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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科18巻4号

1964年04月発行

雑誌目次

グラフ

Chorio angiomaの1例

著者: 名古屋市立大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.251 - P.251

 25才の初産婦。家族歴,既往歴ともに特記すべきものなく,今回妊娠7ヵ月頃より浮腫強度となり,羊膜液過多ありしため,X線撮影の結果,双胎なることを確診す。妊娠33週にいたり中毒症のため入院治療をうく。35週前期破水にて入院し双胎を分娩す。第2児は翌日死亡す。剖検所見は各臓器の欝血の他は特異な所見なく奇形もない。
 胎盤は1200grで第2児臍帯附着部より同側胎盤の辺縁にわたり半球状の腫瘍を認めた。病理組織学的所見は典型的な血管腫の像を示した。

絨毛上皮腫の脈管像

著者: 名古屋市立大学医学部産婦人科学教室

ページ範囲:P.252 - P.252

患者は40才3経産。11月4日胞状奇胎娩出。その後フリードマン反応陰性となるも,翌年1月10日ごろより少量の不正子宮出血あり。生理学的妊娠反応陽性となり,絨毛上皮腫の診断のもとに2月2日単純子宮全剔を行う。(剔出標本脈管造影は子宮動脈の上行枝より70%ピラセトン注入)

PROPOSAL

座談会"産婦人科の眼疾患"を読んで—特に鉗子分娩による損傷を中心として

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.253 - P.254

 本誌の第18巻第1号に産婦人科の眼疾患についての座談会記が載つている。そのなかの分娩による損傷の項で,鉗子分娩による児の眼障害が述べられている。この点について読後の感想を書くように求められた。これは本誌第17巻第10号の日常診療メモで,鉗子術の実用性について—高年初産婦の骨盤位分娩への応用—と題して鉗子術の今日における価値に関する所感をのべたためであると惟う。
 鉗子術による児の眼損傷については,Wolffは93例の鉗子分娩児で眼窩骨折19例,眼球脱臼18例,眼球突出症12例をみている。座談会記でも眼科の大家連によつて,新生児の眼損傷にとつて鉗子分娩が最も危険であること,特に多いのは角膜混濁であり,そのほか眼瞼結膜,前房,網膜などの出血がみられることが述べられるとともに,場合によつては長く禍根としてのこり,児が大きくなつて初めて視力障害を訴えて眼科に受診することが稀でないことが指摘されている。産科医として改めて鉗子術の児への危険性が大きいことを考えさせられ,鉗子術の使用は一層の慎重さが必要であると痛感するし,また損傷の早期発見,早期治療が重要であることからみて,Wolffのいう如く,また座談会で述べられているように,鉗子術後には必らず検眼すべきであると思う。

老化と産婦人科—老化阻止研究の困難性と重要性

著者: 鈴木雅洲

ページ範囲:P.254 - P.256

 今さらいうまでもないが,最近における医学の急速な発達により,人類の平均寿命が年々延長していることは,まことに喜こぶべきことである。しかし,これは,診療を中心とする臨床医学の発達のため,および疾病の予防医学の向上に由来するためであつて,老化防止についてはなんらの対策もない,といつても過言ではないであろう。従つて,平均寿命の将来の延長見透しも,ある程度までゆけば止まることが予想される。生命を永久につづけたいという願望は,今も昔も変ることがなく,人類の最も大きな本能の一つであろう。これを達成するには,老化防止医学以外に目的をとげる手段はない。しかし,数多くの研究が行なわれているにもかかわらず,当分のあいだ老化を医学的に防止することは至難中の至難といわなければならない現況である。さらに,別の面から考えれば,老人年齢層の増加により,社会の活動力の低下が起る。治療医学の発達により,人類の活動年限の延長は起るであろうが,それにしても,前記の事実を否定することはできない。ここにもまた,老化防止医学の研究の重要さがある。当分のあいだ望めないことではあるが,老化防止法が完成すれば,社会から老人層が消えてなくなる。しかしてすべての人が,活動力のある青壮年層に停まるであろう。

アンケート

medicina (内科雑誌メディチーナ)創刊

著者:

