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特集 悪性腫瘍の化学療法
悪性腫瘍の化学療法
著者: 竹内正七12
所属機関: 1東京大学医学部産婦人科学 2東京警察病院産婦人科
ページ範囲:P.571 - P.582
文献購入ページに移動序論
悪性腫瘍の化学療法にはいくつかの困難性がある。今日まで,数えきれないほど夥しい数の薬剤について,動物実験などでScreeningされ,そのなかから選ばれ,制癌剤として臨床界に登場してきている数は少くないにもかかわらず,どの薬剤もまだ熱狂的に臨床応用されるまでに到つていない事実がこのことを雄弁に物語つている。その根本的な理由は,癌細胞と正常細胞との間の質的な差が乏しいという厳然たる事実にあることはいう迄もない。
したがつて,臨床家としては,この乏しい質的な差を,いかにして拡大し,既存の制癌剤を少しでも有効化するにはどうしたら良いかについて研究しなければならない。悪性腫瘍が全身的疾患、として把握されなければならない限り,本症の化学療法はいわば,先験的に要請されているのであり,われわれは感染症における化学療法の輝かしい成果を,悪性腫瘍におけるそれにおいても達成しなければならない責務を負わされているのである。そのためには,悪性腫瘍細胞と宿主の正常細胞との質的な差を少しでも拡大する方向に向つて努力しなければならないのであつて,事実,地味ではあるが,その線に沿つての知見が着実に積み重ねられてきている。
悪性腫瘍の化学療法にはいくつかの困難性がある。今日まで,数えきれないほど夥しい数の薬剤について,動物実験などでScreeningされ,そのなかから選ばれ,制癌剤として臨床界に登場してきている数は少くないにもかかわらず,どの薬剤もまだ熱狂的に臨床応用されるまでに到つていない事実がこのことを雄弁に物語つている。その根本的な理由は,癌細胞と正常細胞との間の質的な差が乏しいという厳然たる事実にあることはいう迄もない。
したがつて,臨床家としては,この乏しい質的な差を,いかにして拡大し,既存の制癌剤を少しでも有効化するにはどうしたら良いかについて研究しなければならない。悪性腫瘍が全身的疾患、として把握されなければならない限り,本症の化学療法はいわば,先験的に要請されているのであり,われわれは感染症における化学療法の輝かしい成果を,悪性腫瘍におけるそれにおいても達成しなければならない責務を負わされているのである。そのためには,悪性腫瘍細胞と宿主の正常細胞との質的な差を少しでも拡大する方向に向つて努力しなければならないのであつて,事実,地味ではあるが,その線に沿つての知見が着実に積み重ねられてきている。
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