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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科14巻5号

1960年05月発行

雑誌目次

グラフ

Profile : Prof. H. Martius

ページ範囲:P.441 - P.442

 Heinrich Martius教授は1885年1月2日に,内科を専攻し,医学的体質説の提唱者であつたFriedrich Martius氏の子息としてBerlinに生れた。教授の医学の経歴はEppendorfの病理学者E.Fränkel及び内科学者Lenhartzについての研究にはじまり,次いでBerlinの外科学者Rinneに師事した。1913年にはOtto V. Franqué教授の主宰するBonnの大学産婦人科に入り,1926年にはGöttingenの産婦人科教授として招聘された。そこで広く世界に知られている産科婦人科の教科書と手術学書とをかいた。その書物はアメリカ,スペイン,イタリー,ユーゴースラビヤ及びトルコ語でも翻訳されており,更にポーランド語にも,翻訳中である。300を越える研究発表を行つているが,尿失禁の手術療法,婦人科の放射線療法,不妊症の療法,その他産婦人科の多方面に亙つている。教授が特に努力したのは,産科と婦人科の分裂を防ぎ,その境界領域にある婦人科的整形外科,婦人科的泌尿科及び産科的小児科を綜合した一科とすることであつた。教授はドイツ及び外国の多数の学会の名誉会員にも推挙されている。1951年にはドイツ婦人科学会の会長として総会にのぞんだ。1954年8月にはGenfに於て国際産科婦人科学会のドイツ及びオーストリヤの代表におされ,その前年にはドイツ国大統領Heussから功労により西ドイツ国の勳賞を受けた。

綜説

卵巣出血について

著者: 古畑忠輝 ,   小林博 ,   遠藤正文

ページ範囲:P.443 - P.451

Ⅰ.まえがき
 卵巣出血は文献に報告された数は比較的少数であり,これらの殆んどは術前に正確な診断が下されていない。即ち急性虫垂炎,子宮外妊娠,卵管炎という診断をうけている。これは診断の困難さもさることながら,最近卵巣出血に対する関心が高まりつつあるとはいえ,なおそれについての認識不足にもよるものであつて,ここにその症状及び検査所見を明らかにして一般の注意を喚起したいと思う。
 ここにあげる症例は当教室に於て最近10年間(1950〜1959)に於て経験した12例でこれについて種々の考察を加えていきたい。

臨床研究

子宮癌治療と副腎皮質ホルモン及びACTH

著者: 清水直太郎 ,   吉川暉 ,   丸山隆義

ページ範囲:P.453 - P.459

 副腎皮質ホ,またはACTHが癌腫手術等の大手術時のショック防止に,またその治療に,術前から術中術後に用いて有効であることは,既に実地に経験されている。また癌の放射線治療に際して皮質ホ及びACTHが放射線宿酔を軽減するのに役立つほか,皮膚,膀胱,直腸における照射障害の抑制,治療に,主としてその局所使用の有効であることが報告されており,著者等もシェリプロクト坐薬,軟膏(ハイドロコーチゾン含有)の有効なことを経験しているので,後日改めて発表する。更に手術,放射線に次ぐ第3の癌治療法としての化学療法,就中現在最も期待されている制癌剤療法に伴う諸副作用の抑制,治療にも皮質ホ及びACTHは有効である。ことに副作用として最も危険であり,殆ど必発する白血球減少症には放射線によつて起つたものと同じく,従来特効的な手段がなく,そのために屡々癌治療を中断し,長期間に亘つて白血球増加のための治療をしなければならぬことは日常珍らしくない。従つて皮質ホ,またはACTHで白血球の著増を急速に来し得ることは強力な癌腫治療を遂行する上に極めて重大な意義がある。例えば既往の強レ照射で照射野の皮膚に硬結,毛細血管拡張等がある場合には制癌剤治療を適用するが,この際に白血球減少があれば,それは不可能であるから癌治療は一応中断しなければならぬ。

