipeptide,Tripeptideがアミノ酸と同様此の酸素に対し賦活作用がある事を認めた。此のTripeptideの賦活作用の実験で,より高次のPolypeptideとして,CaseinによるApo—酵素活性能を検している。其の結果,Caseinは賦活性能極めて弱く,且つその作用機序の説明は不能であると述べている。われわれは乳汁分泌とAlkaline Phosphomonoeste-raseとの関係を追及するため,このCaseinの影響をウサギ各臓器Phosphataseについて検べた。更に同じ高分子蛋白質として,Prolactin,Albumin等の影響を検べたので報告する。

乳汁分泌の機序に関する生化学的研究(第3報)—山羊乳の比重及ナトリウム,カリウム濃度に及ぼす自律神経毒並びにACTH,DOCA,Cortisoneの影響に就いて

著者: 永田郁緒

ページ範囲:P.135 - P.149

緒論
 著者は既に第1報に於いて乳汁分泌の機序に関する生化学的研究の基礎的研究として,妊娠中の初乳並びに出産后の産褥及産后の成乳に就いて順次経過を追つてそれらの組成分の濃度を測定し,乳汁中の各組成分の一々が妊娠産褥の全期を通じ各々独立的に且つ特徴的に消長することを見た。又,更に第2報に於いて乳汁の乳房内に於ける生成機転を見るための1つの方法として,乳汁の原料と思われる血液組成を見ようとし,乳房に出入する動静脈血を精査し,各組成分についてその較差を検討した結果,一方に於いて血液比重の精査により,血液有形成分比重分担量(GB—GS)即ちそれは大体ヘマトクリツト量(Ht量)と相関するものであるが,これが動静較差の上にあまり差を示さないことより動静脈間に於ける水分の喪失は殆んど認められないことが確認されたが,それにも拘らずGSは静脈血が動脈血より大きいところから蛋白劃分の何れかが静脈血に於いて増加することを知り,それらの分屑の一々について精査したところ,アルブミン濃度は(動脈血>静脈血)となり,アルブミン分屑の乳房内に於ける喪失が見られるのに,γ—位グロブリン濃度は(動脈血<静脈血)となり,これが乳房中にて血液中に移出されるものらしい点が明らかになつた。

唾液腺と雌性機能に関する実験的研究

著者: 藤井久四郎 ,   上野清則

ページ範囲:P.151 - P.155

1.緒言
 唾液腺は消化腺の一部として唾液の外分泌を掌る事は云うまでもないが,1842年にBudgesが動物の唾液腺を剔除しても生命に異常のないことを発表して以来多くの実験がなされ,その内分泌に関しては,唾液腺を剔除イヌに軽度一過性ながら糖尿を見たRenzi & Reale (1892)1)の提唱以来学者の注目する処となり,緒方(知)(昭82),143),284))及びその協力者比企等(昭55),86)),比企(昭 87)),西村等(昭 88)),赤崎(昭89)),宮崎(昭810)),滝沢(昭811),2817)),伴(昭812))の唾液腺内分泌に関する一連の研究により次第に明らかになつて来た。即ち唾液腺は耳下腺を主に顎下腺を従として,硬組織その他広く間葉組織の発育栄養に関与するホルモンを分泌すると云う説を提唱し,このホルモンは腺細胞でつくられ,唾液と共に排泄管に送られて口腔に行く途中,線条部と云う組織学的に特殊な構造を有する上皮細胞内に吸収され,次にこれらを取り囲む淋巴腔へ喜び分泌されて体循環に入ると云う。

薬剤の臨床

婦人重症自律神経症に対するCarnigen液の使用経験

著者: 長谷川直義

ページ範囲:P.157 - P.161

緒言
 女性のあらゆる時期に出現する自律神経症状(又は更年期障害様症状)を主徴とする症候群をわれわれは婦人自律神経症(Vegetose,Vegeto-sis)と呼んでいる1)。従来,本症に対する一般の認識は不充分であつたが,本症が産婦人科外来を訪れる妊婦を除く全外来者の13.5%を占め,之は卵管炎の14.2%に次ぎ第2位の多きを占めて居る1)事実が公にされてから,この方面を閑却して居た医家もようやく関心を持つようになつてきた。本症はその原因から間脳視床下部にある内分泌中枢の変調により,之に近接する自律神経中枢の変調をも来して茲に自律神経症状を発現する内分泌性自律神経症と精神葛藤などの情動障害が原因となつて発現する心因性自律神経症とに分類される。その診断に当つては後者は前者に比して頻度が低いこと,又心因性のものは現在初めから積極的に確診し得る診断法が困難である為,自律神経症に対しては先ず非心因性のものとして治療し,それで治療しない時初めて心因性のものを老え,精神分析法の簡易法たるRavo-nal interview2)を実施して心因を追及すると言う順序がとられている。之等の理由から先ず非心因性自律神経症に対する治療法が重要視される訳である。

