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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科13巻7号

1959年07月発行

雑誌目次

グラフ

ナイトロミン治療による子宮頸癌の組織学的変化

著者: 東京大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.553 - P.554

症例○幡○子57才1回経産
 臨床診断:子宮頚癌Ⅲ期(摘出標本第1図)
 子宮腟部は花采状著明に肥大し,髄様腫瘍組織の全周に亘る瀰漫性増殖があり,治療前の組織診断では,第2図及び第3図の如く,未熟型,多形性に富む,扁平上皮癌である。

臨床研究

内分泌疾患 ⅩⅤ—代償性月経について

著者: 唐沢陽介 ,   小泉博 ,   星合久司 ,   前田敏雄

ページ範囲:P.555 - P.559

Ⅰ.緒言
 月経と密接な関連を有し,性器以外の部位より周期的に起る出血,即ち周期的性器外出血(pe-riodische Extragenitale Blutung)は次の二つに分けられる。即ち, 1) 補助月経(Supplementäre Menses):過少又は稀発月経が存在し,それ以外に他の器官からも出血するもの。 2)代償月経(Vikarierende Menses):月経を見ずして,性器外からのみ出血が起るもの。
 この分類はChrobak.Rosthornの提唱以来周矢1の事実である。その際他の器官に器質的疾患がある場合は勿論除外されなければならない。両者の中では補助月経の方がより多く見られ,真の代償月経は可成り稀なものである。両者の混合した型も叉存在することは当然考えられることである。

流早産と血液型不適合妊娠

著者: 藤井久四郎 ,   斉藤幹 ,   一宮勝也 ,   西望 ,   鈴木一男 ,   池沢新一 ,   清水清美 ,   須賀田邦彦

ページ範囲:P.561 - P.563

Ⅰ.はしがき
 日常外来で2回以上,自然流早産を繰返す患者に遭遇する。その治療はその原因を明らかにすることが根本問題であるが,容易な業ではない。
 近年,内分泌学の発展と共に習慣性流早産の原因も追及されているが,ホルモン治療もまだ特に進歩したとはいえない。

機能性月経痛症に対するAndrogen-Progesterone混合剤療法について

著者: 藤井久四郎 ,   橋口精範

ページ範囲:P.565 - P.568

Ⅰ.まえがき
 機能性月経痛症とよばれるものは,本態がはっきりとしておらないためにいろいろな療法がこゝうみられている。
 月経発来には性ホルモンが関与しているために性ホルモン剤が新しく登場するたびにそれによる療法がこゝろみられている。

実験の研究

実験的にみた下垂体前葉の性腺刺戟能力と授乳との関連

著者: 藤井久四郎 ,   鑓田進一 ,   征矢嘉行 ,   畑中貢 ,   熊坂高弘 ,   平野俊雄 ,   寺門運雄

ページ範囲:P.569 - P.574

Ⅰ.緒言
 ラッテにおいては分娩後,間もなく排卵が起つて卵巣には黄体が形成されるが,これは通常の性周期の場合とは異り妊娠時に似て発達し,授乳期間中存続して大凡3〜5週間は発情が現われない。これは授乳黄体と呼ばれているが,発情の止まるのはこの授乳黄体のためと考えられておる。ラッテの黄体の機能を賦活し維持するのはpro-lactinであることがEvans, Simpson&Lyons(1941),Astwood(1941)によつて明らかにされ,又乳頭に加えられる哺乳刺戟が中枢性に下垂体前葉へ作用してprolactinの分泌を促すものと推定されている(Selye, Collip & Thomson1934)。
 然し哺乳刺戟が直接に中枢性に下垂体前葉の性腺刺戟能に抑制的に影響を及ぼしそのために授乳中発情周期が抑制される可能性も十分にある。何故ならば授乳期黄体はすべての哺乳類に存在しないからである。

