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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科13巻7号

1959年07月発行

文献概要

薬剤の研究

チオクタン顆粒による妊娠悪阻の治療成績

著者: 浦田恵三1 川合康博1 神谷順1 飯島宏1 大平富代1

所属機関: 1大阪厚生年金病院産婦人科

ページ範囲:P.589 - P.591

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Ⅰ.緒言
 妊娠悪阻は初期妊娠中毒症と見做されているが,その成因に就いては未だ定説というべきものの確立を見ていない。然し乍ら,今日では概ね,母体自身の妊娠に対する順応機能の不全に帰せられて居る様であり,就中複雑な代謝機能障害を有することは周知の所である。従つて,本症治療の一方策として代謝機能障害の改善を計る事も意義なしとしない。
 Thioctic Acid (別名α-Lipoic acid)は1951年にL.J.Reed1)によつて肝臓及び酵母から発見された最も新しいビタミンB群に属する物質で,その特性はα-ケト酸の酸化的脱炭酸反応に於いて補酵素として働くという。即ちThioctic Acidは生体内糖質代謝に於いて,解糖系より導かれる焦性ブドー酸をアセチル-CoAとして,TCA—サイクルへの繰入れを行うと共に,同サイクルのα-ケトグルタール酸よりコハク酸への移行をも触媒して,代謝系の円滑な回転によるエネルギーの産生に与る(I.C.Gunsalus2),1954)と云われ,同時に活性SH—化合物として強力な解毒作用をも現わす(L.Donatelli3)1955)という。それ故以上の如く生体内物質代謝に多少とも障害を有すると考えられる妊娠悪阻の治療に本剤の使用は好個のものと云えよう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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