自律神経症に対するPregnanediol療法に就いて

著者: 千葉俊博 ,   岡崎恒雄 ,   菅原比呂志

ページ範囲:P.163 - P.165

はじめに
 Zondek(1945)のEndocrine allergy説に始まつたHeckel(1956)のSteroid-hormone me-tabolite allergy説にもとついて,Pregnane-diolによる脱感作療法が登場した。本療法の理論面にはなお疑義はあるとしても,その臨床効果については各方面において検討が行われ,その有効性が認められつつあるが,殊に月経前及び月経時障害,更年期障害,自律神経症,尋常性座瘡等においては従来の治療法に匹敵する如き治療成績があげられている。
 吾々の教室においては自律神経症(自律神経機能障害性疾患)の治療法としては塩酸プロカイン緩徐静注療法を主とし,その他間脳照射療法,臓器埋没療法,ホルモン療法,静隠剤療法,自律神経遮断剤療法等を適当に配合して行つているが,今回田辺製薬よりDiol錠(Pregnanediol)の提供をうけ,上記患者に応用して臨床的効果を検討したので茲に報告する。

手術・手技・麻酔

村江氏新鉗子を以てする連続縫合式頸部円錐切除術

著者: 村江則忠 ,   原晉二

ページ範囲:P.167 - P.170

緒言
 子宮頚腟部切除術は頚腟部糜爛の頑固なるもの及び子宮腟部肥大症に行われているのであるが,近時,頚腟部のScraping Smearの検索及び腟鏡診(Kolposkopie)の発達により頚腟部癌の早期検出及び其予防が行い得る段階となり,頚腟部切除術の適応は非常に拡大され,且つ重大な意義を持つ様になった。
 今春の日本婦人科学総会シンポジユウムに於て,長崎大学三谷教授はSturmdorf氏手術の子宮頚癌早期発見への応用と題して講演し,頚腟部切除術が不可視癌の診断及び腟部癌の予防としてすぐれた成績を示している事を述べている。

笑気ガスによる分娩第2期産痛緩解の追試(第1報)

著者: 三宅清平 ,   小林英世

ページ範囲:P.170 - P.172

緒言
 笑気ガスによる産痛緩解法としてはWebster氏等(1913)の使用により登場し,欧米では1930年頃から娩出期麻酔剤として広く用いられている。わが国では最近研究的に用いられ,その優秀性が認められ乍らも,普及が遅れている様である。産痛緩解法としての麻酔深度は第一期の無痛期即ち,痛覚は鈍麻しながらも意識は完全に消失しない状態で,子宮収縮と共に腹圧を自らいとなみ得る程度が理想的である。われわれは笑気ガスを娩出期麻酔に使用し30例の少数例ではあるが第1報としてその概要を発表する。

開腹術後苦痛管理の方法(第1報)

著者: 森新太郎

ページ範囲:P.175 - P.176

Ⅰ.緒言
 開腹術後の苦痛には(1)腹壁創の疼痛,(2)内臓諸器管より発する疼痛,(3)術後の他の身体的苦痛および精神的苦悩等があるが,これ等の内最も患者を苦しめるものは腹壁創の疼痛であることは論を俟たないところである。私はこの内(1)の除去方法としてポリエチレン製の細いアトム栄養留置カテーテルの側壁に小孔数コを穿ったものを手術終了直前に腹膜と筋肉の問に装置し,創痛発現時それを通じて局麻剤を分割的に注入することにより著効のあることを既に述べた。これを主方法として,(1)の疼痛除去に対する補助及び,(2)(3)の疼痛,苦悩に対しては非麻薬鎮痛,鎮静剤の同時使用により従来医家の定石であった麻薬使用の方法より完全に脱出することができたと報告した。今回は使用例30例における成績を報告し主題における第1報とした。

症例報告

臍帯ヘルニアの治験例

著者: 竹村幸子 ,   後藤義雄 ,   黒須靖

ページ範囲:P.177 - P.180

Ⅰ.緒言
 臍帯ヘルニアとは先天性奇形の一種で,胎生期に完成すべき腹壁の閉鎖が不充分なためその部より臍帯内に腹部臓器が脱出するもので,分娩後可及的早期の外科的整復手術を必要とし,手術までの時間の長短が児の予後を左右する最大因子とされている,おれわれは最近成熟男児の手拳大臍帯ヘルニア1例を経験し生後12時間に行った手術により治癒せしめうることができたので,ここに報告する。

少女に発生した両側類皮嚢胞腫茎捻転の1例

著者: 高橋誠治 ,   伊藤郁夫

ページ範囲:P.180 - P.183

緒言
 卵巣に発生する腫瘍中,類皮嚢胞腫の頻度は可成大であるも,小児期に於けるその発生は頗る稀である。
 われわれは最近満8才3ヵ月の少女に発生した両側卵巣類皮嚢胞腫の1例で,1側の腫瘍が茎捻転を伴ったことにより発見された興味ある症例を経験したので報告する。