ページ範囲:P.256 - P.256

 医学書院では新に内科の啓発総合雑誌「medicina」(内科雑誌メディチーナ)を創刊することになつた。これは勤務医,高級開業医を対象とする臨床の雑誌で,表紙に始まり,どの1頁をとりあげても実地に役立つ啓発的な記事を収載する狙いでスタートするもの。編集上の中枢をなす「今月の主題」「診断のポイント」「治療のポイント」を初めとして固定欄が多く,バラエティに富み,特集主義はとられていない。Conti—nuing medical educationの雑誌ともいえるもので,10項目の編集宣言が掲げられている。
 ① 今日の医療の反省を心がけ,明 日のよりよい医療のあり方を究め ます。

研究 胎盤係数

胎盤係数(Placental coefficients)の臨床的意義

著者: 吉田啓治

ページ範囲:P.257 - P.266

はしがき
 胎児の体重に関する発表はこれまで多くなされているにかかわらず,胎盤重量についてのそれはいたつて少ない。たとえば本邦での長谷川・加来・三谷らの成書をみても,正常平均胎盤重量はすべて500gであり,胎盤と児の重さの比は1:6で,これを生理的範囲と考えてよいとのみ記載してあるが,果してその通りであろうか。Hertigによれば臍帯や卵膜をつけたままの胎盤では平均重量は450-500gであり,正常胎盤と胎児との重さの比は1:6.35から1:7.9となるといつているが,この点で特にGruenwaldやLittleらは臍帯や卵膜を含んでの胎盤重量の測定はこれらの付属物の重さにはなはだ変動があり誤差をきたしやすいので,臍帯や卵膜を取り除いたあとの胎盤実質を測定すべきであると強調しており,私どももこのような胎盤実質だけの測定方法によって胎盤重量の測定を行なってきたが、成書の記載と大いに差異がありもう一度再検討の必要を痛感してきた。それだけでなく胎盤は妊娠週期の進むにつれて重さを増すのかそれとも児の体重に比例して重くなるのかという簡単な疑問も氷解されていない。そのために児と胎盤との相互的な発育関係を知る必要からまず児と胎盤との重さの割合である胎盤係数(Placental coefficients)を指標としてあげ,それに臨床的な意義を見出すことができればいろいろな点で好都合となる。

前置胎盤と失血

前置胎盤と未熟児貧血

著者: 中嶋唯夫 ,   畑山道子 ,   鈴木博

ページ範囲:P.267 - P.272

はしがき
 われわれはさきに前置胎盤合併にさいして,従来からの統計的観察を参考にいろいろの検討を行なつたが1),まず第1に産科学のみならず医学全領域にわたつての向上,発達にもかかわらずしばしば満期に至らないで分娩を終了する場合があり,また在胎期間相応の児の生下時体重より明らかに劣つた体重を示し,いわゆる未熟児の体重に相当する胎児を娩出する傾向が大であり,この中のあるものは母体の安全のために実施される諸手術,遂娩術の犠牲となることが認められ,またたとえ帝王切開術を行なつたものでも児の予後は悪く,かつ戦前に比しわずかに予後の改善が認められるに過ぎない。死産児も多く,未熟児の頻度も高いが,この未熟児群も同じ生下時体重群の死亡率よりいちじるしく不良である。そこで児の失血を検討したところ出生直後から著明な貧血症状のしばしばみられることを認め,W. StoeckelやW. Zangemeisterらによつてすでに指摘され,その後K. Heising2)によつても強調された事実とも一致し,W. Stoeckelの指摘を直接耳にし久慈院長も久しくこの点をわれわれに教示されていたところであるので,改めて未熟児に著明である生理的とさえ考えられる出生後の未熟児貧血を当院のデータを下に検討し,前置胎盤合併の未熟児を中心に比較検討し,さらに分娩前後の児の失血について考察してみたいと考える。

