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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科13巻5号

1959年05月発行

文献概要

症例報告

テールチステ

著者: 古川金次郎1

所属機関: 1千葉大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.447 - P.451

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I.緒言
 卵巣嚢腫の診断の下に開腹した際,その嚢腫内容が褐色流動性でテール様を呈しているのを見受けることがあり,これに対し一般にテールチステと呼んでいる。テールチステは卵巣エンドメトリオーゼと一般には同義のものとして取扱われている様であるが,テールチステという言葉は内容の性状を指すから臨床名であつて組織名ではない。このような内容をもつ卵巣腫瘍は卵巣エンドメトリオーゼは勿論,卵胞や黄体の血腫,卵巣嚢腫の茎捻転,損傷,更に悪性腫瘍の血管断裂等々に際しても見られる。従つてテールチステと呼ばれるものにはテール様内容を持つた卵巣出血血腫の殆んど大部分がこれに属するという極端な考えも出てくるのである。組織的にはSchillerがその発生には3種あり,即ち,(1)卵巣表面又は白膜中に発生したエンドメリオーゼ,(2)黄体嚢腫,(3)卵胞嚢腫(顆粒膜の黄体化後)等の出血に依るとしているが,他の卵巣腫瘍でも内に陳旧性出血があれば,類似像を呈しても差支えないと思われる。従つてテールチステ即ら卵巣エンドメトリオーゼとするのはその一部のみを表現したものである。今迄の報告で大差のある主なる原因はテールチステ及びエンドメトリオーゼの診断に於ける見解の差異によるものと思われる。余は最近2例のテール様内容を有し,組織学的に卵巣エンドメトリオーゼを思わしめる卵巣嚢腫手術例を経験したので多少の文献的考察を加えて茲に報告する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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