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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科13巻4号

1959年04月発行

雑誌目次

グラフ

Turner氏症候群の1例

著者: 坂倉啓夫 ,   鈴木穆

ページ範囲:P.295 - P.296

 症例は22才で原発無月経,短躯,乳房発育不全の主訴で当院を訪れた。
 現症はTurner氏症候群の主要徴候は殆んど完全に備えている。1)原発無月経,2)短躯,3)翼状頚,4)外反肘,5)Sex-chromatinは男性型,等の主要徴候は完全であり,開腹所見子宮は胎児性で三味線の撥様で両端よりマッチ棒大の卵管が延びている。卵巣は両側に認められたが右側はマッチ棒大で白色腱様光沢を呈していた。左側は小指頭大に腫大していた。組織所見は卵胞は全く認められなかつた。

臨床研究

内分泌疾患ⅩⅡ.—低エストロゲン性無月経について(Ⅱ)

著者: 唐沢陽介 ,   大石益光 ,   杉本毅 ,   星合久司

ページ範囲:P.297 - P.301

I.緒言
 内分泌臓器のうち,いずれか一つに機能失調が起ると,他の内分泌臓器にその影響が波及して,やがてはいくつかの臓器に,機能の異常を来すことは,最近の研究によつてあらゆる方面より確認されるに至つた。卵巣機能に一次性の異常があると推定されている低エストロゲン性無月経においても,種々の内分泌学的失調が可成り高頻度に併発することが既に一部学者により証明されており,これ等の知見を治療面に取り入れようとするものもある。
 著者等も月経異常患者に対し,種々内分泌学的検索を行つて来たが,低エストロゲン性無月経に関する知見を先に発表した(本誌13巻3号参照)。今回は,該疾患の際に甲状腺機能に見られる変化を検討したいと思う。これとは逆に甲状腺疾患(バセドー氏病その他)患者にSubclinicalな卵巣機能異常の潜在することが最近注目されており,卵巣機能と甲状腺機能とが緊密な関係を有することは疑う余地がない。そしてこの推定を裏書きするような事実は動物実験において又同時に臨床的にも良く知られており,研究業績の発表は数多い。しかし,その結果は必ずしも一致していない。尚研究の余地が大きく残されていることを物語つているのである。特に臨床的な実験成績には今后詳しい検討が必要だと思う。

新産児の生体反応について—第1篇 尿中尿酸クレアチニン比,カリウム・クレアチニン比について

著者: 庄司忠 ,   藤政志郎 ,   石津坂一

ページ範囲:P.303 - P.305

1.緒論
 母体内に於て甚だ安泰なる生活を保持していた胎児が一且分娩を終了し,外界に於て独立の生活を営むに当っては新産児は之等環境の変化に順応せんとして身体に一大変動を経過すべきことは明らかである。即ち分娩に際しては子宮収縮の圧と腹圧,所謂子宮間圧を受け,又骨盤通過時屈曲或は回旋運動を営むことにより産道の圧迫を豪る。次に外界に出ては肺呼吸の開始,啼泣,四肢躯幹の自動的運動,その他の種々急激な変化が一斉に起るのである。此の様な特殊状況下に在る新産児に就て尿中尿酸「クレアチニン」比,「カリウム」「クレアチニン」比の推移を知ることは,前記の如き諸変化が新産児に対し所謂「ストレス」として如何様に作用しているかを知る一助ともなるのではないかと考え,以下述べる様な実験を行つた。

