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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科17巻6号

1963年06月発行

雑誌目次

グラフ

Pelvic Arteriographyによつて診断し得た絨毛上皮腫像

著者: 相馬広明 ,   武市恂

ページ範囲:P.451 - P.452

 絨毛上皮腫が血行性に富む腫瘍である点に着目しての特殊診断法として,私共は骨盤動脈血管撮影法(Pelvic Arterio—graphy)を行なつて来ている。この方法は腫瘍の局在的形態診断法ともいうべきであつて,その術式は非観血的に股動脈より挿入したカテーテルにより造影剤(76%Urografin)を注入し,と同時にロール・フイルムを用いて10秒間連続撮影をする。その結果腫瘍部に相当して撮し出されたhyper—vascularな像や,不規則な輪廓像などを診断の指標とする。そのうちの2例を秒を追つてお目にかける。

提言 PROPOSAL

病院と新生児管理の問題

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.453 - P.455

 東大小児科の馬場助教授の提言に端を発した新生児の研究および管理についての討論は,九嶋,安達,官川の諸氏により活発な発言がみられた(本誌16巻10.11.12号)。これに対して再び小児科医あるいは病院管理の立場から,意見を求められたのであるが,4氏の御意見はまことに適切であり,反論をおこすこともない。それぞれ立場が違うので表現は差があるが,期するところは同一であるように推察された。
 しかしながら,新生児の問題は新らしく未熟であるために,今後なおいくたびか問題として提示されるであろう。そこで病院の立場から所感を述べさせていただくことにする。

子宮後屈と外来治療・私の考え方・—本誌2月号アンケートの回答に関連して

著者: 小国親久

ページ範囲:P.455 - P.456

 子宮後屈症にたいして如何するか。移動性子宮後屈症の外来治療をするか,しないか。
 この問題は,現在多くの権威者たちが子宮前屈症と同様に子宮の1つの状態であるに過ぎなく,したがつて異常ではないから,ことに改ためてとり上げる必要もないと主張されるところだと思われる。

「アンケート・子宮後屈症の取扱いについて」に対する一末端開業医の意見

著者: 本仙一郎

ページ範囲:P.456 - P.457

 本誌17巻2号「子官後屈について」各大学教授,助教授,講師諸先生その他わが国の代表的著名病院の婦人科の御権威からの貴重なアンケートを拝読して非常に参考となりました。
 ①から⑥の項目中⑤の移動性子宮後屈に開腹手術することがあるか?について17人の答があり大別すると開腹手術しないが3,必要に応じて開腹するが13,殆ど全部に行なうが1というのには私として意外であり中には子宮後屈は生理的なものと極言せられる先生もあるのは驚きでありました。私は此処で子宮後屈は疾病であるや否やを論争するつもりではありません。私は子宮後屈が移動性であつてもこれが円靱帯短縮術を行なつた場合今迄知られてなかつた過誤の2,3について報告して皆様の御参考としたいのです。私は数年来開腹手術の際全例について円靱帯の骨盤内走行を観察しておりますがこの走行は非常に個人差の多いものでその異常と認められるものに次の3つがあります。

奇形に関する研究・綜説・症例報告を望む

著者:

ページ範囲:P.457 - P.457

 本誌前号,本欄の冒頭に貴家教授の発言があつて,サリドマイド禍研究班実現前後の雰囲気が一種騒然たる調子を帯びていたことがよくうかがわれた。ジャーナリズムの活溌な報告に比して,学界からの発言は極めて慎重であつたが,貴家教授の伝えられているこの問題にまつわるムードは普く臨床の場に押し寄せていた。かりそめの発言が与える深刻な影響を顧慮されていた専門家諸賢の心づかいも,研究班実現,そして医学総会における森山教授の画期的な奇形児出生統計の発表などの成果へ着実に実つていつたことは大いに喜こばしい。この際,むしろ嚢中に貯えおきの症例,類似症例などの積極的発表により,一層,問題の学的究明に資せられんことを望みたい。
 「世界女族物語」という映面ではサリドマイド・ベビーの写真が編集されていて,賛否交々の物議をかもしていたが,いずれもそのいたましさに自説の出発点をもつているという事実は蔽うべくもない。産科学が,このいたましさの感情と全く無縁に,問題究明にすすむということも,また有るべくもないことではなかろうか。必要以上に脅え怖れる妊婦の心事はもはや一笑に付し難いまでになつている。

