文献詳細
婦人科 ホルモン療法
Estriol投与による臨床的,実験的観察の2,3について
著者: 藤井久四郎1 熊坂高弘1 助川幡夫1 尾崎純弘1 西望1 矢後謙次1 中井暲典1
所属機関: 1東京医科歯科大学医学部産婦人科学教室
ページ範囲:P.125 - P.132
文献概要
Estriol (以下ETと略記)は1930年Marian1)が妊婦尿中に同定してより,次第にその生理的意義および他のEstrogenとの代謝関係が明らかになつたが,その生物学的作用は弱く,単にEstra—diol (以下EDと略記),Estrone (以下EOと略記)の最終代謝産物でその尿中排泄型と考えられて来た。ただその容易に生体内で不活性化されないことのために内服Estrogenとしての価値は認められていたが,最近に至り,その特異な生物学的作用が再認識され,ETはEDやEOの単なる代謝産物ではないと云う考えが抬頭して来た。Overbeek & Visser (1958)2)Puck (1957)3)およびHübner (1956)4)は,腟上皮の角化作用がEDの1/100〜1/1000にすぎないが頚管上皮の増殖作用およびPAS陽性物質の出現はEDと同等の効果があると云い,Borglin (1959)5)はこれを追試して同様の成績を得て居り,又Puck (1957)6)は子宮内膜への作用が弱いから臨床的に月経困難症,腟,頚管の老人性変化および感染に用いて他のEstrogenの如く子宮出血等の副作用なしに治療し得る利点を述べている。
われわれは,ETの生理作用の一端を究明するため,2,3の臨床実験と動物実験を試みたので,少数例ではあるがその成績について報告する。
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