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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科18巻2号

1964年02月発行

雑誌目次

特集 新生児の研究と臨床--第1回新生児研究会シンポジウム

—第1回新生児研究会—巻頭言

著者: 九嶋勝司

ページ範囲:P.93 - P.93

 新生児は小児科に入院すれば一人前の入院料を必要とするが産科にいるかぎり病児でも入院料がいらない。これは新生児は母体の附帯的存在であるという概念に発していると思う。新生児がこのような不当な取扱いを受けている理由は保険側の無理解のみにあるとはいわれないようである。新生児は母体の側におけば自然に育つてゆくものであるという態度をとつてきたのは他ならぬ過去の産科医であつたのではあるまいか。小児科は正常児さえも病児のような扱かい方をする傾向があつたのに対し,産科では病児さえも正常児なみの取扱かいをすることがなかつたであろうか。それほどでなくとも,新生児は小さすぎて,診ても判りにくく,反応力も弱いから病像も大人のように明確ではないから,けつきよく見ても仕方がないのだという諦観があつたことは否定できまい。小児科方面で未熟児に関する研究が熱心に行なわれるようになつたのに刺激されてか,ここ2〜3年来,本邦産科学界においても新生児に関する関心が急速に高まつてきた。昨年8月,第1回新生児研究会を開催したところ,炎暑の候にもかかわらず,集るもの500余名という大盛会だつたことも,この辺の情勢を反映したものであろう。
 新生児研究の最大の難関は検査物の採取困難とたとえ採取しても検査に充分な量が得られぬことにあつた。しかるに,微量定量法の進歩は次第に新生児から採取した試料でも測定が可能になりつつある。

分娩障害後遺症

新生児期異常所見と小児脳障害

著者: 安達寿夫 ,   伊藤敏 ,   赤松信代 ,   田上三雄

ページ範囲:P.95 - P.98

I.研究目的
 小児脳障害の原因として分娩障害の重要性は以前から注目されていたが,調査者・調査対象・調査方法などによりその結果には大巾な相違がある。産科関係者以外の人々による脳障害児のretrospectiveな出産歴調査では,産科的事項の調査方法が適切でなかつたりまたは母親の先入観などのため,分娩障害にその原因をあてはめる率が高く,反対に仮死出生児の事後調査などのごとき産科側からのprospectiveな調査は軽度のものが含まれるためと全体として限られた例が対象となるためおよび教育機関など整備された産院出生児の予後調査のため,産科因子による障害例を発見しがたくそのために対照と差を認めない報告が多い。
 結局どの程度のものからどの位の率で,またどのような環境の分娩が障害をのこし,それが新生児期の他の因子とくらべ小児脳障害の因子としてどの程度の重要性をもつかという臨床上もつとも肝腎な点では各関係者をなつとくさせ得るような報告がほとんどない。

分娩時の条件が児の知能発育に及ぼす影響の考察

著者: 津野清男 ,   遠藤正文 ,   村山貞雄

ページ範囲:P.99 - P.100

 愛育研究所児童教育部では毎年約2,500件の幼児知能相談を扱かつており,その知能指数平均値は113,中央値は117程度で,標準偏差が約23,歪度は−0.5,知能指数が69以下の精薄算は6%内外にみられる。被検児の殆どは満3才から7才までの年代で,大部分は東京山の手地帯のサラリーマン家庭の児童であり,愛育研究所附属愛育病院で出生したものもあれば他で出生したものもある。
 分娩時の条件が児の知能発育に及ぼす直接の影響を考察するには,多数例について妊娠分娩当時から出生後の各段階にわたりフオローアップスタデイによる観察を継続し,しかも生後における傷病や育児環境の適否などを考慮に入れて判別を行なわねばならないが,我々は将来かかる仔細な検討を試みる際の着眼点を求める意味で,さしあたり上記のような被検児につき妊娠分娩当時の状況を調べ,これによつて条件別に分類し,それぞれの知能指数の概況を比較してみた。