子宮内避妊リングの臨床的観察

著者: 三井武 ,   森本正昭 ,   井下田純

ページ範囲:P.461 - P.465

I.緒言
 戦後の急激な人口の増加及び之に伴なう無批判な人工中絶術の施行等の結果,所謂逆淘汰の現象と思わざるを得ない状態が現われつつあり,諸般の社会状勢はわれわれ産婦人科専門医が受胎調節或いは家族計画の普及等の諸問題を真剣に考慮しなければならない現況にある。
 今日避妊法の必要なことは万人の認めるところであるが,その実施に当つて忽ち諸種の困難に立ち向わねばならない。即ち避妊効果の不確実なこと,副作用の多いこと,費用が低廉でないこと,われわれの生活様式と相俟つて家庭内で手軽に実行出来ないこと等の諸問題である。一時的避妊法としては従来より性交中絶法,コンドーム法,避妊薬或いは洗滌等による化学的方法,タンポン,スポンジ,横隔ペッサリー等による器械的方法及び避妊リング,避妊ピン等を用いる方法等,多種多様の方法が行われているが,孰れも一長一短があり,その優劣を云々することは困難であるが今回われわれは実験的に子宮リングを使用して,その実態を調査したのでここに報告して批判を仰ぐ次第である。

婦人肩こり症に対する一治療法

著者: 森新太郎

ページ範囲:P.467 - P.469

I.緒言
 われわれ産婦人科外来を訪れる患者で肩こり,腰背痛及び之等と関連せる頭痛を訴えるものは随分多い。特に更年期前後になると殆んどと云つてよい位である。更年期障碍患者について之等の症状の発現頻度を調べてみると運動器管障碍症状に属する肩こり58%,腰背痛53%,精神神経障碍様症状に属する頭痛41%であり,肩こり,腰背痛は更年期障碍の症状中でも優なるものであると云える。更に婦人自律神経失調症に属する患者でも之等の症状は更年期障碍患者と略々同率に認められると云つてよい。従つて之等の症状はわれわれ産婦人科外来診療に当つては最もしばしば遭遇するものであると云つてよかろう。然し之等の症状は我々にとつて何だか余りにも漠然とした感があり,単に更年期障碍又は自律神経失調症に対する治療法を行つていれば自然に治つて行くべきものと観念付けられて了つて熱心に之等に対する処置を考えようとせぬ嫌いがある様でもある。早い話が肩こりは「血の道」のせいだからその治療をしていれば治つて了うと簡単に片附けて了い勝である。所が患者から云わしめれば更年期障碍や「血の道」症の御説法は存分判るけれども何はともあれ肩こりを楽にして欲しいと訴える場合がある。

婦人自律神経症に於ける体温異常について

著者: 加藤昭典 ,   佐竹正 ,   伊藤良彦 ,   鈴木辰夫

ページ範囲:P.471 - P.476

Ⅰ.はじめに
 産婦人科領域で,月経前熱や妊娠微熱などの微熱に関しては,幾多の報告があるが,自律神経症患者に於ける間脳失調性と思われる体温異常に関しては,未だ報告注意されていない。ところが,本症患者で異常体温を示すものはかなり多く,本症の入院治療患者100名の中52名即ち52%にあつた。而も之等異常体温では,微熱のみならず,種種の型が見られ,体温の高低は正常でも日差が不規則に変動する不規則型(28%),微熱型(13%),低温型(4%)及び高温型(7%)の4型が見られた。
 而して,各熱型には,夫々本症の臨床病像がよく反映され,本症の臨床上,極めて重要であることを知つた。そこで,以下,之等異常体温について,主として臨床的方面から検討したので報告する。

文献抄録

Onfalografia endouterina,他

著者: 山口竜二

ページ範囲:P.465 - P.465

 臍帯をレ線像としてあらわす為に著者は水溶性造影剤を10ないし20ccを経腹壁的に胎盤の絨毛間腔に注射し15秒及び30秒後に側面撮影を行う方法を考案し, これをOmphalo—graphy又はUtero-placento-om—phalo angiographyと名附けた。この方法は胎盤が子宮の前面及び側面にある場合にのみ可能であるが,胎盤刺入による危険はなく,又影像も胎盤,臍帯共極めてきれいに現われることが特徴である。