実験的研究

性周期における恥骨結合離開

著者: 藤井久四郎 ,   田中晃 ,   田口又也

ページ範囲:P.307 - P.310

 妊娠時に於ける母体の変化のひとつとして,骨盤の関節は骨盤諸靱帯が弛緩することにより運動性を増し,分娩に有利な状態を準備することが知られている。Goldthwait & Osgood8)(1905)は婦人の骨盤弛緩が妊娠中のみならず,月経中にも軽度に生じた例を始めて報告した。Martius etal.19)(1952)は月経前に恥骨結合及び仙腸関節の運動性が増加すると述べ,Chamberlein2)(1930)は腰痛を訴える非妊婦にX線撮影により骨盤の弛緩を認め,恥骨結合弛緩は疼痛と共に発生し,疼痛が最も強くなるのは月経直前であると報告した。この様な骨盤変化の原因はホルモン作用に基づくと考えられ,3種類の卵巣ホルモン即ちEstro-gen, Progesterone及びRelaxinが挙げられて来た。Büscher & Kamieth1)(1956)は主として前立腺肥大患者20例にStilbestrolを投与し,その8例に恥骨結合の運動性を認めた。Eichner etal.3)(1956)はRelaxinを78人の婦人に投与し,その9人に離開を見出した。
 哺乳動物の多くの種類に於いて妊娠時の骨盤変化が観察されて居り,殊にモルモツトとマウスに就いては注意深い研究が行われて来た。

マウスの恥骨結合撮影法及び妊娠による恥骨結合離開の観察

著者: 藤井久四郎 ,   田中晃 ,   田口又也

ページ範囲:P.311 - P.318

緒言
 妊娠時に於ける母体の変化の一つとして,骨盤諸靱帯の弛緩することは古くより知られた事実であり,既にHippocratesの著書の中にも婦人に於ける分娩時の恥骨結合離開について言及して居る。婦人の恥骨結合のX線学的研究はかなり多数にのぼるが,本邦に於いても尾島12)(1938)は経腟的撮影法により非妊婦では平均3.26±0.04mmであるが,妊娠早期より離閉し始め略々其末期迄増大を続けて,妊娠前半期には平均4.31±0.11,後半期には5.29±0.10,末期の2ヵ月では5.65±0.13であると述べ,山田15)(1954)も同様の方法によつて非妊未産婦の恥骨結合最狭部の距離は2.56であるのに,妊娠10ヵ月には3.99に迄離開するのを観察した。恥骨結合が妊娠時に離開し,骨盤諸靱帯も弛緩することが,内分泌的に起る現象であるとすれば興味深い。
 このような骨盤の妊娠性変化の原因については,これまで妊娠時に増量するEstrogen及びProgesteroneなどの作用によるものと推定された。

薬剤の臨床

Emaform(乳化Quinoform)のCandida殺滅作用に関する実験的研究

著者: 谷村孝

ページ範囲:P.319 - P.321

1.緒言
 腟Candidaは産婦人科外来患者の17.6%,妊婦では21.4%に認められる1)。その総てが臨床症状を現すわけではないが,一部には外陰掻痒感,帯下の増加等の原因をなしている場合があり,腟Candida症の治療は産婦人科外来診療上の重要なテーマの一つとなつている。
 腟Candida症の治療には従来トリコマイシン2),醋酸フェール水銀2),マーゾニン2),逆性石鹸2),ナイスタチン3)等が用いられているが,何れもかなりの治療日数を要し,速効的な治療効果は期待出来ない現況である。

腹水を伴える女性性器癌に対するCarzinophilinの使用経験

著者: 藤井吉助 ,   武田重三 ,   張南薫 ,   松田英弌

ページ範囲:P.323 - P.327

まえがき
 手術不能の癌或いは手術後再発した癌,転移癌等に対しては放射線療法の他に近年新しい抗腫瘍性物質が登場しこれら癌の治療に新分野を拓きつっある。
 そのうちCarzinophilin (以下C.P.)は秦博士等1)がStreptomyces sahachiroiの培養炉液から精製した抗腫瘍性物質で,悪性腫瘍に有効である事が報告されている。われわれは本剤を腹水を高度に伴える女性性器癌に大量に使用し,好い結果を得た2例を報告する。