未熟児出生

未熟児出生に及ぼす社会環境的因子の影響

著者: 西尾雅七 ,   藤本暁

ページ範囲:P.273 - P.278

 未熟児および早産児の予後の状況をみると,周産期以後の取扱いに全力をそそぐことのみが未熟児早産児対策であつてはならぬとの感をいだく。
 AnoxiaおよびHypoxiaを主体とする子宮内死亡,頭蓋内出血で代表される分娩時障害による死亡,さらには肺換気異常による死亡など,いずれも未熟児,早産児に高率であることは衆知のところであり,また未熟児,早産児に多発する頭蓋内出血や核黄疸などの予後不良のものを除外した対象についての乳児期以後の発育に関する経続調査からも,一部の楽観的な意見を除いては,未熟児および早産児は身体的発育のみならず精神的発育に関しても成熟児に比べて多大のHandicapを持つていることが報告されている。したがつて未熟児および早産児は周産期,乳児期,さらにはその後の発育段階を通して,常に生命の危険にさらされる度合が成熟児に比してきわめて高く,またその間大きな身体的,精神的不利益を背負つている以上,これの出生を予防することが,したがつて未熟児の生れることを予防する努力こそ未熟児対策の正しい姿だと思われる。

新生児の血液成分

出生型式からみた新生児初期における血液諸成分の変動

著者: 小国親久 ,   桜庭衡

ページ範囲:P.279 - P.284

はじめに
 最近,新生児の生態をめぐつて活発な研究が行なわれるようになつてきたことは,周知のとおりである。
 今,ヒトの生涯を者えてみれば,たとえば疾病には好発時期と言われるものもあり,また季節によつてある種の疾患が発生したり多発したりすることが知られている。個体の抵抗力や適応能力ということを考えても,それらが個体の内部にあると同時に外部因子によつても支配を受けたり,あるいは影響されていることは,今さら言うまでもなかろう。

新生児とV.K

新生児とビタミン—K

著者: 小国親久 ,   桜庭衡

ページ範囲:P.285 - P.292

緒言
 血液の凝固機序は,内因性つまり血液中機序として第XII・XI・IX・VIII・血小板第3因子・V・X因子の関与による血液活性トロンボプラスチン,外因性つまり組織中機序として第III・IV・VII・V・X因子の関与による組織活性トロンボプラスチンの両者の協調によつてプロトロンビン(第II因子),さらにトロンビン,フィブリノーゲン(第I因子)を経て,フィブリン形成をみるとされていることは周知のとおりである。
 新生児は,1849年Townsend以来,"新生児出血症"といういわゆる新生児メレナに代表される外傷や感染などとは無関係に現われる出血性疾患をもつとされ,また正常成熟児でさえも血漿プロトロンビンが低く白然出血の危険性を示し,潜在性の出血素因をもつと考えてよいといわれている。

新生児室管理

新生児室管理上の一課題—特に湿度の年日変化から

著者: 安武豊志男 ,   高橋泰二

ページ範囲:P.293 - P.299

I.生態系としての胎児
 胎生期は栄養,呼吸,循環,排泄作用に於いて静的発育系と考えることができる。大気環境から遮断され,母体の体液変動と運命を共にする閉鎖環境であり,羊水中という温・湿度については恒常環境にある。いわゆるEverest環境という低酸素状態にあつて高度の代謝が行われている。児は娩出されるや,全く異つた可変開放環境に一変し,胎生現象において生理的なものが非生理的になり,気中生活系への機能的調整,適応など,短時日に平衡状態に達する,すなわち新生児はその大変動期における発育系として把握される。Foramen ovale, Duc—tus Arantii, Ductus Botalliの閉鎖による血行の変化,胎児性血色素を有する胎生赤血球の崩壊などは気中生活への適応と進化を示すphylogenetic miniatureとも考えられる。従つて新生児の諸器管が激変的に調整さられ,milieuに適応する安定した自律性を獲得するまで,なお恒常的な大気環境の下に養護するのを理想的とするが,全地表面的な気候環境と社会的経済的文化的生活環境と環境衛生的観点との間には大きなcrevasseが存在する。
 典型的季節風気候である日本各地点における平均気温と湿度を引用してみると第1表の通りである。

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Kranke (12)

著者: Y.A.

