icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科14巻4号

1960年04月発行

雑誌目次

グラフ

卵巣妊娠

著者: 東京大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.331 - P.332

1)既往及び現病歴
 38歳。1回産。月経は順調で26日型。22歳で結婚,23歳の時1児を出産した。その他,既往に特記すべきことなく今回の疾患に至る。最終月経昨年11月17日より4日間,12月初旬に悪阻症状あり。12月17日某医に妊娠と診断され,子宮内容除去術を受けた。
 12月27日突然下腹部に激痛が起き,其の後下腹部の鈍痛と重圧感が持続していたが,本年1月25日に再び激しい下腹部痛が生じた。この間性器出血は全く認められなかつたが,2月14日に3度下腹部に激痛が起き,同時に性器出血が少量見られた。2月17日当科を受診。内診によりダグラス氏窩に圧痛性超手拳大の腫瘤を触知し,穿刺により暗赤色非凝固性の血液を得た。以上により子宮外妊娠と診断し開腹手術を行つた。

綜説

アメリカに於ける産科麻酔の近況について

著者: 池園悦太郎

ページ範囲:P.333 - P.335

 アメリカに於いても,Read氏法による無痛分娩が,極く一部の人によつて行われてはいるが,大部分の分娩は,近代的麻酔の援助のもとに行われている。理想的な産科麻酔剤としては,陣痛を軽減もしくは除去すること,胎児の呼吸もしくは循環系を抑圧しないこと,子宮の収縮を弱めて分娩を長びかせないこと,母親及び胎児にとつて安全であること,を目的としなければならない。残念なことには,現在理想的麻酔剤はないので,出来るだけこれに近いものを単独に,或いは併用して,産科麻酔を行つている。
 産科麻酔中もつとも注意すべきことを列記すれば,
 1. Aspiration:産婦は屡々入院前に食事をして来ることが多いし,陣痛がはじまると,胃内容物の排出が遅くなり,その上浅い麻酔は嘔吐を起し易いので,麻酔開始前少くとも6時間は,飲食させないことが大切である。もし疑わしい場合は,出来るだけ大きい胃管を入れて,胃内容物の排出を麻酔前に行つている。

臨床研究

Estrogen・gestagen混合内服剤による計画的予定月経日変更に関する研究

著者: 藤井久四郎 ,   橋口精範 ,   一宮勝也 ,   上野福寿 ,   新田武 ,   田島博明

ページ範囲:P.337 - P.344

 Schröder (1915)は卵巣と子宮内膜との周期性変化が因果関係をもつて起ることを明らかにした。氏は排卵を伴わない子宮出血は月経ではないと考えた。その後無排卵性の月経周期があることがわかつて月経の定義は広く解せられていることは周知の如くである。佐伯(1932)がサルに就て研究した如く,無排卵性の周期であればestrogenの注射や内服によつて出血の時期をcontrol出来ることは,既に日常容易に経験された処である。ただ排卵性周期の場合にはestrogenとproges—terone,またはprogesteroneのみを毎日注射しても予定月経をおくらせることは出来る場合もあるが一般には相当に困難である(Long & Brad—bury,1951;Bradbury,Long & Durham,1953;藤井(久),1956)。

人胎盤絨毛の等電点に関する研究—特に機能及び変性過程を中心として

著者: 長崎勖

ページ範囲:P.345 - P.354

Ⅰ.緒言
 細胞の幼若性ないし機能旺盛度及び変性過程を推定する一つの補助手段として細胞等電点の測定が採用されることがある。
 等電点の応用は1926年Pischinger1)によつて確立され,Zeiger2)(1930)等による同一方法を用いての追試でその価値が認められて以来多くの人々によりこの方法に基いて細胞の発育過程及び変性過程が種々の方面より検索された。