産婦人科尿路感染症のUROCYDAL治験例並びに診療上,2〜3の卑見

著者: 河辺昌伍 ,   景山正歩

ページ範囲:P.329 - P.332

I.まえがき
  婦人の泌尿器は局所解剖的並に機能的に性器と密接な関係があるために,婦人の尿路感染症患者は,しばしば産婦人科外来を訪れる。
 而して最近の尿路感染症患者の特長は,淋菌性及び結核性のものが少ないことである。即ち,戦前及び戦争直後に於ては,淋菌性のものが相当存在したが,最近は殆んど見られなくなった。又,昭和24〜25年頃迄は1年に数例の腎臓結核患者を発見し,腎剔手術を行ったが,これも最近は殆んど見られなくなった。このことは,婦人科だけでなく,泌尿器科でも同様とのことである。

ウロピリジンによる泌尿器疾患治験

著者: 池田太郎 ,   近藤高夫 ,   山口利郎

ページ範囲:P.333 - P.334

 著者等は最近関西電力病院並に大阪北市民病院に於て3-フェニールアゾ-2・6-ジアミノピリジン塩酸塩(「ウロピリジン」エーザイ)を使用した経験を簡単にまとめたい。
 本剤は尿路の鎮痛消炎作用をうたつているので,尿路の器質的病変が比較的軽度なるにかかわらず尿意頻数,灼熱感等の自覚症状が著しい患者に用いた。

Tristeroid hormone,Meprobamate混合剤の生物学的並びに臨床的検討

著者: 藤井久四郎 ,   橋口精範 ,   安藤晴弘 ,   小林修

ページ範囲:P.335 - P.342

1.はしがき
 estrogenを単独に比較的長期にわたつて使用するとき,黄体が存在しない場合はその作用が強くあらわれすぎて子宮及び乳腺に異常をおこすことがあるのは周知のことである。この副作用を除くために従来estrogenとandrogenとの混合投与が行われているが,更にgestagenを加える方がより生理的に近い組合せと考えられる。特に更年期様症状,月経困難症などに対しては,精神安定剤を併用すると更に効果的ではないかの想定の下に,これら3種のSteroidとMeprobamateを混合する研究をはじめた。
 私共はTristeroid homone, Meprobamate混合剤について生物学的作用並びに産婦人科領域に於ける応用を試みた結果を報告する。混合比率は表1に示した通りである。

手術・麻酔

高比重腰麻薬液を骨盤高位手術に使うことについての意見

著者: 森新太郎

ページ範囲:P.343 - P.345

緒言
 婦人科では多くは骨盤高位手術を行うため従来は低比重液((L)と略称)を使用するのが定石であった。即ち高比重液((S)と略称)を使用すれば薬液は脊髄液より直いから薬液は骨盤高位によりどんどん頭側に拡散し麻痺が上昇した結果血行虚脱や呼吸麻痺を起すかもしれない。
 然し(L)の使用では薬液は脊髄液より軽いから—但し臨床上の使用方法によれば(L)は必ずしも脊髄液に対し低比重性を示していない,むしろ等比重性を示している。—薬液は骨盤高位とした際頭側へは上昇しないだろうと云う漠然たる概念より骨盤高位手術即ら婦人手術では(L)使用が定石となったものと思う。

チオバルビツール酸系新静脈麻酔剤イナクチンの使用経験

著者: 光石堅 ,   林昭 ,   鈴木孝

ページ範囲:P.347 - P.349

緒言
 従来産婦人科領域に於ける短時間静脈麻酔剤の主なるものとしてHexobarbital, Amobarbi-tal,Pentothal Sodium, Thiamylal Sodium等があり,各々良好な成績が得られているが,尚時に一過性の呼吸停止や,舌根沈下等の副作用が見られる。1952年末,HamburgのPromonta社はチオバルビツール酸系の新静脈麻酔剤イナクチンを発表したが,本剤は上述のバルビツール酸誘導体に比し,本質的な長所を有する様に思われる。他の慣用されている薬剤でしばしば見られる副作用,例えば筋振顫,チアノーゼ,呼吸障害,他の麻酔剤への移行時に起る咳嗽刺激及び覚醒時の興奮はイナクチンでは現われないと言う。
 今回われわれはこの新しいThiobarbituratであるInactin即ちAethyl—(1 methyl-Propyl)—malomyl-thio-UreaのNa塩を入手する機会を得たので各種婦人科的手術患者に使用して見た。