研究

血中癌細胞の実験的追求

著者: 井槌進 ,   八木幹夫 ,   清永明格 ,   相浦昭彦

ページ範囲:P.459 - P.465

はじめに
 癌細胞が癌患者の流血中に遊離している事実は,1869年Aschworth1)が末期癌患者の血液の単純塗抹標本中に偶然癌細胞と思われる異型細胞を発見して以来,Schleip2)(1906),Ashoff3)(1906),Ward4)(1906),Marcus5)(1919)らによつて散発的に報告されてきた。しかし,流血中の癌細胞の検索に関する系統的な研究を始めて行なったのはPool & Dunlop6)(1934)であり,この問題が注目され,大きな関心の的になつたのは1955年En—gell7)が詳細な研究を発表して以後のことである。
 もちろん,今日の癌細胞診にも限界があり,流血中の癌細胞の同定に関してもなお問題が残されているが,癌患者の流血中に癌細胞が出現しているということは,その後の諸家の報告から,現在ではほとんど明らかなこととされている。しかし,癌細胞が血管中をかなり早期から循環しているものの,癌の血行性転移は少なくとも早期癌においては稀である。

子宮頸癌・1

子宮頸癌々細胞の電子顕微鏡的観察—特に基底膜消失との関連について

著者: 姉歯皎 ,   大久保隆利 ,   東岩井久

ページ範囲:P.467 - P.470

いとぐち
 著者ら13),18)が子宮頚癌のC.P.L.1),12)分類と間質変化との関係を電子顕微鏡的に追究した結果,C.P.L.各型間に基底膜の変化およびコラーゲン形成にかなりの差があることを見出した。他方癌細胞についての電子顕微鏡的研究では癌細胞を決定づける質的変化は未だ見出されてはいないが,正常細胞とは異つた所見3),5),8),9),11),14),19)も多く報告されている。今回著者らは子宮頚癌癌細胞を基底膜消失との関連に注目して電子顕微鏡的に観察した成績をここに報告する。

子宮頸癌・2

子宮頸癌の小分類とリンパ節転移

著者: 大久保隆利 ,   姉歯皎 ,   東岩井久

ページ範囲:P.471 - P.476

はしがき
 手術子宮頚癌の予後がリンパ節転移と密接な関係にあることは衆知の事実である。当教室においてはこのリンパ節転移の要因について種々の方面より追究を続けているが,今回は子宮頚部における原発巣の深達度とリンパ節転移の頻度との関係について興味ある知見を得たのでここに報告する。

子宮頸癌・3

子宮頸癌周囲組織の肥胖細胞について

著者: 野田起一郎 ,   姉歯皎 ,   大久保隆利 ,   駒幸男 ,   遠藤延三郎

ページ範囲:P.477 - P.482

はしがき
 子宮頚癌において間質と実質との関連を重視したC.P.L.分類7)が手術子宮頚癌の予後を比較的適確に表わした事実1)に基づき,大久保20)および駒21)は電子顕微鏡的にC.型およびP.L.型の差異を追究した結果,腫瘍基底膜の状態およびコラーゲン形成にかなりの差があることを認めた。一方北西8)はヘパリンが溶液性コラーゲンの線維形成作用を強化し,この際,肥胖細胞が密接なる関係を有することを報告している。このような報告に照らし,肥胖細胞と癌予後との関係が推定されるので著者らは電子顕微鏡用に作成したメタクリレート包埋ブロックより光学顕微鏡用トルイジンブルー染色標本を作り,metachromasiaを示す顆粒を有する肥胖細胞を数量的に観察し,C.P.L.分類との関係更にリンパ節転移の有無との関係につき興味ある知見を得た。

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DESKジョッキー(4)—洋書が売れる

著者:

ページ範囲:P.465 - P.465

 医学オリンピックとも言われる総会は終つた。非常な活況だつたことは,マスコミを通じて,接する先生方の見聞を通じて,そして総会へ出張して行つた同僚の興奮半ばの土産ばなしを通じて知つた。終了後の寄稿の数量もぐんと増え,引きしまつた感じの業績が部厚い原稿用紙の重さになつてデスクにも届いてくる。有形無形の収穫が,病み傷ついた患者の心や身体に美事な糧となつて浸透してゆくことにも大きな希望をもちたいものだ。
 医学書院の学会重視は厳然たる社是であり,編集,企画,販売の凡ゆる面で学会の傾向が貴重な指針となることを確信し,その線に沿つた活動がとりも直さず学界への貢献ともなると考えている。その面での,我々の収穫もまた断然大きかつたのである。