けいれん治療に伴う婦人性器出血

著者: 梶原和人 ,   出口奎示 ,   小山主公 ,   松岡栄一 ,   前川益夫 ,   小島真

ページ範囲:P.355 - P.358

 機能性子宮出血が,女性性機能の根幹をなすいわゆる間脳—下垂体—卵巣系の機能失調に関連して発生することは,周知の通りであるが,これら器官における機能的起原は,幾多の臨床,実験的研究から,間脳ことに視床下部に存在するものと考えられている。しかしながら,この想定も多くは,該部の刺激あるいは損傷による動物実験にもとづく知見に依存するもので,臨床的には,本症の中枢性機序を説明する知見に,はなはだ乏しいものがあるといえよう。その理由として考えられることは,今日われわれの使用している間脳機能検査法も,その精確さにおいては決して満足すべきものではなく,また視床下部の破壊は兎も角として,間脳部の刺激あるいは抑制を起す適確な方法が,見出されていないことなどがあげられる。正常月経周期婦人の頭部に超短波を照射すると,ときに中枢神経系の機能に変調をきたし月経異常の発現することが知られているが,著者等は,月経周期の順調な精神疾患患者に,精神科特殊治療の一つである頭部通電治療を,富永の耳介通電法,すなわち径7cmの電導子を両耳孔に圧着して通電し,てんかんけいれん発作をひきおこす方法により施行し,これにより,より多くの電気刺激が間脳部に与えられることを期待し,このばあいにあらわれる子宮出血の様態を検索して,これが中枢性機序を介して発現するものであるか否かを考察した。

骨盤位の取扱いについて

著者: 松本薫

ページ範囲:P.359 - P.362

 骨盤位に就いてとかく論議される所以のものは,その母体に対する影響に就いてはもとよりのことながら,分娩による児の死亡率の高いことに依るものと考えられる。従来の報告によれば児の死亡率は10%乃至40%の間にあるとされ,報告者によつて大幅な差異があることは注意しなければならない。即ちこの数字が,骨盤位分娩自体が児の生命に大きな危険をもたらすものであると同時に,分娩取扱者たる医師の技術の巧拙に影響されることの大きいことを裏書するものである。従つて死亡率に就いての集団的,修業時代的な教室からの統計は余り過信してはならない。各個人的の統計を基礎として,骨盤位妊娠乃至分娩取扱いに就いての確固たる方針を建てるべきであると思う。この意味で過去約4年間に於ける症例をあげて個人としての所信を述べるものである。

分娩後のThyroid storm症例について

著者: 石突吉持 ,   富田明夫 ,   河原光一 ,   鷲見敏 ,   中塚勉

ページ範囲:P.363 - P.368

Ⅰ.緒言
 瀰漫性中毒性甲状腺腫を有する患者が経過中に心悸亢進,頻脈,発熱等甲状腺中毒症状の急激な増悪を示し,遂には昏睡に陥入り死に至る重篤な状態はthyroid storm或いはcrisisと呼ばれている(Werner19))。
 1893年にMüller1)が始めて本症を記載したが,以来報告例は少なく,Means2)の著書には,2033例の甲状腺機能亢進症患者の中35例がcrisisをおこし,手術例1383例中では25例がstormを惹起したと述べてあり,更に甲状腺切除術後に見られるstormをsurgical storm,その他の原因によるものをmedical stormと名付けている。しかし沃度剤,抗甲状腺剤が甲状腺機能亢進症の治療に或いは甲状腺切除術の術前処置として使用されるに及んで益々本症の発現頻度は少くなり,現今では殆どが術後性バセドウ氏病反応として経験される様になつたが,甲状腺機能亢進症が女性に多い事から,甲状腺と妊娠分娩の関係も色々論議されており,産婦人科領域においても妊娠中絶術の際,或いは急速遂娩後にstormを経験したという3)2〜3の報告に接する。

帯下療法におけるアンドロゲンの適応

著者: 石川矩子 ,   川中子春江 ,   上野雅清 ,   板谷忠重

ページ範囲:P.369 - P.373

Ⅰ.まえがき
 帯下及び更年期障害は各々婦人科領域での主要な症状の一つである。その治療には,近来抗生物質,精神安定剤,ホルモン剤等の発達によつて種種な治療が行われている。帯下に対しては,その膣内容の性状によつて,抗黴性抗生物質,消毒剤,抗生物質等を主成分とした種々の薬剤が用いられ,また近来これらにエストロゲンを混合した膣錠なども用いられている。
 われわれは,アンドロゲンが頚管粘液および膣内容に如何なる影響を与えるか,また臨床上帯下の治療に応用し得るか否かを検討するため,合成男性ホルモン口腔錠10mgの経膣投与を行い,帯下を訴える患者を中心に更にこれに併存する更年期障害などへの効果をみたのでここに報告する。