人工妊娠中絶のEpirocaine麻酔について

著者: 斎藤達郎 ,   山口光哉

ページ範囲:P.351 - P.353

 人工妊娠中絶の麻酔法は古くより各腫の方法即ち,スコポラミン迷朦麻酔,静脈麻酔,吸入麻酔,腰麻.局所浸潤麻酔等があり各人の好みで行われている現状である。之の中で局所浸潤麻酔は方法が一定していないためか術者によつて効果が不安定であること,又静脈麻酔が患者に喜ばれる等の理由で案外行われていない。勿論静脈麻酔は優れているが時に呼吸困難等の不測の事故もあり無意識に動き,手術が困難になることも時にあるので完全とは云い難い。最近東京逓信病院の安井博士は2%Epirocaineを使用して子宮頚部前后側に注入して無害安全に効果よく内容除去を行い得ることを報告され且之の使用をすゝめておられる。吾々も数年来1%〜0.5%Novocaineを以て局所浸潤麻酔を行い可なりの効果を得ているので従来のNovocaine麻酔と2%Epirocaine及び1%Epirocaine麻酔とを比較観察して見た。
 さて局所麻酔(浸潤及び伝達)法の原則は1)薬液を血管内に刺入せぬこと。2)反応—即ち軽くは精神興奮,筋のけいれんから重くは全身けいれん,虚脱感,所謂ショック症状等に注意をする要があること。3)毒性は濃度薬量に比例すること等を知る必要があり従つて注射手技についても薬剤についても自ら研究されねばならない。EpirocaineはNovocaineに比して麻酔の発現は早く持続も長いと云う。毒性も少いので安全性が大であると云う。従つて上の目的に合致する薬剤と云える。

症例報告

羊水過多及び臍帯真結節を伴つた先天性魚鱗癬様紅皮症の1例

著者: 古田周行 ,   柳井明

ページ範囲:P.354 - P.358

I.緒言
 先天性魚鱗癬様紅皮症は極めて稀とされて居り,しかもその殆んどが皮膚科領域での報告である。即ち,死産或は生後間もなく死亡するものも多いためと思われるが,これには血族結婚が濃厚である点からもわれわれ産婦人科医にとつて非常に興味深いものと云える。
 最近,われわれは羊水過多及び臍帯真結節を伴った先天性魚鱗癬様紅皮症の1例を経験したのでその臨床及び病理所見るで報告する。

臍帯過度捻転の1例

著者: 杉山英夫 ,   安部徹良 ,   白岩志郎

ページ範囲:P.359 - P.364

緒言
 Beardは,臍帯の捻転は左程重要ではないが自然界の謎の中の興味ある問題である,と述べているが,捻転も過度になると子宮内胎児死亡の一因となり得る事が1838年d'Outrebontに依り既に報告されている。本邦でも1917年に菅野が浸軟児にみられた病的捻転を発表して以来凡そ30数例の報告が散見されるが比較的稀なものである。われわれも臍帯の過度捻転に依ると思われる胎児死亡の1例を経験したので茲に報告し,同時に文献的考察を加えたいと思う。

臍帯過度捻転による子宮内胎児死亡

著者: 田中正巳

ページ範囲:P.365 - P.369

緒言
 子宮内胎児死亡は,種々な原因による症例が報告されているが,その原因中比較的まれなものとして,臍帯の過度捻転があげられる。本症については,1838年D'Outrepontの報告に始まるとされ,本邦においても菅野1)の報告以来諸家2)−21)の報告をみる。著者も臍帯過度捻転が,胎児の死因となつたと推定される1例を経験したので報告し,あわせて本邦文献についての考察をもおこなつた。