ページ範囲:P.272 - P.272

 その日は今にも雪になりそうな,氷雨の降る暗い寒い日であつた。
 一日の仕事もほとんどおわり,あとかたづけに追われていた助産婦Aさんの部屋へ,モンペ婆の老婆が訪れた。

学会予告

第1回日本小児外科学会総会

ページ範囲:P.299 - P.299

会 期 昭和39年6月15日(月),16日(火)
会 場 朝日生命ホール(新宿駅西口 朝日生命本社ビル)

同人放談

私の部屋

著者: 藤森速水

ページ範囲:P.304 - P.305

 私の日日のくらしのうちで,最もながくすごすところは,教室である。自分の家よりも教室のほうが時間的ばかりでなく生き甲斐のある仕事の場としてもふかい関係のあるところである。この教室の一隅にある私の部屋,かた苦るしい表現でいえば教授室は朝に私を迎え,夕にふたたび私を送り出してくれる大切なところである。
 およそ教授室と名のつけられている部屋には,その規模や美しさに関してはピンからキリまである。私が知つているかぎりでは,西独ミユンヘン大学産婦人科のビッケンッハ教授の部屋は,おそらく世界でいちばん大きな教授室であろう。ミユンヘン大学の産婦人科学教室それ自体がすばらしく大きく,柱や床は大理石でつくられ,ことに第一産婦人科のビツケンバッハ教授(現独逸産婦人科学会会長)の部屋は最近,彼をおとずれた私に,彼自身自慢したほど,実に宏大である。しかし,装飾は割合にすくない。日本でもつとも立派な教授室は,かつて岡林先生が設計されて,昭和6年にでき上つた現在の京大産婦人科教室の教授室であろう。

同人放談復活の弁

著者:

ページ範囲:P.305 - P.305

 同人放談が連載されていた時期がありました。たしか第16巻第4号の笠森周護先生「内診漫談」以後お休みになつています。まる2年めに,今度,藤森速水先生からお原稿をいただきました。こうして掲載されたものを拝見するにつけ,やはり無くて叶わぬ固定欄だと思います。休載してきたことをお詑びしなければいけないと思います。
 同人という言葉には,同じ志の人,同好の人,なかま,などという意味があるようですし,巻末に毎号掲げた編集同人の同人もそんな意味だと思います。しかも「臨床婦人科産科」は普通にいう同人雑誌というよりは遥かに公器としての性格をもち,産婦人科学に貢献し得る人と原稿を拒みません。ただ,受け入れ方に当然ながら或る仕切りがあつて,そこの所へ志を同じくするなかまとしての編集同人の意図がはたらきかけるのだと考えられます。

MY THERAPY in series・20

頸管無力症診断法にバルーン法

著者: 佐久間浩

ページ範囲:P.306 - P.307

 それでは,頚管無力症の成因としてあげられているものは何か。

外来における妊娠中毒症の治療

著者: 村越充明

ページ範囲:P.307 - P.307

 妊娠中毒症の治療に関しては,中毒症の悪化が母児に重大な影響を及ぼすため,われわれ婦人科医にとつて非常に関心を寄せる問題であり,その治療効果には患者本人はもちろん,われわれ医師の治療についての熱意も大きな役割をもつていると考えられる。
 われわれは他病院ととくに変つた治療法を実施している訳ではないが,当病院外来で行なつている治療について簡単に述べる。

QUESTIONNAIRES・20 アンケート

子宮癌診療—その2

著者: 鈴木武徳 ,   竹内繁喜 ,   村田善保 ,   梶英雄 ,   紅林康 ,   安武豊志男 ,   奥山通雄 ,   山元貞彦 ,   木村好秀 ,   湯原安彦 ,   川原浩

ページ範囲:P.308 - P.313

 ① 子宮癌の治療方針として,全然手をつけず疑わしいものも専門医に送るか。或いは,軽いもの  だけ手をつけるか。或いは,どんなものにも手をつけるか。何故か。
 ② どういう診断法(組織診,細胞診,シルラーの沃度診,膣鏡診など)を用いるか。何故か。