PrimogonylのAnti-Hormoneの実験的研究

著者: 一宮勝也

ページ範囲:P.575 - P.577

Ⅰ.はしがき
 近時,ホルモン剤の普及は全く目ざましいものであるが,蛋白性ホルモンの製剤は,殆んどが臓器製剤であるために,これを大量,長期に使用すると,Anti-hormoneの発生をみて,同剤の効果は無に等しくなる。Anti-hormoneの一つであるAnti-Gonadotropinについては古くから多くの研究報告がなされて来て,近年では,これが異種蛋白による免疫抗体であることが,ほゞ確定している。このAnti-hormoneには抗原性としてホルモン特異性,種属特異性,臓器特異性及び抽出による蛋白変性の為の特異性があると云われて居り,製剤は純度の高いことが要求されるのは当然であろう。このAnti-hormoneの発生を防ぐ為には,製品の純度が高いことのみならず,使用方法,使用量を検討することが必要である。
 私は妊婦尿より抽出した絨毛性GonadotropinであるPrimogonyl (Schering)を用いてAnti—hormoneの追及を試み,こゝに報告する。

薬剤の研究

膀胱炎に対するUrocydalの効果

著者: 山本嘉三郎 ,   小玉敬彦

ページ範囲:P.579 - P.582

Ⅰ.緒言
 近来種々の抗生物質が発見され各種感染症に汎く使用されて顕著な効果をあげているが,サルファ剤の研究も又盛んで最近著しい進歩をみた。特に大腸菌,ブドウ状球菌を主なる起炎菌とする尿路感染症の治療にとつては現在不可欠なものとなつている。
 最近新しいサルファ剤Sulfamethylthiadia-zole〔Urocydalエーザイ製薬〕を産婦人科疾患に合併せる尿路感染症に使用する機会を得て菌株分離及びその感受性試験,臨床効果について実験したので報告する。

自律神経症候群に対するP.H.P.(Castan.D)の治療効果について

著者: 野村秀夫

ページ範囲:P.582 - P.586

Ⅰ.緒言
 婦人自律神経症殊に更年期障害は卵巣の年令的変化によつて起る生体の老化現象を基とした一連の自律神経症候群で古くからその本態がいろいろ説かれているがその発生機序に就いては現在尚必ずしも意見の一致を見ていない。而し乍ら内分泌の不均衡による自律神経中枢即ち間脳,下垂体が重視され中でも卵巣,性腺刺戟ホルモンが重要な役割を演じている事は1929年Zondekに依り報告されて以来現在も疑いない事実であり従来下垂体gonadotropinの過剰産生が本症の発生機点であると云うAlbright, Engelhart等の説に基づき下垂体gonadotropinの産生抑制としてestrogenが使用されているがestrogenの性器への作用特に子宮内膜増殖作用は強力で多くの消褪性出血を惹起しestrogen過剰期には不適であり癌素質のものに対しては子宮体癌の促進の恐れがあり又乳腺に働き乳癌前症を起し易いと云われている。かかる不快な作用がなく又は性器への作用が有るとしても極めて弱くしかも徐々に作用し更に下垂体抑制作用の強いものが本症に最も適したものであると云い得る。

チオクタン顆粒による妊娠悪阻の治療成績

著者: 浦田恵三 ,   川合康博 ,   神谷順 ,   飯島宏 ,   大平富代

ページ範囲:P.589 - P.591

Ⅰ.緒言
 妊娠悪阻は初期妊娠中毒症と見做されているが,その成因に就いては未だ定説というべきものの確立を見ていない。然し乍ら,今日では概ね,母体自身の妊娠に対する順応機能の不全に帰せられて居る様であり,就中複雑な代謝機能障害を有することは周知の所である。従つて,本症治療の一方策として代謝機能障害の改善を計る事も意義なしとしない。
 Thioctic Acid (別名α-Lipoic acid)は1951年にL.J.Reed1)によつて肝臓及び酵母から発見された最も新しいビタミンB群に属する物質で,その特性はα-ケト酸の酸化的脱炭酸反応に於いて補酵素として働くという。即ちThioctic Acidは生体内糖質代謝に於いて,解糖系より導かれる焦性ブドー酸をアセチル-CoAとして,TCA—サイクルへの繰入れを行うと共に,同サイクルのα-ケトグルタール酸よりコハク酸への移行をも触媒して,代謝系の円滑な回転によるエネルギーの産生に与る(I.C.Gunsalus2),1954)と云われ,同時に活性SH—化合物として強力な解毒作用をも現わす(L.Donatelli3)1955)という。それ故以上の如く生体内物質代謝に多少とも障害を有すると考えられる妊娠悪阻の治療に本剤の使用は好個のものと云えよう。