診断と検査法

シリコーン塗布を施せる試験管を用いた小川培地について(第3報)

著者: 山本五郎

ページ範囲:P.375 - P.378

 私は,さき3)にシリコーン塗布を施した試験管を用いて,小川培地を作製した場合,その使用済み試験管の再生が,極めて簡便にして能率的であることを発見し,本法によるときは,培地が脱水的に傾くためか,結核菌の発育がやや遅延又は抑制されることを報告した。
 又第2報4)に於いては,上記の結核菌の発育の遅延又は抑制は,培地にTween 80を0.05%に添加することによつて除去され,ほぼ対照と同等の成績を得ることを述べ,さらにこの発育の良くなる理由は,恐らく,水分保持の良くなるためではないかと推論した。

薬剤の臨床

Tristeroid hormone・Reserpine混合剤の生物学的並びに臨床的検討

著者: 藤井久四郎 ,   橋口精範 ,   安藤晴弘 ,   中野渡亀夫 ,   田島博明 ,   新田武

ページ範囲:P.379 - P.386

 estrogenを単独に比較的長期にわたつて使用するとき,卵巣に黄体が存在しない場合にはその作用がつよくあらわれすぎて子宮内膜,筋層および乳腺に異常増殖をおこすことは動物実験でも臨床的にも経験されるところである。それはprog—esteroneやandrogenの併用によつて或る程度調整される。従来estrogenとandrogenとの混合投与が利用されているが,更にgestagenを加える方がより生理的に近い組合せと考えられる。
 この観点から,私共はさきにandrogen, est—rogen, gestagenの3種のsexogenを混合したtristeroid hormoneの各種ホルモン作用を動物実験により検討し,さらにmeprobamateをも混合して,これを婦人科領域ことに更年期障害,月経困難症及び自律神経症などに応用してかなりの臨床的効果のあることを報告1)2)3)したが,今回は第1表のようなtristeroid hormoneとrese—rpineとの混合剤について同様な実験をこころみた。

産婦人科領域に於ける必須アミノ酸(ソーアミン)の使用経験

著者: 助川幡夫 ,   吉村博光 ,   神山善三 ,   酒井和之 ,   矢後謙次 ,   溝田純人 ,   田中勝之助 ,   田中寿一 ,   西村俊喜

ページ範囲:P.389 - P.394

Ⅰ.緒言
 従来のアミノ酸製剤は副作用等の点に於て臨床的に使用するのには種々の障碍があつたが,近時天然アミノ酸であるL型のみのアミノ酸結晶注射液が作られ,副作用等の欠点も除かれ種々の疾患に用いられる様になつた。われわれは田辺製薬の提供を受けソーアミン(以下S.O.と略す)を使用する機会を得たので少数例ではあるが現在迄の使用成績を報告する。

婦人便秘症に対する強力バルコゾルの効果について

著者: 後藤田博之 ,   桑原惣隆

ページ範囲:P.397 - P.400

Ⅰ.まえがき
 器質的な疾患或は大腸の機能的神経支配障碍により来る便秘症は日常多くの患者,特に婦人に多く認められ来院しない者でも下痢とか浣腸等により処理しているものが相当ある事は事実である。通常これらの患者を治療する場合,レ線検査,糞便の性状,腹部及び一般所見から機能的なものは弛緩性—蠕動減弱型Hypotonisch hypoperis—taltische Formであるか,運動障碍性痙攣型dyskinetisch spastische Formであるかを判定し,夫々有効な薬剤を使用しなければならない。また最近ではColon neurosisの概念が加わり,独立した疾患単位として扱われつつある様である。治療面では近年J. wilson & D. Dickinson (1955)が二塩基酸性のアニオン活性型である合成高性能湿潤剤Dioetyl Sodium Sulfosaccinate (D.SS.)を応用し効果をあげ,その後,本剤の使用成績も多く報告されているが,今回,D.S.S.とCa—scarinol (Cascara sagradaの純有効抽出物質)から成る強力バルコゾルをエーザイより提供され外来婦人患者に使用し,若干の知見を得たので報告する。

