臨床研究
けいれん治療に伴う婦人性器出血
著者:
梶原和人1
出口奎示1
小山主公2
松岡栄一2
前川益夫2
小島真2
所属機関:
1東京大学医学部産婦人科学教室
2国立東京第一病院神経科
ページ範囲:P.355 - P.358
文献購入ページに移動
機能性子宮出血が,女性性機能の根幹をなすいわゆる間脳—下垂体—卵巣系の機能失調に関連して発生することは,周知の通りであるが,これら器官における機能的起原は,幾多の臨床,実験的研究から,間脳ことに視床下部に存在するものと考えられている。しかしながら,この想定も多くは,該部の刺激あるいは損傷による動物実験にもとづく知見に依存するもので,臨床的には,本症の中枢性機序を説明する知見に,はなはだ乏しいものがあるといえよう。その理由として考えられることは,今日われわれの使用している間脳機能検査法も,その精確さにおいては決して満足すべきものではなく,また視床下部の破壊は兎も角として,間脳部の刺激あるいは抑制を起す適確な方法が,見出されていないことなどがあげられる。正常月経周期婦人の頭部に超短波を照射すると,ときに中枢神経系の機能に変調をきたし月経異常の発現することが知られているが,著者等は,月経周期の順調な精神疾患患者に,精神科特殊治療の一つである頭部通電治療を,富永の耳介通電法,すなわち径7cmの電導子を両耳孔に圧着して通電し,てんかんけいれん発作をひきおこす方法により施行し,これにより,より多くの電気刺激が間脳部に与えられることを期待し,このばあいにあらわれる子宮出血の様態を検索して,これが中枢性機序を介して発現するものであるか否かを考察した。