岡大産科分娩児の予後追求

著者: 橋本清

ページ範囲:P.100 - P.103

 本邦においてある特定病院における一定期間内の分娩総数について,児の予後を正確に診査し分娩状態との関係を観察した報告は意外に少ない。最近脳性小児麻痺の問題が重視され,小児科医は多数の脳性小児麻痺児について多角的な検討を行ないつつあるが,我々産科医としてはこれと立場を替えて自分の取り扱つた分娩児全体の中からどの程度異常児が見られるか,またこれらの異常児は果していろいろな分娩障害とどのような関連をもつているかなどを正確に診査し検討することが重要な課題ではないかと考えられる。この意味から我々は去る昭和33年以来,岡大産科分娩児の予後追求を行なつてその成績を発表してきたが,今回は33年から37年に至る5年間の結果がまとまつたのでここに報告し諸賢の参考に供したいと思う。
 まず調査状況は第1表の如く,5年間の妊娠29週以後の総分娩数2482例中,受診者及び通信解答者が2335例で,他に死産および生産児死亡と判明しているものが68例あり,合せて調査成功率96.8%という高率である。

分娩障害にもとづく中枢神経系後遺症

著者: 有馬正高

ページ範囲:P.103 - P.106

緒言
 分娩障害にもとづく中枢神経系後遺症の実態を把握するためには,1)他の種4の原因にもとづく脳障害を除外すること,2)出生時の分娩経過や新生児の状態を正しく確認すること,の2つの条件を満足することが必要である。1)の条件を満足するためには,詳細な臨床的ならびに病理学的検索が要求され,2)の条件はprospectiveな観察または分娩当時の正確な記録を参照にすることが要求される。
 本稿は主として他の原因による脳障害の除外,分娩障害による脳傷害の発症機序,retrospectiveに観察した場合に推定される脳障害の原因中分娩障害の占める頻度,などの点につき述べさせていただく。

Apgar-scoreと後障害との関連性

著者: 馬場一雄 ,   檜垣嘩夫 ,   中村聖 ,   村木悦子 ,   吉野良寿 ,   佐野幹子 ,   名取光博 ,   柳田昌彦 ,   藤井とし ,   小宮弘毅 ,   内海捨三郎 ,   服部智 ,   岡宏孝

ページ範囲:P.107 - P.109

 従来分娩傷害とその後遺症との関係をみたものでは,Retrospectiveには馬場,有馬,福山などかなりの報告がみられるが,Prospectiveにみた報告は少く,わずかに津野,内藤,九嶋などの報告がみられるだけのようである。
 我々は後遺症をProspectiveに観察する意味で,新生児仮死の程度をあらわすApgar-scoreを用い,これと後遺症との関連性を若干追求したので報告する。

〔追加 1.〕真空吸引遂娩児の予後に関する知見,他

著者: 飯田無二 ,   阪口彰 ,   斎藤真平 ,   高柳真

ページ範囲:P.109 - P.110

 私達は昭和36年3月から昭和38年6月までの吸引遂娩児144例を対象として,分娩時に発生する児側の障害およびその予後について調査検討を行なつた。
 分娩時発生する障害は,頭血腫9.02%,頭皮損傷6.25%が主なもので,巨大頭血腫を発生した1例が娩出後19時間で死亡したが,剖検の結果,主病変は頭部血腫と嚥下性肺炎で,脳実質に変化なく,従つて吸引遂娩術によると考えられる頭部の出血性病変がどの程度死因に関与しているか不明であつた。

薬物中毒

脂溶性と水溶性ビタミンK製剤の毒性の比較

著者: 河野睦明

ページ範囲:P.113 - P.115

はじめに
 出血予防の目的で水溶性ビタミンK製剤を新生児に投与した場合,成人に較べて重大な副作用を起しやすいことは既に幾多の報告があるが,ここでは各種K製剤の毒性の比較とその投与量について,文献的考察と我々の行なった2,3の研究から概説する。