文献紹介

胎盤血の新生児輸血,他

ページ範囲:P.476 - P.476

 胎外へ出た新生児が,胎児期と機能上著しく異るのは,呼吸と循環とであろう。胎外へ出るや否や肺は拡張(大体60%)し,肺血管床が増加(循環量の20%)する。この血液量は出産数分以内に胎盤血から補給される。それは子宮収縮で胎盤への圧が加わり,大気中の新生児より圧が大となるために起ると解される。胎外へ出て数分内の新生児体重増加から計算して,胎盤から80mlの血液が入つてくるとおもわれるが,分娩と同時に臍帯を切離すると,その血液が胎盤に残されることになる。それで臍帯を切離するのは,ずつと遅れるのが正しい。帝王切開で産れた新生児では,産道で胸部が圧迫されないが,子宮収縮で胎盤血を新生児へ送りこむことがないわけである。胎内より低い位置に新生児をおけば少量の胎盤血は新生児へ流れてゆく。緊急帝王切開で母子ともに至急出産を要するときは,臍帯がすぐ切離され,胎盤血は新生児へは入ってゆかない。正規予定の帝王切開では新生児死亡4%であるに反し,緊急切開では8%以上で,これは種々の原因によるが,胎盤血が流れこんで,肺血管床拡張を満してくれない為にもよるのである。そこで著者は無菌漏斗に胎盤を取り,臍帯を切りはなした新生児は蘇生台上におき,胎盤重量を判定しつつ,その血液を臍帯を通して輸血する方法を考案した。

Question aires・11 アンケート

流産の取扱いについて(その1)

著者: 藤原幸郎 ,   渡辺金三郎 ,   九嶋勝司 ,   赤須文男 ,   足高善雄 ,   藤生太郎 ,   貴家寛而 ,   竹内繁喜 ,   西村敏郎 ,   福田透 ,   田代仁男 ,   石浜淳美 ,   室岡一 ,   小坂清石 ,   白川光一 ,   官川統 ,   安達寿夫 ,   中嶋唯夫 ,   下平和夫 ,   遠藤幸三

ページ範囲:P.484 - P.491

 ①流産切迫にどういう処置をとつているか。何故か。
 ②習慣性流産をどう予防するか。 1)ホルモン療法だけをしているか。どういう内容か。何故か。 2)頸管拘縮手術(シロヅカ法,変法,マクドナルド法,変法)をするか。   妊娠何カ月位に行なうか。縫合糸には何を用いるか。何故か。 3)手術にホルモン療法を併用するか。何故か。 4)どういう方法が最も有効と考えたか。

連載 MY THERAPY in series・11

Intracranial irritationの治療

著者: 藤井とし

ページ範囲:P.492 - P.493

 新生児を取り扱うに当つて,妊娠,分娩の異常で生まれた児に適切な治療を行ない,後遣症を残さないよう,死から救うことが大切な勤めと思う。新生児初期にみられる異常は,その大半が妊娠,分娩に関係した。即ち,外傷,無酸素症による変化で,脳および肺の変化が著明であり,剖検によつても主変化はこの両臓器に見られる。Collisは異常分娩,遷延分娩,急速分娩,臍帯脱出,母体の妊娠中毒症の際は常に脳の障害があると思わねばならないと述べている。このような場合に見られる症状は,中枢神経症状と,呼吸循環器の症状で,蒼白,チアノーゼ,無呼吸発作,頻数呼吸,無欲,筋緊張低下,四肢強剛,痙攣,搐搦,頭部後屈,泉門膨隆,眼球振盪,脳性啼泣,皮膚異常発赤,嘔吐などである。脳に起る変化として,頭蓋内出血,無酸素性の脳細胞の傷害,脳浮腫などが起ると考えられている。Craigは脳の出血と浮腫とは臨床上鑑別の困難なことから,これを一括してIntraCranial irritationと呼んでいる。私も出血と浮腫は詳細な観察と検査により鑑別しうることもあるが,診断の困難なことをしばしば経験する。出血の診断のもとに解剖した結果,脳には浮腫以外に変化の認められないことが意外に多い。そこで脳に変化を起す仮死とIntracra—nial irritationの治療を不十分な点が多いが述べさせていただく。

