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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科16巻9号

1962年09月発行

文献概要

境界領域 癌

癌と内分泌—そのⅢ—癌と甲状腺機能

著者: 渋澤喜守雄

所属機関:

ページ範囲:P.721 - P.728

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はしがき
 癌と甲状腺機能との関係を,全く臨床的な立場から考察しようとするのであるが,さしむき,ヨーソと甲状腺癌,ヨーソと下垂体腫瘍という問題は省くことにしたい。ヨーソ欠乏地帯,あるいは地方病性甲状腺腫地帯では甲状腺癌の発生(死亡)頻度が高い。スイスZurich市地区では,ヨード化合物を予防的に義務的に与えるようになつてから,甲状腺癌もまた逐年減少してきている。アメリカChicago市地区では,成犬甲状腺腫が多く,甲状腺癌も1.6%というように高かつたが,ヨード化合物を予防的に与えるようになってから,イヌ甲状腺癌はなくなつたそうである。こうした事実は,もはや臨床的のみでなく,予防医学的にも実用化されているほど公知になつているから,もつともらしく,それを再び取りあげる必要はあるまいし,その方面の文献は充棟もただならないほど多いからである。
 さて,オランダとベルギーとは,地理的・人種的・国富的によく似た隣接国であるが,ベルギーではLuxenbourg方面を除くと,甲状腺腫は少く,総死亡数に対する癌死の頻度は10.12%(WHO 1957による)で,これはヨーロッパ各国で最も低いグループに属する。一方,オランダはベルギー国境方面を除くと,地方病性甲状腺腫が多く,その癌は16.41%(WHO 1957)でヨーロッパ最高にあるのである。ヨーソ欠乏地帯,甲状腺腫地帯には一般癌発生(死亡)が高いことを示すかに見える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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