抗結核剤の胎児に及ぼす影響

著者: 藤森速水 ,   山田文夫 ,   渋川登 ,   豊田長久 ,   岡部秀年 ,   篠崎輝男 ,   渡辺和夫

ページ範囲:P.116 - P.118

 サリドマイドによる奇形発生が問題になつて以来,特に妊娠中の薬剤服用に関しては一般につよい関心がもたれるようになつた。抗結核剤の胎児に及ぼす影響に関しては,私どもの教室ではすでに十余年前よりいろいろ研究発表して現在にいたつているが,今日は抗結核剤の中で,ストレプトマイシン,カナマイシンの2つを採りあげ,妊娠に及ぼす影響については省略し,胎児に及ぼす影響にしぼつて,その基礎的,臨床的実験のあらましを以下に報告する。
 まずストレプトマイシン(SM)について,その濃度定量法は,鳥居,川上氏重層法を採用した。まず胎児への影響をみるためSMの胎児への移行を検討した。臍動静脈血清中に出現し,注射後3時間前後において最高値に達し,満期分娩例においては,21.5mcg/cc,妊娠中期例では19.5〜17.5mcg/ccが証明されている。もちろん移行濃度は個体差も認められるが,その濃度は母血清中のそれよりもすくない。満期分娩例においては多くは母血清中最高濃度の約50〜60%,妊娠中期例においては,約20〜57%が移行している。これは薬物の影響を知る目安の一つである(第1表,第2表参照)。また臍動脈血清中SM濃度は,臍静脈のそれよりも低い値を示す。臍静脈血中に移行したSMは,その1/2〜1/3が胎児体内に分布排泄されて,再び臍動脈血を経て母体に還ることが考えられる。

〔追加 1.〕抗生物質の胎児内移行と分娩時感染予防使用に関する2,3の観察,他

著者: 水野重光 ,   松田静治 ,   黒川徹男 ,   森操七郎

ページ範囲:P.118 - P.119

 前早期破水による分娩遷延,誘発等処置の繁用に伴う子宮内感染は母児双方に危険をもたらすもので,細菌の感染が予想される場合には化学療法の全身投与が必要となる。産婦の感染予防,治療に当り,胎児への抗生物質の移行状態を検討した。
 1.膀帯血中への移行は使用薬剤により多少差があるが,母体血の1/3〜1/6の濃度が証明される,1回投与では分娩までの時間が短かいほど濃度が高く時間の経過とともに低下する。また筋注では高いが,内服の場合1mg/ml以下である(第1表)。

新生児黄疸

生後適応過程からみた新生児肝の特異性

著者: 小川次郎 ,   大西鐘寿

ページ範囲:P.123 - P.124

 出生を転帰とした循環動態の変動において,最も大きな影響を受けるものは,心肺循環と肝循環であり,これら三者ははなはだ密接な関係があると考えられる。近年新生児呼吸障害の原因として心肺の循環動態の適応不全,殊に動脈管の開存が重要視されてきたことは周知の事実である。
 肝における生後の循環系の変動は胎生期における胎盤循環から門脈循環への転換にある。ここに静脈管の開存の有無は動脈管と同様新生児独特の肝循環のpatternとして注目されるべき問題であつて,その病態生理学的意義については,新たなる見地から再検討する必要があると思う。かかる意味において,まず我々は,新生児剖検例150例の肝について生後の適応過程を検討した。

新生児黄疸の病理

著者: 神部誠一

ページ範囲:P.124 - P.126

はじめに
 新生児黄疸と成人の黄疸とは,その発現機序において異なる場合が多い。その最も大きな相違点は,新生児肝実質細胞の負うビリルビン代謝における「機能の未熟性」に求められるが,もちろんそれだけが単一な要因ではない。新生児期に限つて出現する特異な型の黄疸の存することも注目されねばならない。
 新生児黄疸の分類に関しては,高度かつ遷延性で重篤な病変を合併した黄疸を一括して重症黄疸と呼び,いわゆる生理的黄疸との鑑別のみに満足していた時代は遠く過ぎ,胆色素代謝の生化学的研究の発展を足掛りとして著しい進歩を遂げ,現在は黄疸発症の機能的な機序をその分類の基礎とする傾向にあり,またそれが最も理想的なものといえる。ただし,その機序が単一な要因によつて支配されない場合もあり,かかる場合この分類法は多少の混乱を免れない。演者は主として病因論的な分析を主軸とする次のような分類方法を採用したが,この中のあるもの(例えば核黄疸症)は,現象的あるいは症候的で,病因論的立場からの分類の範疇からははみ出るが,新生児黄疸として特殊なものであり,これを省略することはできないと考え分類の中の1項目に参加させたわけである。以上のような理由から,これらの分類法も未だ不完全なものであることは十分理解している。