実験的研究

17α—及び17β—Hydroxyprogesterone acetateにおけるGestagen作用について

著者: 持田良吉 ,   小宮清一郎 ,   宇都木允之

ページ範囲:P.477 - P.478

Ⅰ.まえがき
 持続性性ホルモン1)2)3)に続いて,Junkmann4)により持続性黄体ホルモン(Gestagen Depot)が見出された。即ちJunkmannはprogesteronederivative,17α—hydroxyprogesterone enolacylate等30数種の誘導体について検討を加え,17α—hydroxyprogesterone caproate及びace—tateが最良であると報告している。これ等ges—tagen depotはestrogen又はandrogen de—potと性格を異にす。estrogen及びandrogendepotは母体であるestradiol及びtestoste—rone自身にて強力なestrogen作用及びandro—gen作用を有するに反し,gestagen depotの母体である17α—hydroxyprogesteroneは何等ges—tagen作用を有しない5)6)7)。又α型の異性体であるβ型もα型と同様,何等gestagen作用をしめさない。然してJunkmann4)の報告中にβ型のacylateに関する報告が見られない。

薬剤の臨床

Sulfadimethoxineの治療評価

著者: 徳田源市 ,   青河寛次

ページ範囲:P.479 - P.491

Ⅰ.いとぐち
 Sulfa剤の最近の傾向が,数年前Sulfametho—xypyridazineが"明日のSulfa剤"として登場して以来,従前の高級Sulfa剤からいわゆるLong-acting Sulfa剤にむかつていることは,今更言うまでもない。これら一連のLong-actingSulfa剤は投与態度の面でも著しい特徴を示すが,抗菌力の点では著差がないと言われて居り,従つて,理論上,投与間隔が長期であればあるほど,又,副作用が少なければ少いほど,これら一連の薬剤中優れたものと言い得るのである。
 今,従来の高級Sulfa剤に関する基礎的並びに臨床的研究の文献を概括するとき,各薬剤箇々の性状についてはかなり詳しく追求されているけれども,各薬剤間の特徴を比較検討すれば,その実験方法・検索態度に著しい相異があるのに気附くのである。Sulfa剤の如く,一連の化合物がかくも多数合成検討されている例は他に比をみないに拘らず,かかる個別性は誠に惜しむべきと云う外はない。

Deliverin (持田)に依る陣痛誘発並にその強化について

著者: 明石勝英 ,   山本健三郎 ,   今野邦雄 ,   佐々木誠

ページ範囲:P.492 - P.494

Ⅰ.緒言
 1954年Pehrson1)はErgometrin 0.02mg,Chinin hydrochloricum 25mg,Papaverin 10mgより成る処方を考案し,これにPraepartanの名称を附して陣痛誘発及び陣痛強化に極めて有効なる成績を発表した。
 その後本邦に於ては河野2),安井3),伊藤4)等によつて同様処方の薬剤使用が追試され,何れも相当程度に有効との成績が報告されている。

子宮腟部糜爛に対する蛋白分解酵素ナガーゼの使用

著者: 赤堀和一郎 ,   中後勝 ,   柏村翠子 ,   柿沼祐一

ページ範囲:P.495 - P.498

Ⅰ.緒言
 子宮腟部糜爛は一見単純な疾患の様に思われるが,帯下の増加,性器出血等のために案外患者を悩ますもので,中には非常に頑固な経過をとる症例も多い。近時抗生物質のめざましい発達により本症は著しく減少したと言われているが,尚比較的屡々見られる疾患であり,しかもその発生原因が単一なものでないために,未だ決定的と言うべき治療法がなく,特にその原因の明らかでない症例に対してはその治療に困惑させられることがある。
 われわれは最近各方面で種々利用されている蛋白分解酵素を使用する事により,薬物を直接病巣に浸透せしめて糜爛面を化学的に掻爬し上皮形成を促進させ,治癒効果を増大し得ると考え,本院産婦人科外来に来院した子宮腟部糜爛患者に対し蛋白分解酵素製剤"ナガーゼ"を用いて子宮腟部糜爛を治療し,肉眼的並びに組織学的に著しい改善を認めたのでその成績を報告する。

産婦人科領域に於けるPhotobacterium Phosphoreum Molish製剤(フロラーズ V)の使用経験

著者: 森武史 ,   新見国雄 ,   高基三 ,   近藤清己

ページ範囲:P.499 - P.502

Ⅰ.まえがき
 フロラーズは,滝野博士1)(昭26)等により,Photobacterium Phosphoreum Molishから分離された関節リウマチ性疾患に効果のある物質で,大久保氏2)(昭29)等,及び角本氏3)(昭29)等は内科領域で使用し,慢性関節リウマチに有効なことを認めている。
 最近,この有効成分は精製濃縮化され,フロラーズV (以下FVと略す)として発売されたが,著者等は大日本臓器研究所より本剤の提供を受け,産婦人科領域に於ける疼痛(腰痛,肩凝り,関節痛)に使用した。その成績をまとめて報告する。