「トリコサミン」経口並びに局所併用療法による「トリコモナス」腟炎の治療成績

著者: 飯田茂樹 ,   梅林昌彦

ページ範囲:P.593 - P.595

Ⅰ.緒言
 Donneによつて発見された腟「トリコモナス」は其の後Hoehneによつて腟炎の原因となることが提唱され,更に最近では腟のみでなく,頚管,子宮腔,膀胱内に,男性では陰茎包皮嚢,尿道,精嚢,前立腺内にも寄生することが発見された。従って「トリコモナス」腟炎の治療に当つては従来の局所療法のみでは効果が少く,内服による全身療法と,夫婦間に於いては夫の治療が要求されるに至り,遂に本邦では1952年細谷により発見された「トリコマイシン」がこの目的に合致した薬剤として発表され,相当の治療効果をあげるに至つた。われわれは今回新しく名糖薬品株式会社より,内服も可能な「トリコモナス」治療剤として試作された「トリコサミン」の提供をうけ試用したところ,「トリコマイシン」による治療成績に比肩し得る良成績を得たので茲に報告する,尚「トリコサミン」の化学構造は2—Acethylamino−5—Nitrothiazolであり,欧米ではAminitrozol又はTritheonの名称で既に臨床に使用されているものである。

トリコモナス腟炎に対するトリオン錠の使用経験

著者: 梅内正利 ,   藤井明和 ,   遠藤徹 ,   渡辺猛 ,   松井一郎

ページ範囲:P.597 - P.599

Ⅰ.緒言
 Donnéは1836年婦人腟内にトリコモナス原虫が棲息して居る事を報告し,一般にもこの事は承認されたが,この病源性については1916年Höhneが所謂Trichomonas vaginitis puruleutaなる腟炎として指摘されたのに始まる。それ以来国外,国内を問わず種々な研究,報告が続々と発表された。又その治療も千差万別で各腫の治療法が行われる様になつた。これを逆に見ると非常に治癒しにくい事を意味して居り,又屡々再発,再感染があり,今日迄決定的な治療は未だ発表されて居らない様である。特に近年は抗生物質製剤の進歩に伴い,一応の効果は期待出来る様にはなつたが,又虫体の抵抗力を増加させる事ともなつた。さらに現在では腟に棲息するトリコモナスのみを対象とした治療では膀胱,前立腺,尿道,子宮頚管部等に存するトリコモナスを絶滅する事は出来ず,再発を防ぐ為にも,単に局所療法のみでは無く全身療法が望まれて居た。その為われわれは全身療法剤としてアミニトロゾール(トリオン錠,中外製薬)を33年10月より12月迄使用し次の成績を得たので報告する。トリオンは次の如き構造式を有する。

子宮腟部糜爛のMetallo-Chlorophyllinによる治療経験(第2報)

著者: 一宮勝也 ,   山村恵次 ,   稲田裕 ,   池沢新一 ,   清水清美 ,   潤田嘉朗 ,   平川浩一 ,   須賀田邦彦

ページ範囲:P.600 - P.602

Ⅰ.まえがき
 われわれは,第1報に於いて,鉄-Chloroph-yllinを子宮腟部糜爛の局所に皮内注射を施行して,みるべき効果を得て,これを報告した(1958)。
 Chlorophyllinに強い新生肉芽の発来作用のあることは,以前から認められていることであるが,鉄-Chlorophyllinに限らず,他の金属の置換体によつても同様な作用があるものと考えられる。

