icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科17巻10号

1963年10月発行

雑誌目次

グラフ

子宮癌の生癌自家移植療法

著者: 鈴木武徳 ,   永田登喜雄 ,   白坂竜曠 ,   鈴木兼五郎

ページ範囲:P.759 - P.760

 私たちが行なつている移植療法は子宮頸管より採取した癌組織片を大腿皮下組織の浅い所に移植する。大きさは0.5x0.5x0.1cm位でペニシリン溶液中に浸した後に移植する。通常,50〜60日位で移植部の癌組織(大豆大ぐらいに発育)を剔出して,再び移植をくり返して行なう,第1図は移植後136日目の移植癌の発育状態である。以下,手術術式,移植後60日目の発育状態および組織像,移植による癌組織悪性度の変化等を図示した。(写真は第16回日本医学会総会分科会示説発表のもの)。
 なお,このグラフに関連した提言を本号15頁のProposal欄に寄稿している。併せて御覧いただきたい。

追悼

塚原伊勢松先生

著者: 安藤畫一 ,   長谷川敏雄 ,   小林隆

ページ範囲:P.761 - P.763

 鳴呼! 畏友塚原伊勢松君も終に長逝された。
 最後の病床を数度お見舞した時は,さほどの重症とは思えなかつた。或時は明かに笑顔を見せられ,私が無遠慮にお話した回復後のお祝いの計画を喜ばれたのであつた。

PROPOSAL

「アンケート・流産の取扱いについて」(17巻6〜7号所載)を評す

著者: 古賀康八郎

ページ範囲:P.765 - P.767

 ①流産切迫にどういう処置をとつているか。何故か。この間に対してすべての解答者が,まず入院絶対安静,そしてゲスターゲンあるいは,ゲスターゲンとエストロゲン混合剤の静注,筋注あるいは,内服を行なつており,一部では,鎮静剤として阿片剤,トランキライザー,ズフアジラソ等が使用され,止血剤としてアドレノクローム,ビタミンC,K,Pなどが使用されているのは,流産切迫に対する従来からの常識的処置として当然のことである。出血があつて凝固時間の延長があるときに,エストリオールやグルココルチコイドを使用するものもあるが,切迫流産の原因が副腎機能異常によるものであることが,明らかであるもの以外には,一般に妊娠初期にグルココルチコイドの使用は,副作用の点で差ひかえるがよい。最近ゲスターゲンとして,一般に合成剤が使用される傾向にあるが,本症に対して合成ゲスターゲンは効果がないのみでなくintersexのおそれがあるから使用しない。19ノール以外のものでも用いない。流産は,ゲスターゲンだけの欠乏でくるものではなく,他のステロイドの欠乏も参画すると思うので,それらの前駆物質としてのプロゲステロンが最も必要であり,効果的である,との説は,理論的に当然考えられることであつて,今後の検討を要する重要な問題である。われわれは,合成ゲスターゲン殊にメチル基のついたものは肝障害を来すことがあるので,大量長期間使用をひかえている。

Proposal

綜合科の提唱と一般医の会の意義

著者: 浦田卓

ページ範囲:P.767 - P.769

 戦後医学の進歩と専門化の深化 二十世紀も後半にはいつてからの医学の進歩は,じつにめざましい。まるで"連鎖反応的"というか,"自己触媒的"というか,爆発的な様相を示している。
 一方,ひとりの人間のもち時間にはかぎりがあり,またその能力にも限度がある。したがつて,もし世界の医学の第一線を追いぬくとまでいかなくても,これに追従してゆこうとならば,自分の専門とする分野のなかの,またもう一つ狭い部門での研究に,集中的な努力を傾けなければならないりくつである。べつの表現をすれば,他人の分野のことなどにかまつていては,自分のごく狭い部門においてさえ,世界の第一線に追いつくことは,とうていできないという有様である。

子宮頸癌の生癌自家移植療法

著者: 鈴木武徳 ,   永田登喜雄

ページ範囲:P.769 - P.770

 本年(1963年)4月,総会において,われわれが発表した子宮頚癌の生癌自家移植療法について諸家の注目と関心の中で,活発なる御発言,多数の貴重なる御助言を受けた。
 癌治療における手術,放射線,化学療法などは,夫々長所を発揮して,癌治療の目的の治癒まで接近するものの完逐するまでにいたらないことは,われわれ痛感しているところである。特に,手術療法,放射線療法は一つの限界にきていると思われる現在,癌の治療法に対して再検討を要する時期にきていると考えられる。

編集室提言

どうすればいいの?