便秘時のPursennid臨床経験—産婦人科領域に於て

著者: 街風喜雄 ,   大森亮英 ,   村瀬喜和子

ページ範囲:P.503 - P.506

Ⅰ.はじめに
 婦人は生活環境から便秘し易く,日常外来患者でも主疾患と共に便秘に悩む者が非常に多い。殊に開腹手術後や子宮癌ラジウム照射後,或は妊娠,分娩,産褥の経過中幾日も便秘して不快感を訴える症例に屡々遭遇する。
 排便が正常に行われないと,Indole, Skatole, Phenol, Cresol, Histamine,細菌毒素その他の毒性物質が血中に吸収され,有害作用を惹起する可能性がある。腹部膨満感,下腹痛,食欲不振,頭痛,めまい等いろいろの不快症状を呈するは当然であり,対症的にも之を矯正する必要がある。

「デリバリン」錠による分娩誘発の経験

著者: 荒川博司 ,   三宅章午

ページ範囲:P.509 - P.513

Ⅰ.緒言
 分娩誘発としては従来より種々の方法が行われているも,これらは何れも一長一短があり,且つ単独の方法のみで奏功する場合は割合少くなく,大抵は2,3の方法を併用して初めて目的を達する現状である。
 われわれは今回分娩誘発剤である持田製薬製「デリバリン」錠(以下D錠と略す)の提供をうけ使用する経験を得たので,使用例数は未だ小数ではあるが,その臨床使用成績について報告する。

「シノミンナトリウム」の腟散布療法

著者: 稻葉芳一 ,   伊藤郁夫 ,   小林幸代 ,   松下洋一 ,   大野義彦 ,   宇井多久美 ,   森川重正

ページ範囲:P.515 - P.518

 近年新しい抗生物質の登場によつて,臨床応用の減退したかに見えるサルファ剤も,抗生剤の激しい副作用,耐性菌の出現,菌交代症等の問題から再び治療界に於ける認識が深まると共に,化学製剤であるだけに今後の限りない発展も期待され,特に長時間有効血中濃度を保持する新サルファ剤の出現と相俟つて再検討されつつある。当教室員藍田等は既に長時間有効血中濃度を保持し,且つ抗菌スペクトルの広い新サルファ剤「シノミン」末の腟散布療法の治療成績を発表したが「シノミン」末にはpH7.0以下では局所剤としての重要条件である易溶性に欠けると云う難点があつた。今回われわれは溶解度の非常に高い「シノミンナトリウム」の提供を得たので,その腟内散布療法を試み「シノミン」に優る治療成績を得たので報告する。

産科領域に於けるイルコジン坐薬の使用知見

著者: 鈴木多之助

ページ範囲:P.521 - P.522

I.まえがき
 従来種々の疼痛に対して,色々の薬剤が用いられているが,その多くは経口投与或は注射であり,肛門坐薬は未だ余り用いられていない。今回イルコジン坐薬を産科領域の諸種疼痛に用いその効果を調査した。
 イルコジン坐薬はButazolidin 0.2g,Amino—pyrin 0.3g,Codeinum phosphoricum 0.02g,Medomin 0.3gが配合され,アミノピリンの鎮痛,コデインの痙攣緩解及び鎮咳,メドミンの鎮静作用と共に,ブタゾリジンの鎮痛,消炎作用を期待しうる上に,ブタゾリジンが他剤の排泄遅延作用をもつ事は之等薬剤の鎮静,鎮痛作用の増強がうかがわれる。又本剤には直腸粘膜刺激作用なく1)2),全身的にも取上げるべき副作用はないとされている2)5)6)9)