トリコモナス腟炎に対するトリコマイシンK錠の効果について

著者: 成田太 ,   細田恒

ページ範囲:P.403 - P.406

Ⅰ.緒言
 われわれの臨床ではトリコモナス腟炎(以下「ト」腟炎)は年々増加の傾向があり,しかも婦人骨盤内炎症性疾患の約3分の1を占めているので,此の疾患に対する治療及び予防対策を樹立することは極めて重要であろう。
 「ト」腟炎は諸家の指摘する如く,治療によつて,一次消虫率はかなり良好であるにもかかわらず,治療後放置すれば原虫の再現率も又高いので,「ト」腟炎の治療にあたつては,トリコモナス原虫の生活環境や,寄生時の病理,寄生部位の検討などによつて,患者の生活環境まで意を用いなければならない場合もあつて,非常に困難な思いをすることも稀ではない。

晩期妊娠中毒症に及ぼすクロロサイアザイド(クロトライド)の影響—第1報 外来患者について

著者: 中津幸男 ,   鈴木多之助

ページ範囲:P.407 - P.411

Ⅰ.まえがき
 晩期妊娠中毒症の薬物的治療法は種々の利尿,降圧,鎮静剤が用いられているが,利尿と降圧が共に顕著に存するものは未だなかつた。最近クロロサイアザイド(クロトライド)がこの両作用をもつとされ,内科領域に於いては大いに用いられているが,産婦人科領域に於いての試用は未だ少い。よつてわれわれは今回晩期妊娠中毒症に及ぼす本剤の影響を外来患者について調査したので報告する。

エンテロ・ヴイオフォルムの使用経験

著者: 野口正 ,   笹川重男 ,   馬場一郎

ページ範囲:P.413 - P.416

Ⅰ.はしがき
 帯下を訴えて来院する患者の大部分を占めるトリコモナス腟炎(以下「トリコ」腟炎と略す)の治療に関しては今日なお未解決の多くの問題を残して居る。婦人科医が日常診療に際して極めて難治であり然も数の多い事に依り悩まされる膣「トリコ」の感染経路,感染様式については幾多の研究に拘らず不明の点が多い。然し多くの学者に依り性交に依り恰かも性病の如く感染する事は確かの様である。
 今日その治療方針としてはトリコマイシンK,ペニギンC,エーワ錠等の局所治療,トリコマイシン,アミニトロゾール等の内服薬がある。教室梨本,五十嵐らは既にペニギン,トリコマイシンなどによるトリコモナス膣炎の治療成績を発表しているが,いずれにせよ,治療にあたつては長期且つ連続的使用を要し,石北らも述べているように高価な薬剤の連用は困難な場合もあり出来れば入手容易な廉価な薬剤で効果をあげ得るものを考えていた。今回チバ製品株式会社より,エンテロ,ヴイオフォルムEnterovioformを得て主として,「トリコ」膣炎に使用してその効果を検討したので長期間の観察に欠けるがここにその使用成績を報告する。

新産児血清Bilirubin量に対するVit. Kの影響について

著者: 明城春弥 ,   松井有禧

ページ範囲:P.417 - P.419

Ⅰ.緒言
 新産児黄疸の成立機序の一因として肝臓の関与が注目され,新産児肝機能について多数の研究がある。生体に於てはVitamin,酵素,Hormon及び鉱質等の諸代謝物質間の相互交通の場として,最も重要な役割を演じている臓器として肝が挙げられ,古くから多くのVitaminの貯臓庫又は代謝の場として知られており,Vitaminとは深い関係が見出され,肝に関係のないVitaminはないとも云える現状である。Vit. KはDam,Schönhederによりリポイド新陳代謝に関する研究中に発見され,血液凝固酵素であるThrombinの前身たるProthrombin生成に必要なVitaminであるとされ,Prothrombinは肝で作られるが,その際Vit. Kの存在が必要である。新産児の出血性素因が低Prothrombin血によることが報告され,胎児並びに新産児の肝に於けるProthro—mbin生産機能未熟に対しVit. Kを投与して胎児並びに新産児の肝機能を良好にすることが出来たと云う多数の報告がある。吾々はVit. Kを新産児並びに満期妊婦に種々なる量及び方法によつて投与し,その児血清Bilirubin量をHidiaの微量測定法によつて光電比色測定してVit. Kが児血清Bilirubinに如何に影響するかを検索した。