著者:

ページ範囲:P.770 - P.770

 職業柄というのは変だが,名医を紹介してと頼みに来られる御婦人は少なくない。素人判断でうじうじと躊躇していないで受診を習慣づけようとする若い人が僅かでも筆者の如き若い男性のところへ良いお医者様をと言つて来られるのは,これはなかなか大変なことだと思う。
 それはさておき,最近こんな愚痴をこぼす人に出逢つた。念の為に申し添えるがこれは筆者が誰方かに紹介したという人ではない。

シンポジウム

産婦人科領域における線維素溶解現象に就いて—その1

著者: 福武勝博 ,   佐藤彰一 ,   藤原幸郎 ,   杉浦淳三 ,   相馬広明

ページ範囲:P.772 - P.781

 司会(藤原幸郎東京医大教授) 線維素溶解現象または線維素溶解酵素など最近こういう現象がいろいろ産婦人科疾患特に出血性の疾患と重要な関係があることが分かつて参りまして,その治療方法につきましても,少なからぬ発表が現われて参りました。
 そこで,われわれ臨床家のために,分かりやすくお話を伺うように,この線維素溶解現象を研究しておられる講師の方々に,お集まり願いました。東京医科大学の中央検査科の助教授福武勝博先生には主として基礎的な事項についてこの解説を,慶応義塾大学講師の佐藤彰一先生には,一般的の臨床方面の解説を,それから,蒲郡の杉浦先生,東京医大の相馬講師には,御自分の御研究について御発表願いたいと思つておりります。

研究 Clinical Research

新生児のRespiratory Distress Syndrome

著者: 室岡一 ,   加藤友久

ページ範囲:P.783 - P.788

緒言
 新生児の呼吸系疾患は,Potterの分類などから知られているように,新生児死亡の重要な原因の一つにあげられている。呼吸系の症状はこの意味から臨床上重要視しなければならないが,さらに大切なことは,単に肺合併症のみでなく,ほかの疾患の場合でもそれが重篤な経過をとると必らず呼吸症状を現わしてくることである。たとえば,頭蓋内出血,感染症,重症黄疸などの場合不定呼吸,無呼吸などみられるのはその良い例である。最近治療の進歩とともに新生児死亡も年とともに減少してゆく傾向がみられるが,ひとり呼吸系の合併による死亡は,減少していない。抗生物質の発達と産科手技の進歩は,感染症と頭蓋内出血を激減せしめたが,肺合併症と先天性奇形による新生児死亡は,依然として従来の状態と少しも変らないから,これらに対する対策を考えなければならない。このうち奇形は,新生児外科の発達によりある程度の治療がなされるがやむをえぬものであり,むしろ改善例の多い呼吸系合併への対策が,重要なのである。このため新生児,とくに未熟児に対する呼吸生理学の解明が,数多くなされてきた。新生児は,出産後しばしば呼吸障害を起こし,ことに,未熟児となると独特な呼吸障害を来してその予後が悪く,死亡例では,病理解剖的に種々な肺所見がみられている。

未熟児における骨髄輸(血)液の問題について

著者: 奥山通雄 ,   沢山興 ,   内田千吉

ページ範囲:P.789 - P.793

緒言
 未熟児の死亡頻度は,保育術式や治療法の進歩によつて年々減少の傾向をたどっている。近代的保育術式の中で,死亡頻度の減少に大きな役割を果したものの中の一つにカテーテル栄養あるいは細管栄養(Tube feeding)がある。しかし,このカテーテル栄養も時には嘔吐が激しく続いたりして不適当な場合が生じてくる。
 かかる場合に,水分あるいは栄養剤等の補給がしばしば非経口的に行なわれるのであるが,未熟児では,特に頻回の血管内注射も困難であり,皮下筋肉内注射では,注射部位にすぐ硬結を作つたりして量的に非常に制限をうける。このような場合,骨髄を利用すると注入操作も比較的容易であり,かつまた,無限の液体受容能があるため量的制限もなく,充分目的を達しうると思われる。

