文献詳細
診療メモ
文献概要
子宮の生理的位置は成書にある如く浮游性前傾前屈である。即ち直腸膀胱等の子宮周囲臓器の状況,腹腔内圧の増減,体位(子宮自体の重さの影響の差)等により,生理的に相当広範囲に変位するが,これらの諸動機が消失するとともに前傾前屈に復す。従つて実地に於ては斯る子宮を変位させる動機を少なくし,少なくとも必ず診察直前に排尿させ,且つ下腹部膨満の状態並びに内診時の体位を参酌して,病的変位であることを確診することが先ず必要である。子宮の位置異常には色々の種類があるが,その中最も屡々日常診療の対象になるのは後傾(後屈)と下垂乃至脱(直腸,膀胱脱を随伴する)である。
外来診察で子宮が後傾しており,しかもそれに因ると思われる何等の自覚症を訴えていないことが屡々ある。この中には上記の如き諸動機によるものもあろうから,数日おきに反復診察して持続性の病的後傾でないことを確める。反復診察の結果たとえ後傾が病的で,所謂子宮後傾症であることが判つても,それによる特別の苦痛を訴えていない場合には,後傾が移動性であれば勿論,癒着性であつても強いて直ちに処置する必要はないし,又患者の納得も得難い。従つて実際上,治療の対象になるのは自覚症状の伴う後傾症に限られる。この場合には内診だけでなく必ず直腸診をも行つて,仙骨子宮靱帯及びそれに続く索状抵抗を充分に触れてみることが必要である。
外来診察で子宮が後傾しており,しかもそれに因ると思われる何等の自覚症を訴えていないことが屡々ある。この中には上記の如き諸動機によるものもあろうから,数日おきに反復診察して持続性の病的後傾でないことを確める。反復診察の結果たとえ後傾が病的で,所謂子宮後傾症であることが判つても,それによる特別の苦痛を訴えていない場合には,後傾が移動性であれば勿論,癒着性であつても強いて直ちに処置する必要はないし,又患者の納得も得難い。従つて実際上,治療の対象になるのは自覚症状の伴う後傾症に限られる。この場合には内診だけでなく必ず直腸診をも行つて,仙骨子宮靱帯及びそれに続く索状抵抗を充分に触れてみることが必要である。
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