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臨床研究
基礎体温による機能性子宮出血の鑑別診断
著者: 出口奎示1
所属機関: 1東京大学医学部産科婦人科学教室
ページ範囲:P.657 - P.664
文献購入ページに移動Ⅰ.緒言
外来臨床的に診断された機能性子宮出血患者に内膜診査掻爬を行つてみると,流産や子宮内膜炎の如き誤診疾患が意外に多く見出され,その誤診率も20%以上に及ぶ事実は改めて考慮さるべき問題と思われる。元来触診という不確実な手段を以つて子宮体内や付属器等に存在する小器質性変化を確認することは多くの場合不可能であり,一応機能性子宮出血或いはその疑診として治療を開始することはわれわれの日常よく経験するところである。本症の最も有力な診断法であり且つ治療法でもある子宮内膜全掻爬術を行い,組織学的所見に異常が認められなくても後日誤診と判明することも決して稀ではない。内膜の診査掻爬にしても我が国の現状では限られた病院に於いてのみ許された方法で,出血を訴える患者を目前にした医師は取り敢えずホルモン療法等によって止血を計らなければならない。一方本症患者は必ずしも出血時に医治を乞わないので,この種の患者には無処置のまま基礎体温(B.B.T.)などにより或る程度の観察期間を持ち得るが,治療開始後或いは単なる経過の観察中にも初期診断の正否を認識し得る何らかの方法があれば,その間に適切な治療法の転換乃至方針の確立が可能になり,その実利も大なることが期待される。
外来臨床的に診断された機能性子宮出血患者に内膜診査掻爬を行つてみると,流産や子宮内膜炎の如き誤診疾患が意外に多く見出され,その誤診率も20%以上に及ぶ事実は改めて考慮さるべき問題と思われる。元来触診という不確実な手段を以つて子宮体内や付属器等に存在する小器質性変化を確認することは多くの場合不可能であり,一応機能性子宮出血或いはその疑診として治療を開始することはわれわれの日常よく経験するところである。本症の最も有力な診断法であり且つ治療法でもある子宮内膜全掻爬術を行い,組織学的所見に異常が認められなくても後日誤診と判明することも決して稀ではない。内膜の診査掻爬にしても我が国の現状では限られた病院に於いてのみ許された方法で,出血を訴える患者を目前にした医師は取り敢えずホルモン療法等によって止血を計らなければならない。一方本症患者は必ずしも出血時に医治を乞わないので,この種の患者には無処置のまま基礎体温(B.B.T.)などにより或る程度の観察期間を持ち得るが,治療開始後或いは単なる経過の観察中にも初期診断の正否を認識し得る何らかの方法があれば,その間に適切な治療法の転換乃至方針の確立が可能になり,その実利も大なることが期待される。
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