新生児および乳児黄疸—とくにビリルビン代謝を中心として

著者: 岩波文門 ,   神谷修吾 ,   滝田斉 ,   唐沢瑛子

ページ範囲:P.126 - P.131

 ビリルビン定量法に関しては古くから種々の方法が発表されているが,従来のHijmans van den Bergh反応だけでは解決できない問題が多く,第1表に示すように最近10年間に種々の分劃定量法が諸家によつて考案されてきた。
 私どもはこれらのうち,Eberleinによる血清ビリルビン分劃定量法を昭和36年から使用しているが,この定量法の概要は第1図に示すとおりである。

新生児黄疸

著者: 岡本義明

ページ範囲:P.132 - P.135

 新生児および乳児期においては実にさまざまな形の黄疸を認めることができる。しかしながら幼若乳児の特徴として,この時期ではいろいろな因子が同時に働らいて黄疸を発現させていることが多く,黄疸相互間の鑑別もまた容易でないことも稀ではない(第1表)。私たちは新生児乳児期の黄疸を一応この表に示すように分類してみている。Iはいわゆる生理的黄疸で肝不全と溶血亢進とが相伴なつて黄疸を来たすものであり,IIは母子間の種々なる血液型不適合などに基づく過剰溶血によつておこる黄疸である。申すまでもなく,I, IIの型の黄疸に際して血中に増加するビリルビンは主として間接型である。次に主として直接型ビリルビンの増加をみる場合がいろいろあり,成人ではこれを更に閉塞性と肝細胞性とにわけることが多いようであるが,乳児ことに新生児期ではこの間の区別は決して容易ではなく,肝細胞性のものもしばしば狭義の閉塞性の形をとるので,むしろすべてを閉塞性あるいは閉塞型黄疸として一括し,その中に肝外閉塞性と肝内閉塞性または肝細胞性の黄疸があるというように分類し,理解した方がより実際的ではないかと思う。
 本日は対象をこのような閉塞性の黄疸においてみたいと思うが,肝外閉塞性黄疸には肝外胆道閉鎖,特発性総胆管拡張症などがあり,肝内閉塞性黄疸にも表にあげてあるような各種の疾患がある。

新生児の黄疸,特に閉塞性黄疸を呈する2〜3の疾患について

著者: 鈴木博雄

ページ範囲:P.136 - P.137

 先天性胆道閉塞症の手術の進歩に伴ない,新生児期あるいは乳児期初期には種々の形の肝内閉塞性黄疸の存在することが見出され,中でもその代表的な疾患であるいわゆる新生児肝炎については,先天性胆道閉塞症との鑑別はもちろん,その病因あるいは治療について種々論議されていることは周知のとうりである。
 他方成人においても,最近肝外胆路系になんらの異常もなく,肝細胞障害も殆んど認められずに,著明な閉塞性黄疸を来たし,ウイルス性肝炎の一型と考えられているCholangiolitic hepatitis胆細管炎性肝炎やクロールプロマジンその他の薬剤による肝内閉塞性黄疸を含めてのいわゆるintrahepatic cholestasisという病態が注目され,胆汁の運搬や排泄機構の解明と関連して,大きな問題として採りあげられていることも周知のとうりである。

新生児期黄疸の臨床的意義

著者: 白川光一

ページ範囲:P.138 - P.145

 新生児期の黄疸は従来ともすれば"Physiologicaljaundice"の美名のもとに軽視されがちであつたことは否定できず,病的なものも,Icterus neonatorum Precox,Icterus neonatorum prolongatusおよびIcterus neo—natorum gravisなどといつた漠然たる分類がなされているにすぎなかつた。しかし新生児溶血性疾患(Hemolytic disease of the newborn, Morbus hemolyticusneonatorum)(以下M.h.n.と略記する)の発見,あるいはCole, Lathe, Eillingらによるビリルビン(以下「ビ」と略記する)代謝機構の解明などにより,近年第1表に示すようにかなり詳細な分類が可能となつている。もつとも細部に関してはなお諸家の見解が統一されていない点も少なくないが,他方"Unknown"のものが漸次解明されてゆくであろうことは相像に難くない。
 これら病的黄疸はすべて程度の差こそあれ新生児に種々の影響を及ぼし,さらには成長後にまでも累を及ぼすものさえもある。現在その最たるものは核黄疸(Kernicterus)(以下K.I.と略記する)であるが,これを惹起するのは第1表中の印を附したもの,すなわち間接「ビ」(非抱合型「ビ」)の欝滞をきたす種類のものである。