手術・手技・麻醉

婦人科手術に於けるラボナールAの使用経験

著者: 秋元正雄 ,   江口貞雄 ,   中井嘉文 ,   池沢紀郎 ,   星合久司 ,   泉陸一

ページ範囲:P.523 - P.524

I.緒言
 ペントタールソーダーは1934年Lundyによつて始めて静脈麻酔剤としての優秀性が認められて以来,単独麻酔剤として或は導入,補助麻酔剤として着実な発展を示し,産婦人科領域に於ても,戦後人工妊娠中絶の激増に伴い,安全域が広く,麻酔効果も良好で且つ副作用が少い為に,子宮内容除去術に対する単独短時間麻酔剤として広く使用され,又其の他の婦人科手術には勿論,腹式帝王切開術,鉗子分娩,無痛分娩にも賞用されるに至つている。然し,副作用が少いとはいえ,呼吸抑制,呼吸麻痺,血圧降下,喉頭痙攣等が稀に起る事があり,特に呼吸抑制に関しては静注時の速度量或は個人差等によつても異るが,就眠量注入時,軽度ながら呼吸の抑制が必発するといつても過言ではない。当教室に於ては,此の副作用を未然に防止する為に本麻酔に際しては,呼吸促進剤の混注を行つている程である。
 今回ペントタールソーダーと同じ組成を有するラボナールに,強力な呼吸循環障害除去作用を持つビスウレア誘導体のアトムリンを組合せたラボナールAを提供され,婦人科手術に使用して優秀な成績を得たのでここに報告する。

妊娠中に診断した無脳児の1例

著者: 村田武司 ,   丸山真一

ページ範囲:P.525 - P.526

I.緒言
 無脳児の報告は奇形児中,兎唇,口蓋破裂等についで比較的多く報告されているがその発生の原因は未だ明かでない。我々は分娩前にレントゲン写真にて確診し得た1例を経験したので報告する。

症例報告

腟横隔膜の1例

著者: 梶英雄 ,   木村好秀

ページ範囲:P.527 - P.529

I.緒言
 本邦での報告が比較的稀である腟横隔膜の1例を経験したので報告する。

臍帯「ヘルニア」の1例

著者: 加藤典夫 ,   池田淳

ページ範囲:P.531 - P.532

 臍帯「ヘルニア」は腹部内臓の一部が直接に拡張せる臍帯内に脱出せる先天性奇形であり,比較的稀なものとされて居る。私達は最近その1例を経験したので茲に報告する。

娩出前から診断のついていた紙状児

著者: 杉野保雄 ,   近藤幸雄

ページ範囲:P.533 - P.538

I.緒言
 多胎妊娠に於ては,一般に各胎児の大さに不同を認める事が多いが,何等かの原因によつてその中の1児或いは2児が発育不良となり,他の健全な胎児の発育によつて次第に萎縮し,遂に死亡して紙状に菲薄扁平化された時,これを紙状児Fo—etus papyraceus.又は圧縮児と呼んでいる。しかしながら紙状児を娩出前に診断する事は至難であつて,妊娠経過の注意深い観察と,「レ」線撮影によつてのみ,時に診断が可能となるが,実際に妊娠中に「レ」線撮影によつて診断した報告は極めて少い。私達は最近妊娠経過中に3回の「レ」線撮影を行い,更に妊娠経過の観察と併せて,双胎,1児正常児,1児紙状児と診断し,その妊婦が妊娠10ヵ月にて1児を正常に分娩し,1児を紙状児として排出せる症例を経験したので茲に報告する。

子宮筋腫と誤診せる悪性変化を伴つた後腹膜筋腫の1例

著者: 野口正 ,   須原広保 ,   渡邊隆夫 ,   鈴木由彦

ページ範囲:P.539 - P.541

 腹部腫瘍中,後腹膜組織より発生する腫瘍は比較的少く,これが診断は困難な場合が多い。Witzel, Goebell両氏は,後腹膜腫瘍とは,横隔膜と骨盤無名線の間において,腹膜後部に存在する腫瘍で,後腹膜組織より発生し,生殖器,膵臓,腎臓,脾臓等と関係を有せざるものである,と述べている。
 従つて後腹膜腔内容に一致して,Fibrom, Li—pomが多く,ついでTeratomやGanglioneu—romやSympathicoblastom等が主たる腫瘍で,滑平筋腫は非常に少く,本邦に於て僅か4例の報告をみるのみで,これが悪性変化を起した症例に至つては1例のみである。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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