手術・手技・麻酔

Western Reserve Portable麻酔器によるCyclopropane吸入麻酔の産婦人科領域への応用

著者: 名取光博 ,   柳田昌彦 ,   吉川千寿郎 ,   大川昭二

ページ範囲:P.603 - P.609

Ⅰ.緒言
 Freundにより合成されたCyclopropaneが,Lucas & Henderson1)により麻酔剤として使用され,Waters教授2)らの研究以来20数年を経た今日においても,笑気やエーテルなどと並んで,依然主要吸入麻酔剤としての優秀性が認められている。このCyclopropaneのすぐれた点はPo—tencyが極めて強いので,酸素を充分に投与することができることである。従つて麻酸への導入や,殊に小児麻酔,出血性ショック時の麻酔などには,極めて有効,且つ安全な麻酔剤であり,従つて分娩や帝切の産科麻酔に賞用される理由である。しかし本剤は一面において呼吸抑制,或いは循環器系に影響するので,習熟した麻酔手技を必要とし,またエーテルと同じく爆発性を有するから,使用上ある程度の制約を受ける。この爆発による危険性を除外するためHeliumを混じ,或いはconductive floorにすることなどが必要となる。このような欠点を補うためHingson3)4)5)(1954)はHeliumとCyclopropane,および酸素を一定の割合に混じて小型のシリンダーにパッキングし,これを自ら考案したTo and Fro型式の麻酔器に用いて,小児麻酔への導入,外科小手術時の麻酔などに応用し,極めて好成績を得ている。

症例報告

妊娠5ヵ月末まで発育せる頸管妊娠の1例

著者: 西山恒雄 ,   高木実

ページ範囲:P.611 - P.612

Ⅰ.はじめに
 頚管妊娠については,本邦に於いて現在まで十余例の報告があるのに過ぎず,稀な疾患とされているが,余等も妊娠中期まで発育せる頚管妊娠の1例を経験したので報告する。

卵巣腫瘍と誤認せる膀胱線維腫の1例

著者: 佐藤弘 ,   筑井正之 ,   猶原一郎

ページ範囲:P.613 - P.615

Ⅰ.緒言
 最近われわれは,文献上稀有とされている比較的純粋な膀胱線維腫で,而かも術前卵巣腫瘍と誤認した1例を経験したので茲に報告し,いささか考察してみたいと思う。

先天性限局性頭蓋欠損症の1例

著者: 一宮勝也 ,   清水清美 ,   須賀田邦彦

ページ範囲:P.617 - P.618

Ⅰ.はしがき
 われわれは奇形児の分娩に遭遇することが稀にあるが,高度の奇形児を有するものは,母体内で死亡していたり生後数分から1週以内に多く死亡する。生命に影響のない奇形では兎唇や多趾症などが比較的多い。これらの奇形は遺伝的な関係をもつものに多くみられるのは当然のことであるが,最近では母体が妊娠の極く初期にVirus性疾患に罹患したり,放射能を受けたり,またCo-rtisoneなどのHormoneを多量に投与されたりすると,児に奇形を発生しやすいことが判明してきた。
 われわれは妊娠第3週の始め(妊娠直後)より寒冷蕁麻疹及び外陰部掻痒症で治療した婦人の第一子に,頭蓋の先天性限局性欠損を経験したので報告する。

新生児上皮真珠の1例

著者: 藤井久四郎 ,   岡本良平 ,   緒方健次郎 ,   山下浩 ,   大森郁郎

ページ範囲:P.619 - P.620

Ⅰ.緒言
 上顎左右両側の歯肉部に粟粒大から小真珠大の上皮真珠を10数個有する女性新生児の1例を経験したので報告する。

高度の内臓脱出症を呈した臍帯ヘルニア児の1例

著者: 禰寝重隆 ,   北村進司 ,   近藤哲

ページ範囲:P.620 - P.622

Ⅰ.緒言
 最近われわれは,内臓脱出症を吊した高度の臍帯ヘルニア児の分娩を経験したので,こゝに報告する。

外国文献

Dekapitation nach dem Wennersehen Verfahren(Wenner法による断頭術)/Seasonal Variation in Complication of Pregnancy