新生児溶血性疾患における交換輸血の目的

著者: 官川統

ページ範囲:P.145 - P.149

はしがき
 交換輸血は新生児溶血性疾患児の死亡率およびその後の核黄疸後遺症である脳性小児麻痺の発生率のいずれをも大幅に減少させている。また未熟児の過ビリルビン血症,核黄疸脳性小児麻痺の発生についても相当予防的意義が認められつつある。
 一般に交換輸血実施の時期は大別して2つに区分されている。1つは既往歴がはつきりしており,妊娠中から諸検査がつづけられ,分娩直後に新生児を検査し,適応に従つて交換が行なわれるものであり,他方は生後数日して黄疸が強度となつた時に初めて交換を行なうものである。

新生児黄疸の薬物治療

著者: 藤井とし

ページ範囲:P.150 - P.153

 新生児黄疸の治療を申上げる前に先ず新生児期黄疸をビリルビン代謝の面から分類すると,蓄積型(非閉塞性)黄疸と逆流型(閉塞性)黄疸に分けられる。蓄積型黄疸には,特発性新生児黄疸(所謂生理的黄疸で,同一機序で核黄疸を起す場合があることから特発性黄疸と呼ばれている),Crigler-Najar症候群,新生児溶血性疾患,先天性溶血性貪血,G−6—P Dehydrogenase deficiency等である。今日述べる新生児黄疸治療の対象は,蓄積型黄疸のなかで,特発性新生児黄疸と新生児溶血性疾患に対してであり,要するに血清ビリルビン値の上昇をおさえることと,核黄疸の治療の点について述べさせていただく。
 まず高ビリルビン血症を起す因子をあげる。

外科の立場からみた新生児黄疸

著者: 駿河敬次郎 ,   入江邦夫 ,   岩井誠三 ,   増田元 ,   長島金二 ,   甲田義和 ,   福田昭 ,   伊藤忠夫 ,   戸田智博 ,   山崎善弥

ページ範囲:P.154 - P.158

いとぐち
 私共が,とり扱う新生児期手術症例の中には,黄疸の見られるものが,しばしばある。今回は,最近我々が賛育会病院外科で取り扱つた新生児外科症例90例につき,新生児期黄疸を検討し,さらに,乳児外科領域の重要な問題の一つである先天性胆道閉塞症の治療についき,検討を行なつた。

〔追加 1.〕黄疸計による新生児黄疸の逐日的観察,他

著者: 山村博三 ,   清水藤市

ページ範囲:P.158 - P.161

 新生児皮膚黄疸と血清ビリルビン値との関係について,本年4月の医学総会において発表したが,すなわち日本色彩研究所発行の「色の標準」より5色を選び,日本人新生児に適合する「Icterometer」をつくり逐日的にその黄疸度を測定すると,Color No.の大なるに従つて,血清ビリルビン値も上昇することを知つた。例えばNo.3以上になると,血清ビリルビン値は20mg/dlを越すものが増加するのを認めた。今回は逐日的に測定したIcterometerの読みを集めて,その平均値を求め,427名の新生児,すなわち成熟児,巨大児,未熟児,骨盤位娩出児について,黄疸度の推移および母体のキニーネ投与,非投与群の影響を調査した。その結果,投与群も非投与群も(我々は0.15g×4,総量0.6g投与している)黄疸度の推移は変らず,この程度の投与では影響なしと思われた。大体黄疸度は5〜6日がピークでその後は漸時消褪し,同時に血清ビリルビン値も下降にむかうようである。しかるに未熟児は,そのピークも7日目以後に移動し黄疸がながく血清ビリルビン値も黄疸度も他より高い値が得られた。これはさらに黄疸の追求に細心の留意が必要なることを示していると考えられる。骨盤位は他のものと同様の経過をとり骨盤位だから黄疸が強くなるという結果は得なかつた。
 以上,黄疸度を逐日的に観察,記録することにより各々の児に対する黄疸の大凡の傾向が知られ得るものと考える。

グラフ

長期生存(13日目死亡)半腦兒

著者: 三谷茂 ,   中嶋唯夫

ページ範囲:P.91 - P.92

 症例:佐○光○児。
 半脳児,脳ヘルニアの原囚:児の血液中よりマウス1代弊死,3代目マウスにToxo—plasma Gondiiを証明(慶大寄生虫学教室,浅見博士に依頼)。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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