文献紹介

ovarian dwarfism

ページ範囲:P.793 - P.793

 下垂体腫瘍でFSH産生が障害されればhypogonadismになるのは当然で,その尿FSH排泄は減少している筈である。しかし,下垂体腫瘍症状が臨床的に全く見出しえない状態でhypogonadになる症例もあり,これは前者と機序が異ると思われる。動物では性腺または甲状腺を別除すると,その結果,下垂体に腫瘍が発生することが少くない。ヒトではCushing症候群で副腎全剔後に下垂体腫瘍が症状をあらわしてくることがある。本報は初め原発性hypogonadがあつて,その結果,下垂体に腫瘍があらわれたという症例を取扱つた。24才婦人。19才のとき原発性無月経性徴未発育で来院,尿gonadotropin 110 mouse uterine units身長4呎10吋。同胞9名何れも正常。視野・視力に異常なし。甲状腺やや小。内診で子宮著しく小。外性器小児様。ただしTumer症候群の症状はない。副腎甲状腺機能正常域。トルコ鞍レ線像はAP20mm,深さ12mm,面積250mm2。鞍後床不規則石灰化す。4年後(1961)の鞍所見ほとんど同様。diethylstil—besterol治療13個月つづけ,乳房かなり発育し,子宮出血がおこつた(尿GTH 21)のでdienestrol,Enovid,甲状腺末にきりかえ14月。その後15個月治療中止。その時トルコ鞍上記と変らず。

連載講座 胎盤から学ぶ・2

臍帯血管の異常

著者: 相馬広明

ページ範囲:P.794 - P.795

 臍帯の脱垂とか巻絡等によつて,臍帯血行の障害が起こり,児の生命が脅かされることは,誰しもが,経験していると思う。その他,例えば,私共は,Long Cordといえば1m以上,Short Cordといえば,30cm以下を指しているが,このような臍帯の過度の長短によつて,同じく児に障害が起こりやすいことも周知のことである。また,臍帯の真結節は,約0.5%位に見られるが,必ずしも,死亡児に合併するわけでなく,正常分娩児にも時々見られる。つぎに児の生命には,関係はないが,臍帯の粘液状変性を示す局所的な浮腫(Edema)や,静脈のVaricosity(静脈瘤様腫脹)を示す偽結節は,臍帯を検査しているとしばしば見出される。時に臍帯の局所的な血栓(Thrombosis)や血腫などが,臍帯の過度捻転などと合併して発見されることがある。Javertは,自然流産553例の臍帯のうち,53.7%に異常を認めたというが,その異常とは臍帯欠損,狭窄,浮腫,炎症,長短帯,巻絡,捻転,脱垂,真結節,血管異常等であり,これらの異常は自然流産時に限らず,満期分娩時の臍帯異常をも網羅していると思う。このうち狭窄(Coarctation)を来したのが2.7%,血管の異常を認めたのが2.4%といつているが,Coarctationは,臍帯の随所に起こりうるが,特に胎児附着部附近に起こる頻度が高い。

Question aires・15 アンケート

不妊手術について—その1

著者: 西村敏雄 ,   九嶋勝司 ,   足高善雄 ,   明石勝英 ,   川上博 ,   水野重光 ,   渡辺金三郎 ,   藤生太郎 ,   馬島季麿 ,   井槌進 ,   古谷博 ,   石浜淳美 ,   小坂清石 ,   鳥越正 ,   官川統 ,   安達寿夫 ,   百瀬和夫 ,   小国親久

ページ範囲:P.796 - P.803

 ①どのような不妊手術を行なうか。卵管手術法だけか。何故か。
 ② 卵管手術をどういう方法で実施してぴるか(開腹か膣式か。卵管結紮のみか。結紮と卵管一部切  除か)。何故か。使用する糸は何か(絹糸,ブレイン・カットグット,クロモサイズト・カット  クット)。何故か。 

--------------------

Kranke (8)

著者: Y.A

ページ範囲:P.803 - P.803

 "衣食足りて礼節を知る"とか,あの戦争末期から終戦直後にかけてのみじめさは,30代以上のものの忘れ得ぬ思い出の一つである。チューインガム欲しさに,アメリカ兵のあとをついて歩いたこと,自分の体重程もあるリュックを背負つて,列車のデッキにしがみついたこと,ララ物資の古靴を大事に大事に穿いたこと等々,劣等感に脳まされた悲しい毎日であつた。
 それにひきかえ,フラワーモードにフルーツカラー,食べたいものは何でもある今日この頃,全く感慨無量のものがある。

連載 MY THERAPY in series・15

病院内における腟トリコモナスの感染防止

著者: 藤生太郎

ページ範囲:P.804 - P.804

 腟トリコモナスの感染経路はまだ充分明らかではないが,不潔の環境,共同浴場,水泳プール,性交,病院内感染などがその主なるものとされている。
 患者に開腹術その他を行なつて退院させるとぎ始めて腟内容中に「ト」を発見することもしばしばである。手術患者では入浴は禁止しており,また性交の機会もあつたとは老えられないのでその感染は入院中他の「ト」患者の主治医である医師の手指,診察に使用した器具などによつて搬入されたものと考えざるを得ない。