子宮腔内注入法の2,3

著者: 安武豊志男

ページ範囲:P.493 - P.493

(1)不妊性婦人の外来診断上,子宮発育不全とか卵巣機能不全その他,内分泌機能障害などの主症のありなしを問わず卵管疎通性の検査を行なう必要があるが,不妊歴に関係なく子宮卵管造影法(ヒステロ)を行なっているのを見受けるところがある。
 不妊を訴えて来院する患者のなかには,結婚後1年にもならないものとか,正常分娩後明らかに内分泌障害を起しているものなどが多く混つている。この場合無選択に子宮卵管造影法を行なうべきかどうかには問題があると思われる。通常八木式通水法が紹介されているが,私は専ら手圧式通水法によつて疎通性のsc—reeningをなし,なんの雑作もなくするすると注入できるものは疎通性は良好であるとみなし,全液注入はできるが,著しく抵抗圧の強いものや,逆流量が多く,機能的ないしは器質的に異常があると診られるものについてのみ,ヒステロを行なうことにしている。

講座 手術と適応

5.子宮脱・腟脱の手術

著者: 真田幸一

ページ範囲:P.494 - P.495

子宮脱治療の原則
 女性の骨盤は,腹腔の最下端にあつてこれを閉鎖し,腹腔内諸臓器を支持する働らきとともに,いつたん妊娠すれば,かなりの大きさの胎児を通過せしめて,分娩という大きな排出作用を営なまねばならぬという,一見相反する二つの使命をともに有している。従って女子の骨盤においてはその最下端を形成する臓器は骨や軟骨ではなく,子宮という筋性器官であり,これを基靱帯をはじめとする子宮諸靱帯が牽引して,その下降を防いでいるわけである。長年月にわたる腹圧や頻回の分娩などが原因となつて子宮が下降すると,最早や子宮は腹腔下端の閉鎖装置たる機能を失ない,諸臓器の脱垂殊に膀胱や直腸の脱が起り,いわゆる子宮脱(下垂)なる疾患が成立するわけである。かかる子宮の下降には,前述の牽引装置の他に骨盤底の諸筋群が,支持装置として密接に関与してくるのはいうまでもない。従って,牽引装置と支持装置のいずれが疾患の成立に主役を演ずるかという議論は別として,子宮脱の手術を行なう場合には,この両者をともに補強する必要がある。
 子宮脱の根本的治療方針は,この下つた子宮を引き上げるとともに周囲の支持装置を補強し,子宮にふたたび腹腔の閉鎖器官としての位置形態を復元せしめ,随伴する障害を完全に消失せしめるとともに,さらに理想的には,排出器官としての機能をも保たしめることにある。

臨床 新生児・1

新生児の胃内圧について(第1報)

著者: 佐久間浩 ,   荒井豊

ページ範囲:P.497 - P.500

緒論
 中村は新生児の胃,食道機能不全(Gastro—esophageal Imkompetence)について,一般に乳児は哺乳に際して乳汁と共に大量の空気を嚥下することが知られているが,哺乳後この空気が適当に排除されていないと,空気が幽門洞にあって乳汁の十二指腸への流れを妨げ,また胃内腔圧も高まつて乳汁が食道に逆流する場合もあると述べているが,この胃内腔圧上昇は新生児の吐乳の重要な一つの要因であろうというのは容易に納得のゆくことである。ところがいつたい新生児の胃内圧はどうであるか,その胃内圧が果してどんな時に上昇するものであるか,たとえば新生児が号泣したり,強くいきんだりした時は,胃内圧に果して変化が来るかどうか,胃内が空虚な場合と,胃内に空気がある場合には胃内圧が一体どのようになるか,こういう点を解明した資料が見当らないので,われわれは種々と工夫,考案をこらした結果,一定の条件のもとで胃内圧の測定を行ない,現在まで少数例ではあるけれど,ある結果を得ることができたのでここに報告させていただく。

新生児・2

新生児胃レ線像に関する2,3の知見について

著者: 江部道夫

ページ範囲:P.501 - P.505

緒言
 新生児消化管のレ線像については,多くの報告があるが,その見解は研究者によつてまちまちで,新生児消化管研究の困難性を示し,未だ統一された見解のないのが現状である。とくに分娩直後の胃について検索を行なつているものは極めて少ない。しかしその中でも,分娩直後の新生児胃内に空気が存在するということは,すでに1886年Breslau1)により発見されている。そこで私はこの気泡陰影および造影剤による陰影のレ線学的検索を行ない,その時間的変化について,2,3の知見を得たので報告する。

