臨床婦人科産科15巻7号

1961年07月発行

症例報告

羊水過多症と誤診せられた妊娠に合併せる巨大偽ムチン嚢腫の1例

著者： 勝又甚七¹ 三枝襄二¹ 辛悦基¹ 織田裕義²

所属機関： ¹東京都国民健康保険団体連合会直営副生病院 ²慶應義塾大学医学部病理学教室

ページ範囲：P.643 - P.646

Ⅰ．緒論
　妊娠と卵巣嚢腫の合併は比較的多く経験せられているが，その多くは妊娠3カ月迄には発見せられている。しかし一方誤診例も可成り報告せられている。此度われわれは妊娠と4.1kgに達する偽ムチン嚢腫とを合併し，妊娠早期より腹囲の高度な増大により羊水過多症と診断され，妊娠8カ月に遂に早産するに至つた症例を経験したので報告する。