産婦人科領域における貧血と非経口的鉄剤による治療

著者: 古谷博

ページ範囲:P.805 - P.805

 成熟期にある婦人では毎月きまつて月経時に血液を失なうから,それに見合うだけの造血に必要な栄養素が吸収,利用され,造血機能が男性と少しちがつた機序で営なまれていなければ,この漫性的な失血で貧血に陥ることは当然老えられる。
 生体の活動は究極のところは酸素をとり入れ,炭酸ガスと水を排出する一連の化学反応が主体となつているものであるから,酸素を全身に運搬する血色素量が減少する貧血では,全身の活動にとつて本質的な機能低下を来たしてくるわけで,その意味からも,成熟期婦人の貧血は広い意味でなんらかの生活力の減退を来しているわけである。

日常診療メモ・ⅩⅣ

鉗子術の実用性について—高年初産婦の骨盤位分娩への応用

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.807 - P.812

 鉗子術については,前回の日常診療メモ【ⅩⅢ】(臨婦産第15巻第3号)に出口鉗子術を中心にして述べたが,鉗子術はその用途が帝王切開術の安全性増大と,操作が簡単で特別の技術を要することが少なく,しかも,安全性の大きい吸引遂娩術の急速な普及とによつて,最近著しく狭められた感があるので,鉗子術は実際にどの程度活用するのが適当であるかを検討してみる必要がある。
 鉗子術は,周知の適応と要約とに準拠して用いられることはいうまでもない。その適応は成書にあげられている通りであるが,要するに母児の一方または,両方に迫つた危険が,急速分娩で除去出来る総ての場合である。そのうち実地上最も多いのは,分娩の著しい遷延と児心音の継続的悪化である。この場合,要約として胎児が生存し,軟産道が児頭との間に大さの不均衡がなく,子宮口が充分開大した状態にあり,児頭がある程度下降していわゆる鉗子適位にあること,即ち児頭の最大周囲が骨盤入口以下にあり,したがつて児頭の先進部は少なくとも坐骨棘間線Linea interspi—nalisの直上ないし下方にあることが必要である。児頭の第2廻旋が,正常に行なわれている限りでは,内診により矢状縫合の走向,泉門の位置をしることは,児頭の骨盤内進入の程度をしるのに役立つ。これによれば鉗子術は矢状縫合が斜径ないし縦径に一致しているときに行なうべきである。

臨床 血糖測定

血糖測定法(百瀬法)の検討とその産科学的応用

著者: 浜田悌二 ,   蠣崎要 ,   失野良子 ,   大橋勝子 ,   太田紀代子

ページ範囲:P.813 - P.819

緒言
 血糖値の測定は古くから1)報告されているが,現在でも婦人科領域2)のみならず,妊娠糖尿および妊婦の糖同化能3)という点から産科領域では重要な問題のひとつである。
 血糖測定の方法に関しても,Bangの報告を初め極めて多くの方法が発表されている。現在採用されている主な方法としては,Hagedorn-Jensen法4),藤田—岩竹変法,Somogyi-Nelson法5)がある。Hagedorn-Jensen法は測定精度は優れているが操作,試薬の調製が簡単でない点や真糖の測定値より幾分高い値を示すという欠点がある。近年分光光度計を利用する方法としてSomogyi—Nelson法が採用され現在のわが国における代表的方法の一つとなつているが,試薬の調整や保存に不便を覚える難点がある。ここに最近血糖値測定法の一つとして百瀬6),7),8),9)による3.6—ジニトロフタル酸法が発表され,試薬の調整,保存が容易なこと,操作が簡単なこと,さらに測定精度も前2者に劣らぬ成績を示している。そこでわたくしたちの教室の血糖測定にもこれを採用する方針をたてるにあたり,従来の方法との比較検討を行なつた。さらに,従来産褥婦人の血糖値についてはまだ結論が明らかにされていないので,百瀬法により産褥期血糖について検討を試みた。