新生児・3

抗Rh0抗体による第1回妊娠児にみられた激烈な新生児赤芽球症の1例

著者: 一宮勝也 ,   田中寿一 ,   吉田種臣

ページ範囲:P.506 - P.508

はしがき
 1940年Landsteier & WienerがRh因子を新しい血液型群として取り入れてから,この応用範囲は広く医学界の各領域にわたつた。
 産婦人科領域では新生児赤芽球症やABO式血液型適合輸血の際の事故の解明に役立つた。なかでも新生児赤芽球症は,それまでは原因不明で全く治療方法が見当らなかつたために,これの解明は多くの不幸な児を救うことができるようになり,産婦人科領域においては,一大福音となつたのである。欧米ではRh0因子陰性の者の頻度が比較的高率(約16%)であるために200例の新生児に1例の赤芽球症を認めるといわれているほどなので,産科外来においては妊娠の始めに夫婦間のRh因子の検査が施行されていると聞いている。これに反して我が国においては,RhO因子陰性の頻度は.極く低く約0.6%程度であるために,RhO因子による新生児赤芽球症は比較的に稀であるのと,抗Rh血清が高価なために,産科外来において,充分に,本検査が行なわれていない現状である。しかし,Rh抗体は自然抗体でなく,免疫抗体であるが故に,初回妊娠分娩の児はほとんど軽度の黄疸に溜り治療を必要としないのが普通であるが,今回,われわれは初回の妊娠分娩で激烈な核黄疸を惹起して,不幸な転帰をとつた新生児赤芽球症の1例に遭遇したので,ここに報告する。

薬剤・1

産婦人科領域における消炎酵素Kimopsinの応用

著者: 福田透 ,   曾根原衛雄 ,   坪井照夫

ページ範囲:P.509 - P.512

緒言
 最近酵素化学の目覚ましい進展に伴なつて各種の酵素製剤が次々に登場し,医学領域においても各方面に応用が試みられている。
 吾々は最近キモプシン(エーザイ)の提供を受け2,3の産婦人科的疾患に対する治療効果を検討する機会を得たので以下その概要につき報告する。

薬剤・2

Depot剤としてのEstriol tripropionateの向性器作用とその臨床的応用性について

著者: 楠田雅彦 ,   松本道雄 ,   熊本有宏

ページ範囲:P.513 - P.520

はじめに
 Puckら1)〜5)の発表以来,ながらく日の目をみなかつたEstriol (Et)は,その特異性が注目,再認識されて臨床的にも積極的に応用されるようになつた。
 最近の性steroids化学は,その作用の強化とともに長期持続の方向に進んでいる傾向にある。現在臨床上に使用されているEtはfreeのEtであり,estrogen剤としては依然として取り残された存在ともいえる。Etの特異性および臨床効果よりみて,その作用の長期持続が望まれていた。

薬剤・3

人工妊娠中絶静脈麻酔時における術中・術後の悪心・嘔吐などの副作用防止対策としてのStrocain錠の使用経験

著者: 小国親久 ,   新井田孝市 ,   稲垣豊

ページ範囲:P.521 - P.525

まえがき
 麻酔の進歩により,従来,無麻酔〜局所麻酔を行なつていた人工妊娠中絶にも静脈麻酔・吸入麻酔などが使用されるようになつた。とくに静脈麻酔は,近来,驚異的に使用されるようになり,副作用が少なく麻酔が完全な短時間静脈麻酔剤が続々創製されるに至つた。しかし,学者達のかかる努力にかかわらず,呼吸抑制の如き重症な副作用は別としても,興奮・咳・吃逆とくに悪心・嘔吐などの副作用を術中または術後におこし我々をあわてさせることがしばしばある。これが予防対策として筆者の1人稲垣は,さきに6140Rp (Nova—min)の注射を用い有効であることを発表したが,注射という繁雑をさけ,内服するだけでその効果の期待できるものをさがしていたところ,今回,Strocain錠を使用する機会をえ,予期以上の良い結果をえたので報告する。

薬剤・4

ピリドキサール燐酸(ピドキサール)による妊娠悪阻の治療

著者: 中村猪三郎

ページ範囲:P.526 - P.528

まえがき
 妊娠悪阻の発生機序,病態生理に関しては未だ定説がなく,したがつて治療法も多種多様で,大部分が対症療法の域を脱していない。妊娠悪阻の場合,中枢神経系,自律神経系,内分泌系,血液性状などに変化がおこり,これらが代謝に種々の障害を与えることは明らかである。
 近時,妊娠時の各種代謝,肝機能などが徐々に究明され,ビタミンB6との関係が重要視されつつある。今回中外製薬より活性型ビタミンB6—Pyridoxal-Phosphate−10mgを含んだピドキサール注射薬の提供を受けたので,これを妊娠悪阻患者に使用し,治療効果を検討した。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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