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研究 Clinical Research
紙状児について—特に胎盤からの観察
著者: 相馬広明1 吉田啓治1 立岡脩1 藤澤伸好1 中井才扛1 指田達郎1
所属機関: 1東京医科大学産婦人科教室
ページ範囲:P.709 - P.714
文献購入ページに移動双胎妊娠に伴う色々な児の障害のうち,紙状児Fetus papyraceus,あるいは,圧縮児Fetus com—pressusの合併は,子宮内での胎児の発育にあたつて,生と死との共存という明確な二者の対照をもつ上ではなはだ興味あるものである。すなわち双胎妊娠でありながら,一方の児は,妊娠の過程を経て生活児として娩出するのに反し,他方の児は妊娠の途中で死亡し,そのまま死亡児として稽留し,著しく圧縮され,脱水化し,あるいは,浸軟児として存続するが,とにかく生活児の娩出まで胎内に共存するという奇現象を示す訳である。しかも,非常に小さいため卵膜内に包まれ,時には,看過されてしまうこともあるし,また一方,X線診断によつて識別されるほど大きいこともある。従来の紙状児に関する報告例ははなはだ少数であるが,その報告の興味は専ら紙状児が存在したという事実や,紙状児そのものの死亡推定時期などに向けられており,紙状児を伴つた双胎胎盤についての観察や,その発生機序などについての考察は,殆どなされていない。私共は,この機会に,私共の経験例から紙状児について,特にその胎盤を基にした観察を試みたので,これらについて報告するとともに発生機序についてもふれたいと思う。
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