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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科17巻9号

1963年09月発行

文献概要

綜説 General view

胎児性血色素について

著者: 古谷博1 木村好秀1

所属機関: 1東京大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.697 - P.707

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はじめに
 血色素は赤血球中に存在し,酸素の運搬をつかさどる赤色の色素蛋白質で,鉄ポルフィリン色素のプロトヘムと蛋白質のグロビンとが結合した物質である。哺乳動物の血色素の分子量は66,000〜68,000で,血色素には0.34%の鉄が含まれ,この鉄はすべてヘム鉄である。血色素1分子あたりに鉄が4原子含まれているから,血色素1分子には4分子のヘムが存在することになる。そして,この血色素にはその中に含まれるプロトヘムは同一であるのに,分子内構造の異なるグロビンが結合しているために,種類のちがつたいくつかのものが存在することが漸次明らかにされてきた。
 1866年Korber1)は酸およびアルカリによる血色素の分解時間を測定しているうちに,同一実験条件のもとでも動物の種族によりこれが著しく異なること,さらに,人の胎児血液中には成人血液中に存在する血色素に比らべ,アルカリに対する抵抗性が著しく強い血色素が存在することを発見した。これに対してPreyer2)(1871)はKorber1)の実験が純粋な血色素についてでなく全血溶液を用いた点から,この結果は血液の組成の差異によるものとして反駁した。しかし,その後Korger3)(1888)は血色素結晶についてKorber1)と同様な実験を行ない彼と同様な結果をえた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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