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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科18巻4号

1964年04月発行

薬剤 貧血

妊娠貧血に対する静注用鉄剤フェジンの使用経験

著者: 本郷基弘1 上村修1 森岡秀行1 清水潤司1 安木邦昌1

所属機関: 1岡山大学医学部産科婦人科学教室

ページ範囲:P.319 - P.325

文献概要

緒言
 従来,いわゆる妊娠貧血は生理的な水血症により惹起されると解釈され,産褥期の自然軽恢を理由に治療の対象とはされていなかつたが,最近の研究により鉄欠乏性貧血の一種に他ならないことが判明してからは鉄剤治療を奨める報告が多い1)2)3)。妊娠貧血が母体または新生児に悪影響を及ぼすならば妊娠貧血の治療の必要性はけだし当然であろう。妊娠貧血の影響としてTraylor & Tor—pin4)やBriscoe5)は分娩遷延を唱え,Adair etal.6)は分娩出血に対する抵抗力の減弱と分娩労作からの恢復遅延を主張し,Strauss7)およびParsons8)は乳児の栄養性貧血に関係があることを認めた。尾河9)は産褥期の感染に対する抵抗性の減弱を挙げ,著者の一人本郷10)は分娩時の出血量増多,弛緩性出血の頻度の増大を認めた。かかる理由から妊娠貧血の治療は産科臨床上極めて重要なことである。
 わが国でみられる妊娠貧血の種類は欧米の報告にある悪性貧血や再生不良性貧血,さらに鎌状赤血球貧血,溶血性貧血等は殆んどなく,大部分が鉄欠乏性貧血であるため治療としては鉄剤の投与が最適である。鉄剤には内服と注射の2種類があり,さらに注射には筋注と静注があることは周知のとおりである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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