止血

産科領域に於けるVitamin K1の使用経験

著者: 赤須文男 ,   館野政也 ,   金城国弘

ページ範囲:P.821 - P.823

緒論
 Vitamin Kは血液凝固の1過程であるproth—ronbin形成に重要な役割を演ずるとされ,従来Vitamin Kとしての合成型のK3やK4が用いられてきたがK3やK4はクマリンインダンジオン系の経口抗凝血薬にもほとんど拮抗作用を示さないとされており,しかも,最近K3やK4を新生児出血の予防のため,母体や新生児に投与すると過ビリルビン血症や核黄疸を発生する頻度が高いともされ,赤血球や肝細胞に対してもいちじるしい変化を来たすことが論ぜられている。これに反しVitamin K1は抗凝血薬などにも迅速に拮抗し,過ビリルビン血症や核黄疸をおこすことがないとされている。われわれは抗凝血薬療法に主として用いられるクマリン系抗凝血薬によつて低下する4つの凝血因子,すなわち第Ⅱ因子(プロトロンビン)第Ⅶ因子(プロコンベルチン)第Ⅸ因子(クリスマス因子,PTC,抗B型血友病因子)第Ⅹ因子(スチェアートプロワア因子)の活性を同時に測定できる複合試薬であるThrombotest Owrenを使用し,妊産褥婦にVitamin K1を投与し,その使用前後における凝血時間を測定し,その成績を比較検討した。

薬剤・1

Estriel Depotの分娩時における使用経験

著者: 広瀬多満喜

ページ範囲:P.825 - P.828

緒言
 Estriolは,1930年Marrianが始めて妊婦尿中より分離したestrogenで,estradiol estroneに比し生物学的作用が弱いために,単にestrogen代謝における終末産物としてしか認められず,臨床的にも応用されることは少なかつた。
 1956年Puck & Hubnerは家兎およびモルモットの生殖器に対するestriolの作用をestradiolと比較し,estriolが単にestrogenの終末排泄物ではなく子宮頚部,腟および恥骨結合に対してつよい作用を示すことを報告し,さらにPuckは,estriolを閉経後の婦人に投与すると頚管および腟に作用し,子宮腟部をを結合織の軟化,充血,水分貯溜のために軟化し,腟上皮細胞の角化作用を有することを認め,さらに家兎およびモルモットに投与して恥骨結合の離開作用のあることも実証しており,estriolは,estrogenの作用機序の中心で大きな意義を有するものであると考えた。

薬剤・2

乳房欝滞に対するキモトリブシンの効果

著者: 塩島令儀 ,   太田徹 ,   松井豊和

ページ範囲:P.829 - P.831

はじめに
 産褥において,乳房を冒す最も普通の障害は,乳房欝滞である。これは,乳汁分泌が開始して2〜3日してからおこり,乳房は腫脹し,疼痛を生じ,熱感を感じ,乳房が非常に強く緊満するために乳汁分泌が障害され,さらに進むと腋窩腺も腫脹し,疼痛を伴なうために上肢の側方挙上は不能となる。
 この治療としては従来,氷あんぽう,水分制限,マッサージ,塩類下剤の投与,ホルモン剤の投与等が有効とされていたが,何れも満足すべき効果がえられなかつた。

薬剤・3

局所麻酔剤ヘキソチオカインの使用経験

著者: 姉歯皎 ,   橋本光雄 ,   大久保隆利

ページ範囲:P.832 - P.834

緒言
 薬剤を用いて局所を無痛とする試みは,古くからエジプト,ギリシヤですでになされていた。東洋における灸も,この目的のために用いられていた。しかし,局所麻酔の歴史で最も大きな発見とされるのは1851年Pravazが,局所麻酔剤の皮下注射法を始めたことであり,Woodはこの方法でモルヒネや,阿片チンキを神経の近くに注入した。さらに1860年NiemannおよびLosstnがコカイン(cocaine)を分離して以来,その局所麻酔剤としての利用は広く各科領域にわたったが,一方これが,盛んに用いられるにつれて,コカイン毒性の大なることも認識されてきた。その後,毒性の少ない局所麻酔剤の研究が各所で行なわれるに至つたが中でも1900年Einhornの発見したプロカイン(procain)はその安全性という点から,現在も広く一般に用いられて来ている。今日では,さらに他の合成物質の研究が種々行なわれており,エフォカイン(efocaine),ポントカイン(pontocaine)メチカイン(methycaine),ヌペルカイン(nupercaine)キシロカイン(xylocaine)等が用いられるにいたつた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

今月の臨床 着床環境の改善はどこまで可能か?―エキスパートに聞く最新研究と具体的対処法

74巻11号(2020年11月発行)

今月の臨床 論文作成の戦略―アクセプトを勝ちとるために

74巻10号(2020年10月発行)

今月の臨床 胎盤・臍帯・羊水異常の徹底理解―病態から診断・治療まで

74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

74巻5号(2020年5月発行)

今月の臨床 エコチル調査から見えてきた周産期の新たなリスク要因

74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

今月の臨床 はじめての情報検索―知りたいことの探し方・最新データの活かし方

74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

今月の臨床 産婦人科領域で話題の新技術―時代の潮流に乗り遅れないための羅針盤

73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

icon up
あなたは医療従事者ですか?