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研究
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1836年にNasse1)が妊娠貧血に初めて注目してからすでに120余年の歳月が流れた。Kühnel2),Strauss3),Schultz4),鈴木5),志多6),河方7)らをはじめとし,最近ではGoldeck8),Kerr9),古谷10),森田11)らの枚挙にいとまのない数多くの業績が発表されているが,産科の臨床に当つて妊娠貧血の検出,治療ないし予防は遺憾ながら軽視されている傾向が強いように思われる。妊婦の合併症として妊娠貧血が大きく採り上げられない理由として考えられることは,先ず第一に自覚および他覚症状が薄弱であることが挙げられる。一般の貧血は息切れ,幻暈,心悸亢進,易疲労などの非特異的ながら健康者にはみられない一連の低酸素血症に起因する自覚症状がその発見に役立つのであるが,妊婦の場合は腹部の膨隆や妊娠による自律神経系の失調などが原因で一般貧血と類似した症状を訴え,さらに真の貧血が存在してもその症状は打ち消されて妊婦の自覚に登らない。すなわち,妊婦初期3カ月と末期3カ月とでは各々息切れ25%,37%,幻暈39%,16%,心悸亢進40%,47%,易疲労70%,69%の訴えが著者たちの調査ではあり,血液値の低下する妊娠末期に必ずしも訴えが多くなく,その反面,妊娠初期でも貧血様症状を訴えるものがかなり多いことが分る。
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