文献詳細
薬剤の臨床
エストリオールの臨床的並びに基礎的実験(第1報)
著者: 小野和男1 井上正二1 岡田弘二1 天津実1 藤田文予1 吉松正隆1 藤原慎吾1 細田澄之1 青木政子1
所属機関: 1京都市立医科大学産婦人科学教室
ページ範囲:P.1001 - P.1005
文献概要
分娩誘発については種々の報告があるが,古くより機械的及び薬剤的の方法があり,近来ホルモンによる誘発方法が多く使われるようになつた。之等ホルモンの作用機序を明らかにすることにより,分娩誘発の方法及び陣痛発来機序を解明することが出来る筈である。
分娩の時期を人為的に調節する場合,自然に—少なくとも自然に近い方法による事が必要である。この目的にオキシトチン(Oxytocin)〔ピトシン(Pitocin)〕の点滴静注法があり,血中ピトシナーゼ活性の消長1)と平行して合理的な方法であると見なされているが,子宮の分娩準備態勢,所謂Maturationが問題となり,ripeでない子宮頚管は本法に反応を示さず,再度の施行を余議なくせしめる事がある2)。この子宮頚管成熟状態の判定は,子宮頚,子宮口の状態3)による場合の外,ホルモン排泄状態4)5),最近は腟細胞診により判定する方法も試みられている6)。かくの如く分娩を人為的に誘発せしめるには,子宮の分娩準備状態を或程度人為的に変更せしめる必要がある。妊娠末期及び陣痛発来時に胎盤よりのエストロジエンが増量する事実7)8)9)10),更にはエストリオールが子宮頚等に作用し,之を軟化せしめると云う報告等11)12)よりみて,我々は分娩誘発にエストリオールを使用し,これについて臨床的並びに基礎的な実験を行つた。今回は現在迄の成績の一部を報告する。
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