文献抄録

Über Lokalwirkung von Östriol,他

著者: 平野睦男

ページ範囲:P.411 - P.411

 主として局所的な卵胞ホルモン欠落症状を示す更年期又は更年期後の患者25人でÖstriolの腟,頚管及び子宮に対する作用を検討した。その結果腟上皮の角化を起す相当高単位のÖstrio1でも内膜上皮の増殖作用は認められなかつた。即ちÖstriolは子宮内膜には局所作用を示さないが腟上皮に対して作用が認められる。

症例報告

"新生児喀痰吐出症"(仮称)の1症例

著者: 山下徹 ,   伊藤敏 ,   伊藤良彦

ページ範囲:P.421 - P.423

Ⅰ.はしがき
 生後2〜3日の間新生児が羊水様物を吐出するのは生理的現象として瘻々観察されるが,気道より多量の粘液を吐出することは殆んど経験されない。私共は,最近東北大学医学部産婦人科で生れた新生児中,出生直後より多量の粘稠な分泌物を吐出し,ために呼吸困難,哺乳困難等を来した1例を経験したので報告する。

頸管妊娠の手術前確診例

著者: 大貫勇二郎

ページ範囲:P.425 - P.430

 頚管妊娠は本邦では昭和28年九島氏1)の報告以来近年に至つて瘻々報告され,約20例を見る。がその手術前診断は極めて難しく,従来の報告例でも,絨毛上皮腫の疑が最も多く8例で,他は妊娠3か月と卵巣嚢腫,双角子宮妊娠,頚管の悪性腫瘍,子宮筋腫,奇胎(2例),胎盤ポリープ(2例),頚管流産,筋腫妊娠,胎盤残留,旁結合織内血腫等と診断されている。僅に九島氏2)が最近前回の経験に基づいて内診所見で診断し得た(第2例)のに止まる。
 一方外国でも本症は極めて稀なためか診断も困難であり,例えばStuddiford3)の集計(1945)14例でも,7例は流産で,他は頚癌,卵管破裂,前置胎盤,頚管血腫,頚管の類線維腫,妊娠初期,筋腫で妨げられた分娩等である。外国では絨毛上皮腫が少いためか概ね先ず流産と考えられているらしい。

臨床統計

骨盤位分娩100例の検討

著者: 石北明

ページ範囲:P.431 - P.435

 骨盤位,殊に初産婦骨盤位は頭位分娩に比して一般に分娩が遷延し(併しEdward Hall et al.によれば,骨盤位分娩の平均持続時間は初産婦で12.4時間,経産で6.5時間で,頭位分娩に比較すると短く,特に経産婦の場合短いというが),分娩経過中臍帯の圧迫,脱出により仮死又は真死に陥る頻度が高く,又母体が受ける産道の裂傷,産科手術及び種々の処置による細菌感染等の結果,母体の罹病率も頭位分娩に比して可成り高いので,初産婦骨盤位に帝王切開術を積極的に適用する考え方が多くなつて来た。これは抗生物質,麻酔管理,手術術式等の発達によつて該手術の安全性の高い事もあずかつて力がある。併し初産に於いて帝王切開術が行われた患者の次回分娩は患者も医師も相当の心配をし,再び手術的分娩の行われる頻度も高くなつて居る。これに反し経腟分娩を行つた場合は次回分娩が一般的には極めて容易である。従つて産科医としては初産婦骨盤位は出来る丈経腟分娩を行う様心掛けるべきであり,又その手技に熟達する様に日頃からの訓練が必要と思う。
 従来骨盤位については多数例の報告がみられるが,これ等は長年月に亘り技倆の異つた術者の成績を綜合集績した結果についての報告であり,同一術者による少数例の結果を検討する事も有意義と考えるので,自験100例について記述する事とした。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?