文献詳細
症例報告
妊娠中の無脳児の診断について
著者: 竹村喬1 佐野恵1 奥平吉雄1 山本重治2
所属機関: 1大阪大学産婦人科学教室 2大阪大学病理学教室
ページ範囲:P.551 - P.556
文献概要
無脳児については既に多くの報告がなされており,決して珍しい疾患ではなく,寧ろ先天性外表奇形(Neel 1.02%,三谷1.3%)の中では最も屡々みられるものの一つである。私共の教室で最近調査した成績では10年間(昭和25年〜34年)の分娩4833例中37例(約0.7%)の先天性奇形が認められた。そのうち最も多いのは兎唇で7例,次いで無脳児が5例(全奇形中の13%)で全分娩の0.102%に相当し,従来の報告の1000〜1500回に1回という頻度(第2表)に略々一致している。之等の成績は何れも大病院での観察が多いので,一般の発見率とは多少異るところがあるが,大病院での分娩の特殊性を考慮に入れても尚且つ相当の頻度にあることは容易にうなづけるところである。しかも分娩後は兎唇等と異り児の多くは死産(Erlandによれば2/3)するか,生後間もなく死亡するのみならず,その容貌等から最も忌避されている奇形であるといつてよい。更に我々を不安に陥し入れるものは,妊娠中の長い発育過程の間に於て診断出来ずに見逃す場合が可成り多く,遂に分娩時に於て始めてこの奇形に気付き,本人や家族への説明にも困惑を感ずる場合も少くない。従つて本症の診断を妊娠中可及的速やかに下して,その最も適切な処置を行うことは実地臨床医家にとり重要である事は云うまでもない。
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