文献紹介

XO/XY型gonadal dysgenesis/vaginal cytogram

ページ範囲:P.313 - P.313

 古典的なgonadal dysgenesis(Turner)は性染色質(—),染色体45コ,うち性染色体XOである。45/XOはXXのうち1コのXが消失したとも,XYのうちYが消失したとも考えられる。事実,立派なgonad.dys.で46/XXという例もあり,46/XYというのもある。男子仮性半陰陽はふつう46/XYであるが,XO/XYという例(Ferrier, P.C.:Pediatrics 29:703,1962)も見出されている。その他XO/XY型はgonad. dys.(Harn—den, D.G.:Brit.M.J.2:1285,1959)にも,真正半陰陽(Hirsch—horn, K.:New Engl.J.Med.263:1044, 1960)にも見出されている。著者第1例14♀,2年半前から男様声音,陰核肥大,短躯(139cm)で来院。外反射,頚webbing,小児様乳房,外性器未発育,尿17Ks 4.2mg,ゴナドトロフィン 26mu/24h.開腹するに1側は睾丸,他側は性腺痕跡であつた。睾丸剔除。術後breakthrough bleeding規則正しくあらわれ,乳房発育,ゴナド192mu/24h,身長143cmとなつた。腔・子宮発育す。染色体は45/XOと46/XYとのモザイクである。第2例13才,女児と見なされて来たが,男か女か明かでないので確認のため来院。

薬剤 貧血

妊娠末期鉄欠乏性貧血4例に使用した静注用デキストラン鉄の効果

著者: 松井武彦

ページ範囲:P.315 - P.317

緒言
 鉄欠乏性貧血の治療に用いる内服用鉄剤は近年種々の改良が加えられ,より優秀な薬剤への研究が行われている。これらの改良内服鉄剤は副作用が少いとはいえその胃腸障害は皆無とはいえぬ。さらに経口投与によつては完全に貯蔵鉄を充足し得ず,そのため再発を繰り返すことがある。日常の診療に際して,鉄不足の補給の必要性を認めながら,これを経口的に投与しえないことがある。ことに妊娠末期の貧血の如く急速な鉄補給を必要とする場合がある。このような症例に対しては,注射剤の形で用い得る鉄剤が最適のように思う。従来は鉄剤を非経口的に投与することに対し,過量投与のおそれ,副作用の危険などの理由により敬遠される傾向にあつたが,薬剤の安定化と使用法の安全化により,その利点はとみに増した。私は最近デキストラン鉄(フェロバルト)を妊娠末期の重症貧血4例に使用し著効を得たのでここに報告する。

妊娠貧血に対する静注用鉄剤フェジンの使用経験

著者: 本郷基弘 ,   上村修 ,   森岡秀行 ,   清水潤司 ,   安木邦昌

ページ範囲:P.319 - P.325

緒言
 従来,いわゆる妊娠貧血は生理的な水血症により惹起されると解釈され,産褥期の自然軽恢を理由に治療の対象とはされていなかつたが,最近の研究により鉄欠乏性貧血の一種に他ならないことが判明してからは鉄剤治療を奨める報告が多い1)2)3)。妊娠貧血が母体または新生児に悪影響を及ぼすならば妊娠貧血の治療の必要性はけだし当然であろう。妊娠貧血の影響としてTraylor & Tor—pin4)やBriscoe5)は分娩遷延を唱え,Adair etal.6)は分娩出血に対する抵抗力の減弱と分娩労作からの恢復遅延を主張し,Strauss7)およびParsons8)は乳児の栄養性貧血に関係があることを認めた。尾河9)は産褥期の感染に対する抵抗性の減弱を挙げ,著者の一人本郷10)は分娩時の出血量増多,弛緩性出血の頻度の増大を認めた。かかる理由から妊娠貧血の治療は産科臨床上極めて重要なことである。
 わが国でみられる妊娠貧血の種類は欧米の報告にある悪性貧血や再生不良性貧血,さらに鎌状赤血球貧血,溶血性貧血等は殆んどなく,大部分が鉄欠乏性貧血であるため治療としては鉄剤の投与が最適である。鉄剤には内服と注射の2種類があり,さらに注射には筋注と静注があることは周知のとおりである。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

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今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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