生後24時間にて手術に成功せる先天性廻腸閉鎖の1例について

著者: 織畑秀夫 ,   新井達太 ,   蛯名勝仁 ,   戸井田嘉子

ページ範囲:P.184 - P.190

緒言
 先天性廻腸閉鎖は甚だ稀な疾患であり,生後1〜2週間以内に手術しなければ予後は絶対に不良といわれている。斯様な疾患がわが国に於て生後24時間という早期に腸吻合による根治的手術に成功したことは新生児外科にとって甚だ意義あると共に,その功績の大半は斯様な機会をわれわれに与えられた産婦人科の力々の御賢察の賜であると考える。従つて先ず第1に産婦人科医の方々に感謝の意と共に御報せする義務があると考え,ここに御報告する次第である。
 欧米では1911年にFockensが最初に先天性小腸閉鎖の手術に成功して以来,各部位の先天性腸閉鎖の手術成功の総計は数百に達するものと思われ,欧米では余り珍しくない手術になっている。しかるに,日本では新生児で先天性腸閉塞或は腸閉鎖で手術を行つた報告は25例であり,この中腸吻合術に成功した例はわれわれの例を含めて僅か4例に過ぎず,誠になげかわしい状態である。

頸管妊娠の2例

著者: 岡村泰 ,   大塚輝善 ,   樋口潔 ,   村田房雄

ページ範囲:P.191 - P.194

緒言
 頚管妊娠は極めて稀な疾患であるが,診断および処置を誤ると,時に重篤なる状態にまで至ることが報告されている。中でも頚管部に着床し発育した,所謂,狭義の頚管妊娠は非常に少なく,現在までに報告されたものは本邦に於ては十数例に過ぎない。
 当教室に於てはさきに小坂,馬場ら18)により本症の1例を報告したが,最近さらに2例の組織学的に証明せる頚管妊娠を経験したので追加報告する。

臨床統計

乳汁分泌に関する2〜3の統計的観察

著者: 藤井久四郎 ,   鈴木一男 ,   鑓田進一 ,   寿田鳳輔 ,   畑中貢 ,   清水昭

ページ範囲:P.195 - P.200

まえがき
 先に著者ら(1953)は出産後における授乳期間,無月経期間及び妊娠成立期間の統計について報告し,生産後の不妊期間は授乳全期間とかなり高い順相関があり,月経再潮後といえども授乳期間の長い程不妊期間の長いことを見出した。然しながら一方には授乳中にも相当数のものが再妊娠しておるのも見逃せない。
 今回著者らは当教室における研究の一端として乳汁分泌について,これが分娩回数を重ねるにつれて如何に変化するか,また授乳中再妊娠した場合その乳汁分泌に果して影響を及ぼすや等を知るためにこれらに関連する事項と共に種々統計的考察を試みた。

診療メモ

開腹術時の一般事項に関するメモ

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.201 - P.205

1)手術前夜の睡眠を妨げない為に手術前日の午後3時にヒマシ油30gを与え,下痢が夜間までに終るようにし,軽く夕食を摂らせてから熟睡させる為に午後8時にラボナ2錠を投与する。以後は患者は便所に行く場合には,ふらふらして危険であるから附添人をつけるか,病室で用便する方が安全である。便器を使うことは練習しておかぬと術後に苦労するから慣れておくがよい,手術日は朝食を抜き番茶だけを摂らせ,午前9時から1時間当毎に3回浣腸し,術前2時間(正午)に前麻(カクテル麻酔等)の注射をする。手術は原則として午後にするので,午前中に体温,血圧,脈搏等の一般状態を診たり,必要ならば輸血,水分補給(5%ブドウ糖液とリンゲル氏液の等量混液)をする。強出血があつたものに輸血,点滴静注をすることはすぐ気付くが,既往の経過が比較的緩慢で,少量の出血が反復して次第に全身状態が悪化したもの,又悪液質が次第に増強したものでは,余剰体力が消耗している処に手術準備の為に下剤を与え,浣腸して水分を失うから,外見以上に蛋白質,水分の不足状態にあることを考えて補液しておくことが大切である。低蛋白状態,脱水状態はショック準備状態であるから,手術時のショックを防止するのに補液は極めて有効な処置である。

同人放談

子宮頸癌予防法の合理化に残された半面

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.207 - P.207

 子宮頚癌の予防法としての第1歩は,尚お肉眼的不可視で無症状の時代—組織的には前癌かまたは侵入前癌の状態—を診定した後に,第2歩として変化部位を合理的に切除することである。これは医師側の実施すべき半面であるが,無症状な変化を検診の対象とする関係からして,婦人の認識的受診または強制検診を必須とする半面がある。医師側の半面は最近となつてやつと合理化されたが,婦人側の半面が尚お残された問題である。
 そこでこれ等に関する現状の要点を述べて見る。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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