ページ範囲:P.615 - P.615

 元来の断頭術は,胎児頚部への到達困難,術者の視野外での操作,特殊器械の使用という欠点があつたが,Wenner (1946)は,この欠点を除く新法を発表した。
 この方法は,胎児の両上肢を脱出させ紐で結び助手に牽引させ,胎位をdorso-inferiorとしDuboi又はSchieboldの剪刀で頚部を切断するのである。この方法は,胎児頚部へ到達容易で,又術者の視野中にあり,他の部分を切断する危険もなく容易に行い得るが,一方危険で熟練を要する剪刀を使用するので,著者はこの点を改良した。その方法は,楽器のギター線(6番)を,Blond氏指帽を利用する場合と同様の操作で胎児頚部にめぐらし上下に動かして切断するのである。著者は,胎児の頚部にギター線をめぐらす場合,ギター線の両端に輪を作り,一方の輪のすぐ下を拇指先端掌側に絆創膏で固定,子宮内に挿入し他側の示指又は中指先端にこの輪を引掛け導き出し,両端の輪を各々の示指に掛け,交互に上下に動かす操作を行うのである。又Doyenの腟鏡を使用すると,視野を拡大,母体軟部組織を損傷することなく遂行出来る利点がある。ギター線を利用した場合,胎児の切断面は,平滑規則的で剪刀を使用した場合の如く,切断面の不規則や,骨粉砕は起らない。

診療メモ

人工妊娠中絶術及び子宮内膜掻爬術に関するメモ

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.623 - P.628

 人工妊娠中絶術並びに子宮内膜掻爬術は産婦人利医にとつては極めてありふれた手術で慣れているが,数多い中には相当苦労するものがある。殊に妊娠5〜7ヵ月の中期の中絶術は従来困難なものとされており,屡々専門誌にその臨床経験が報告されている。終戦後間もなく紹介されたアブレル氏法が,妊娠中期の中絶に著効があるとして当初大きな期待をかけたが,その後母体の死亡例が報告されて危険なことが判り,今日では実地医界から全く抹殺された。現今,妊娠中期の中絶法として最も広く実用されている方法の1つは卵膜外注入法であろう。これは著者が昭和24年6月,群馬大学在職当時に妊娠5ヵ月例に生理食塩水100mlをゴム・カテーテルで卵膜外に注入して,7時間25分で流産させることに成功し,昭和25年3月にその成績を発表(臨床婦産,4巻3号並びに医学通信,5年202及び203号)して以来,種々の工夫が加えられて次第に広く行われるようになつた。著者は妊娠に浮腫等の腎障碍の症状があるか,またその既往症があればブドウ糖液を注入するが,それ以外では主として生理食塩水を用い,他の陣痛催起法を併用している。カテーテルは内子宮口の大さに適した太さのもので,挿入時に内子宮口で軽い抵抗を感ずるものでないと,注水直後乃至間もなく漏水することがある。

米欧視察覚え書(Ⅱ)

著者: 水野潤二

ページ範囲:P.629 - P.640

Ⅱ.米国
 カナダを去つて再び米国に入り,いわば米国における東海道筋とも言うべき東部各地を1ヵ月半に渉つて遍歴した。300年に渉るこの国建国以来の歴史に連る,ニューイングランドといわれるこの地域には,米国の歴史と共に現代文化を知り且つ味わしめる多くのものがあつた。
ボストン(2/VⅡ−7/Ⅶ)

同人放談

明日への期待

著者: 赤須文男

ページ範囲:P.641 - P.641

 先日学会で上京し,数冊の洋書を求めて来たが,外人の著書をよむ度毎に,矢張り外国人は頭が良いと感心させられる。1つの実験データを基盤にして連想を働かせ,推理を動かして1つの仮説めいたものをつくる。それがやがて実験的に証明されていく。とにかく,追試でなくて新生が多いのは否めない。
 先日,ある会で,研究を欧文で発表しなくてはいけないと誰かが言ったら,小林教授は「そんなことはないですよ,Originalityの問題ですよ,よいオリジナルなものなら,先方が欧文に飜訳しますよ」と語つた。私が云いたいと思つていたこと,何処かへ書いたことがあるような気のすることを氏は云ったが,まことにその通りである。自然科学に於ける独創的なものは,単なる思いつきや,推察では出来ないもので,長年に亘る経験,概博な知識,自然現象に対する洞察といつたものから産れるものであつて——勿論例外もあるが——これが芸術的なものとの大きな異いではないかと思う。ストレプトマイシンの発見,ペーパークロマトグラフィーの案出など,結果からみれば何でもないことであるけれどもこのOriginalな活性はまことに高く評価されてもよいと思う。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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