未分化胚細胞腫の1例

著者: 笠島欣一

ページ範囲:P.371 - P.372

緒言
 本腫瘍は過去の文献に於ては本態が不明なためgrosszelliges Rundzellenkarzinom, alveolä—res Sarcom, Embryonal karzinom等種々の名称で報告されたが1930年Rebert Meyerに依り,性的分化を遂げない性器腺細胞から発生した胚細胞腫の一種なる事が明らかとなり,Disger—minom未分化胚細胞腫と命名せられた。顆粒膜細胞腫,男化胚細胞腫及びBrenner腫瘍と共に充実性卵巣腫瘍中特異の地位を占めるものである。本腫瘍は茲大秋山の調査によれば全卵巣腫瘍の1.8〜0.4%を占めるとされ,比較的稀とされている。最近その1例を経験したのでここに報告する。

反覆発生した高度の妊娠嗄声の1例

著者: 宮原昌彦 ,   木下干城

ページ範囲:P.373 - P.374

 妊娠時に高度の嗄声ひいては失声状態となり,分娩終了或いは人工妊娠中絶によつて,これが治癒する事は時折報告されているが,最近われわれも人工妊娠中絶によつて治癒した高度の妊娠嗄声の1例を経験したので報告する。

診療メモ

手術困難な骨盤内性器腫瘤に関するメモ

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.375 - P.380

 骨盤内性器腫瘤で手術困難なのは腫瘤が大きくて骨盤腔の大半を満たし,或は周囲と広く癒着して極めて狭い手術野しか得られぬ場合で,日頃骨盤内の深在病巣の手術に慣れている婦人科医としても,開腹した時に何処から手をつけようかと一瞬戸惑うことがある。斯る手術困難例として著者が経験したものの多くは,A.広靱帯(皺襞)内,所謂偽靱帯内,癒着性卵巣嚢腫,B.広く腸管と癒着した炎症性腫瘤形成(附属器溜膿腫等),C.子宮筋腫(癒着性,頚部等)である。斯る場合の手術法は腫瘤の種類,腫瘤四囲の状況によつて異なるから一概に手術の手順を規定することは出来ないが,いずれの場合でも一般の術前処置,検査の外に特に次の如くして予め局所所見を詳しく知ることに努め,手術法の選択に資すると共に手術時操作を安全且つ容易にすることが必要である。(1)再度問診してこれ迄の経過を詳しく知ること,(2)充分に排尿すると共に膀胱との関係をみる為に金属カテーテルで導尿する,(3)必ず直腸診をして精診する,(4)妊娠でなければ子宮消息子を入れて検査する,又必要に応じて子宮卵管造影術を行う,(5)尿管の骨盤内走行状況を知る為に前方及び側方からの尿管レ撮影をすることが望ましい。

同人放談

保存的処置のいろいろ

著者: 藤井久四郎

ページ範囲:P.381 - P.382

 医者の行う処置にはいろいろの種類があつてどうあるべきだということは一概には言えない。ただ歳のせいか,私は無理が出来ないためか,病人のよろこびを,日常診療のたのしみと心得るようになつた。病人が手術を受けたのち心理的にも劣等感をもち,生活のよろこびが損われるようになつたのでは気の毒であるし,医者としても面白くない。私は近頃経験した保存的手術のことを思い出してみることにしたい。勿論読者の諸賢には何の参考にもならない独り言である。
 1)はじめ妊娠したのが間質部卵管妊娠であつた若い婦人の場合:妊娠第3ヵ月に入つて喜んでいた婦人に突発する腹痛と貧血とが起つて子宮外妊娠を考えて開腹したが,右側の間質部妊娠であつた。普通ならば子宮を腟上部で切断するところであるが,うら若い婦人の将来を考えると,それを決行しかねた。そこで切除することを思い立つて,子宮の底部の右半部を注意して切除しはじめたが,卵胞が破れて胎児もとび出した。胎盤組織を残さないようにしたが,遂に子宮体腔に穿孔した。そこには厚い脱落膜があつたが,そのまま体腔を保存して縫合し,結局は胎嚢とともに子宮の右角を相当に広くとつた。しかし,左側の卵管から左側の体腔の大半は保存した。将来おそらく妊娠は出来ると思うが,その結果がどうなるか見守っている。かえつて禍のもとになるかどうか?

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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